3種の根管洗浄剤と2タイプのレーザーによる スメャー層除去に関する比較試験

アクアデンタルクリニック院長の高田です。

3種の根管洗浄剤と2タイプのレーザーによる
スメャー層除去に関する比較試験

根管治療の英語論文を読みました。

学んだ内容
目的:根中央部と根尖部根管における、手用ファイルの根管形成により生じたスメャー層に対する3種の根管洗浄剤お歯抜去歯60歯は、それぞれの実験群が12歯となるように、5つの群に無作為に分類された。
ステップバック法を用いてMAF60号で根管清掃・形成を行う際、それぞれのファイルサイズごとに根管を3mLの5.25%NaOClと3%l-1202を用いて交互洗浄した。
実験群1は、17%EDTAによる最終洗浄を行ったコントロールの試料とした。実験群2の歯はリン酸により実験群3はクエン酸により最終洗浄を行った。
実験群4の試料の根管は炭酸カス(C02)レーザーで、実験群5の試料はEr:YAGレーザーを用いて洗浄された。

歯は歯軸方向に割断された後、走査型電子顕微鏡検査に供された。

結果.コントロールの試料(実験群1)は根中央部根管において象牙細管の開口したきれいな根管壁を示したが、根尖部根管においては、いくつかの標本で厚いスメャー層が観察された。6%リン酸(実験群2)あるいは6%クエン酸(実験群3)で最終洗浄された試料は、17%EDTAよリ根中央部根管において非常にきれいな根管面を示したか、根尖部において、とくに根尖開口部の象牙細管では、スメャー層は完全には取リ除かれていなかった。
炭酸カス(C02)レーサー(実験群4)で洗浄された試料は、根中央部と根尖部根管の両方で、スメャー層のない、焦げて溶けて再結晶化し、かっ光滑なきれいな根管壁を呈していた。Er:YAGレーサー(実験群5)で洗浄された試料の根管壁は、根中央部と根尖部根管において、象牙細管は開口しており、スメャー層のないことが明らかであった。
統計学的解析は、実験群1と実験群2の間において、そして実験群1と実験群3の間において、
統計学的な有意差は認められなかった。しかしながら、実験群1と実験群4の間と、実験群1と実験群5の問において、
根中央部と根尖部根管における洗浄度に、統計学的な有意
差が認められた(P<0.01)。結論:17%EDTA、6%リン酸、および6%クエン酸は根管系からすべてのスメャー層 を取リ除くことはできなかった。 さらに、これらの酸性溶液は、象牙細管開口部の周囲の内側部象牙質を脱灰し、そし てその結果、象牙細管開口部が大きくなっていた。炭酸カス(C02)レーサーは形成後の根管壁のスメャー層を取り除き 溶解するのに有効てあり、そしてEr:YAGレーサーは、根管壁からスメャー層を除去するのにもっとも効果的であった 歯抜去歯60歯は、それぞれの実験群が12歯となるように、5つの群に無作為に分類された。 岡山県 岡山市北区 今保 久米 中山道 延友 白石 花尻 北長瀬 西バイパス近く ステップバック法を用いてMAF60号で根管清掃・形成を行う際、それぞれのファイルサイズごとに 根管を3mLの5.25%NaOClと3%l-1202を用いて交互洗浄した。

歯科治療中の血管迷走神経反射に対する 処置ガイドライン②

アクアデンタルクリニック院長の高田です。
今日は 日本歯科麻酔学会から発表されている

「歯科治療中の血管迷走神経反射に対する 処置ガイドライン 」 を勉強しています。

ガイドラインの中の大切な内容をまとめながら、ブログに残していきたいと思います。

治療前の血圧・脈拍測定で反射発現を予測することは難しい?

反射発現前には頻脈になるとの報告がある 。また、処置前の収縮期血圧が
100mmHg 未満、拡張期血圧が 70mmHg 未満で反射発現のリスクが低かったとの報告もある。
しかし、歯科治療中のどの処置が反射発現の引き金となるか一概にはいえないため治療前の血圧・脈拍測定で予測することは難しい。
ただ、反射発現の状態把握、迅速 に対処するためには持続的な血圧・脈拍測定は有効である.

血管迷走神経反射は様々なことが原因で発症する。
反射発現前には頻脈になるとの報告があるが、例えば歯科治療中における局所麻酔施行後、患者は注射による痛みと局所麻酔薬内に含まれる血管収縮薬により血圧と脈拍の上昇がみられる。
しかし、その後全ての患者が反射を発現するわけではない。
また、血圧においても処置前の血圧が低い方が反射発現の高血圧症を有する患者はもともとの血圧が高くどこに基準を設けたらいいか不明瞭である。以前にも反射発現の既往があること、治療当日の体調、年齢、性別など様々な因子を考慮する必要がある。さらに歯科治療中患者の状態は刻々と変化しどの処置が反射発現の引き金になるか一概にいうことができない。そのため治療前の血圧・
脈拍測定のみで反射発現を予測することは難しい。
しかし、治療前より血圧・脈拍などのバイタルサインを持続的に測定することは血管迷走神
経反射などの偶発症を速やかに発見し対処することができるため重要と思われる.

亜酸化窒素(笑気)吸入鎮静法、静脈内鎮静法は反射予防に有効か?

亜酸化窒素(笑気)吸入鎮静法は反射抑制のための一手段となