コンポジットレジン修復か、メタルインレー修復か?

アクアデンタルクリニック院長の高田です。
日本歯科保存学会から出されている
「う蝕治療ガイドライン」を読んでいます。

 

MIの理念に基づいた う蝕治療の観点からコンポジットレジン修復とメタルインレー修復を考えた場合、メタルインレー修復においては窩洞形成に伴う健全歯質の削除量が大きく、それに伴って局所麻酔の使用や歯髄刺激が起こることがある。コンポジット修復の際、使用する接着材料は臨床成績に影響を「及ぼすことを指摘しており、象牙質への接着性が向上した接着システムを使用した場合、5級修復の生存率の向上がみられたと報告している。一方 実験室での最近の接着性材料の長期耐久試験によると、2ステップのセルフエッチングタイプの接着システムの う蝕罹患象牙質に対する接着性は 健全象牙質に比べて低いものの長期にわたって高い接着性が得られている。

また、2ステップのセルフエッチングタイプの接着システムを用いたコンポジットレジン修復を行った結果、10年後まで脱落、歯髄症状は全く認められなかったと報告している。一方 オールインワンシステムが数多く市販されているがこれらの臼歯部への対応に関する長期臨床成績の報告はない。

近年、臼歯部においても患者の審美的要求は高く、審美性を考慮すればメタルインレーよりもコンポジットレジンが望ましい。医療経済的な観点から歯冠修復および定期歯科検診についての歯科医業収益を比較、検討している。その結果、単位時間あたりの収支差額は、コンポジットレジン修復、成人の定期管理、抜歯後に鋳造歯冠修復、インレー修復の順に大きかったと報告している。すなわち比較的チェアタイムの短い簡単な症例であればコンポジットレジン修復を選択する警経営的メリットも大きい。

大臼歯部へのコンポジットレジン修復の適応基準としては、内側性の小・中窩洞で上下の咬合接触がエナメル質同士で確保されていることを挙げている。近年の修復材料と術式の著しい進歩によって コンポジットレジン修復の適応範囲は拡大する傾向にある。しかし窩洞の形態や大きさと臨床成績との関係についてのエビデンスレベルの高い研究が少ないのが現状である。一方 コンポジットレジン修復の利点として たとえ修復物が破折や摩耗しても、接着材料を応用することによって容易に補修することが可能である。この点もコンポジットレジンが優れている点であり、歯の寿命にとって有利に影響すると考えられる。

以上の点を総合的に勘案すると、臨床的エビデンスからは臼歯部に対するコンポジットレジン修復とメタルインレー修復の臨床成績に有意な差はない。しかしコンポジットレジン修復ではMIの理念に基ずいた う蝕除去を行い、確実な接着操作を行うことによって健全歯質を可逆的に保存し、審美的に修復することが可能である。よって臼歯咬合面に対しては、直接コンポジットレジン修復を行うことが推奨される。一方、臼歯隣接面に対しては、症例ごとに窩洞の形態が異なり修復の難易度が大きく異なる。すなわち、隣接面に言及した小さな窩洞では修復操作は容易であるが、隅角を超えた比較的大きな窩洞では難しくなる。したがって、個々の症例について その適応の可否の判断が必要であるが、確実な接着操作と填充操作が可能なしょうれいについては 直接コンポジットレジン修復を行うことが推奨される。

 

 

臼歯咬合面(1級窩洞)の修復法として、直接コンポジットレジン修復とメタルインレー修復の臨床成績に違いはあるか?

アクアデンタルクリニック院長の高田です。
日本歯科保存学会から出されている
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臼歯咬合面(1級窩洞)の修復法として、直接コンポジットレジン修復とメタルインレー修復の臨床成績に違いはあるか?

 

臼歯咬合面(1級窩洞)に対するコンポジットレジン修復とメタルインレー修復の臨床成績に有意な差はない。しかし、コンポジットレジン修復はMIの理念に基づいて う蝕除去を行い、確実な接着操作を行うことによって健全歯質を可逆的に保存し、審美的な修復が可能である。よって臼歯咬合面に対して直接コンポジットレジン修復を行うことが推奨される。

我が国における臼歯部の修復では 金銀パラジウム合金による鋳造修復が保険適応されているため、諸外国と比べてメタルインレー修復が広く普及しているのが特徴である。一方、1980年代初頭に水銀による環境汚染が社会的な問題となり、これを発端に歯科用アマルガムの使用が著しく制限された。その対策の一つとして臼歯に化学重合型コンポジットレジンが緊急的に実用化された。その後光重合コンポジットレジンが登場し、諸物性や審美性に改良が加えられ現在に至っている。その間 接着も確実に進歩を遂げてきたが1990年代に入り、セルフエッチングを用いた接着システムと比べて象牙質接着の信頼性が著しく向上した。最近では接着システムの簡素化がさらに進みオールインワンシステムが登場している。このように国内における臼歯部修復をめぐる社会的背景や私学教育ならびに歯科医療保険制度は 諸外国とは大きく異なり、その違いは修復物の臨床成績にも影響を及ぼす可能性がある。今日、患者の審美的要求はますます向上しており、臼歯部と言えども より審美的で歯質保存的な修復方法が求められている。

臼歯部におけるコンポジットレジン修復とメタルインレー修復の臨床成績を直接比較した論文はきわめて少ない。またこれらの臨床の結果からは臼歯部に対する修復法としてコンポジットレジン修復とメタルインレー修復の臨床成績について、どちらか一方に明らかな優位性は認められない。久保先生らはコンポジットレジン修復とメタルインレー修復の臨床成績を比較検討している。調査は新良⑥による後ろ向きちょうさであり、2000年2~7月の半年間に調査したコンポジットレジン修復577症例と鋳造修復128症例が対象である。その結果、コンポジットレジン修復では窩洞形態によって生存率の違いがみられ、1級窩洞2級窩洞における10年後の生存率は83%であり、鋳造修復のそれは84,7%である。したがって臼歯部におけるコンポジットレジン修復と鋳造修復との存在率に優位差はなかった。

札幌市内の一般歯科言いにおいて行われた臼歯修復物について 修復物の生存期間と それに関連する要因について 診療⑥による後ろ向き調査を行った。1991年~2005年を観察期間として臼歯に修復処置を受け、                                                                                                                                                                                                                                    

 

非侵襲性間接覆髄には どの覆髄材が適切か?

アクアデンタルクリニック院長の高田です。
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非侵襲性間接覆髄には どの覆髄材が適切か?

歯髄に到達するような深いう蝕で、歯髄が臨床的に健康または可逆的の歯髄炎の症状を呈する場合、水酸化カルシウム製剤あるいはタンニン・フッ化物合材配合カルボ岸レートセメントで非侵襲性間接覆髄を行うことによって、う蝕関連細菌は減少し、う蝕象牙質が硬化する。よって非侵襲性間接覆髄に、水酸化カルシウム製剤あるいはカルボキシレートセメントを使用するように推奨される。

 

非侵襲性間接覆髄に水酸化カルシウム製剤あるいはカルボキシレートセメントを用いることによって う蝕関連細菌数は減少し、残った感染象牙質は硬化することが複数の臨床研究で示されている。

臨床症状が無く う蝕を完全に除去すると露髄しそうな深いう蝕を有する永久歯40歯に非侵襲性間接覆髄を適用し、初回のう蝕除去と4週間後の う蝕の再開拡時に う蝕象牙質から採取し培養した細菌数を比較した。具体的には 初回に う蝕象牙質を部分的に除去した後、水酸化カルシウム製剤またはコントロールとしてワックスを添付し、仮封した後4週間後に再度取り出した。その結果水酸化カルシウム製剤を入れた群の細菌数は減少していたのに対し、ワックスを入れた群の細菌数は優位に増加していた。よって、水酸化カルシウム製剤は う蝕象牙質に生息する細菌に対して抗菌性を発揮することが確認できた。

非侵襲性間接覆髄に水酸化カルシウム製剤を用いることで、う蝕関連細菌の減少と残った感染象牙質が硬化することが示されている。

タンニン・フッ素化合物配合カルボキシレートセメントは う蝕象牙質に生息する細菌に対して抗菌性を発揮するとともに、残ったう蝕象牙質の再石灰化を促進することが確認された。なお、残った感染象牙質の硬化は 水酸化カルシウム製剤では4~12か月経過時に認めたとの報告があり、タンニン・フッ素化合物カルボキシレートセメントでは3か月経過時に16症例中14例で効果を認めている。よって 非侵襲性間接覆髄の後のリエントリーは3か月以降が適切だと考えられる。

水酸化カルシウム製剤あるいはタンニン・フッ化物合剤配合カルボキシレートセメントは、従来より歯科治療に広く使用されてきた比較的安価なざいりょうであり 一般診療への導入は容易であると考えられる。また、歯髄に近接する深いう蝕に用いた場合、術直後の軽度な不快症状の発現の他には全身への副作用といった有害現象は報告されていない。以上のことより、非侵襲性間接覆髄に関しては水酸化カルシウム製剤あるいはカルボキシレートセメントを使用し、残った感染象牙質を覆髄3か月以降にレエントリーして除去することが推奨される。

 

非侵襲性間接覆髄は、歯髄に近接した深いう蝕を除去する際の偶発的露髄の回避に効果がある。

アクアデンタルクリニック院長の高田です。
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臨床症状がなく歯髄にまで達するような深在性う蝕を露髄させることなく修復することは歯髄保護の観点から意義深く、ひいては健康21を推進している現在、長期の歯の健康維持にもつながり、8020の達成に大きく貢献できると期待できる。

現在までにも う蝕象牙質を一気に除去すると露髄をきたしそうな部分の感染象牙質を残し、その部位に覆陶材を塗布して仮封すると、数か月後には軟化した象牙質の硬化と修復象牙質の添加が促進され、その後 期間をあけて段階的に感染象牙質を除去することによって、露髄することなく生活歯の状態で修復できることを経験してきた。

 

非侵襲性間接覆髄を行った場合、歯髄症状の発現は う蝕完全除去の場合と同じか?

歯髄に到達するような深いう蝕で、歯髄が臨床的に健康または可逆性の歯髄炎の症状を呈する場合、非侵襲性間接覆髄を適応した歯髄は露髄をきたさず行われた う蝕完全除去と同様に正常状態を保っている。よって非侵襲性間接覆髄を行うよう推奨される。

非侵襲性間接覆髄は、歯髄に近接した深いう蝕を除去する際の偶発的露髄の回避に効果がある。このことは乳歯および永久歯を対象とした4編のランダム化比較試験でサポートされたシステマチックレビューで述べられており、そのうち1編は永久歯を対象としたランダム化比較試験である。それによると116人の患者において エックス線検査でう蝕を完全に除去すると露髄する可能性がある臨床症状のない127臼歯を 非侵襲性間接覆髄群と一括完全除去群にランダムに割り付けて露髄頻度を比較した。その結果 非侵襲性間接覆髄群で優位に低かった。さらに両群で露髄をきたさなかった40歯それぞれにおいて、平均43ヶ月経過時にも臨床診査および エックス線検査にて歯髄は正常であった。したがって非侵襲間接覆髄は永久歯の深いう蝕の偶発的な露髄回避に有効であると結論づけられた。

非侵襲性間接覆髄の治療技術レベルは歯科の基本治療の範囲であり、ほとんどの症例で浸潤麻酔を使用せず無痛治療として行うことが可能で、患者の肉体的・精神的な負担も少ない。さらに、コスト面でも支援が図られた。加えて抜髄後に歯冠修復を行う場合と比較して、歯髄保存をはかった場合に必要な費用は明らかに少なく、医療費削減に確実に貢献できる。また、術直後の軽度な不快症状とう蝕の一括完全除去と比較して治療期間が長くなる以外には有害事項が認められず、歯髄保護をはかる意義は大きい。よって、臨床症状がない歯髄に近接した深いう蝕に非侵襲性間接覆髄を適用し、歯髄保護をはかることが推奨される。

非侵襲性間接覆髄の後、う窩を再拡張して残遺させた う蝕を再診断し、そのう蝕を完全に除去するべきかどうかに関してはさらなる臨床研究が必要である。歯髄に近接した感染象牙質を残して水酸化カルシウム製剤を添付し、強化型酸化亜鉛ユージノールセメントにて仮封した後、6か月後にう蝕を再開拡して深いう蝕を残したまま水酸化カルシウム製剤を再び塗布してコンポジットレジン修復を行った症例では40か月後のエックス線検査にて う蝕の進行が認められなかったとの報告がある、また先に示したシステマテックレビューでも う蝕を完全に除去すべきかどうかに関しては、結論を導くには十分な根拠がないとしている。

以上のことから 今回のガイドラインでは非侵襲性間接覆髄によって露髄を回避し最終修復を行うことを推奨する。

非侵襲性間接覆髄により、期間をあけて段階的に う蝕を除去することで露髄を回避できるか?

アクアデンタルクリニック院長の高田です。
日本歯科保存学会から出されている
「う蝕治療ガイドライン」を読んでいます。

 

これらの臨床研究の結果は、象牙質への接着性が飛躍的に向上した現在の接着システムを用いたコンポジットレジン修復においては、術後の歯髄症状の発現が著名に少ないことを実証している。さらに、裏層なしでコンポジットレジン修復を行うことは治療ステップが簡略化され、治療歯冠のj簡素化治療時間の短縮や材料費の節約にもつながることにより、開業歯科医院でも容易に導入できると考えられる。

以上のことより、深在性う蝕に対するコンポジットレジン修復に裏層は必要ない

現在 わが国の大学教育ではMIの理念に基づいたコンポジットレジン修復に関し、裏層は必要でないという教育と積極的ではないにしても裏層をした方が良いという教育とが混在している。したがって 教育の現場で見解の統一が図られていないために、臨床の実際においても混乱をきたしているのが現状である。推奨グレードの決定にあたっては、わが国の裏層に関するこのような事情を考慮した。

 

非侵襲性間接覆髄により、期間をあけて段階的に う蝕を除去することで露髄を回避できるか?

歯髄に到達するような深在性う蝕で、歯髄が臨床的に健康または可逆性の歯髄炎の症状を呈する場合、非侵襲性間接覆髄を行うことによって露髄を少なくすることができる。

日常臨床では、臨床症状が認められないものの歯髄にまで達するような深在性のう蝕にしばしば遭遇する。従来は う蝕が原因で露髄した場合には抜髄が適応されてきたが、近年の歯髄に関する生物学的考察により、歯髄が高い再生力を備えており、歯髄の炎症はより可逆的であることが理解されるようになってきたことと、歯髄保護の重要性が認識されるにしたがって う蝕で露髄した歯髄も積極的に保存するように努められるようになってきた。

しかし、う蝕で露髄した歯髄に対する直接露髄はその成功率が50~80%との報告もあり、必ずしも常に良好な長期生成期が得られているわけではない。これに対して、露髄をきたすことなく深在性う蝕を修復できた場合には、ほとんどすべての症例で良好な予後が得られたとの報告があり、直接覆髄と比較して予後が角質なアポローチと言える。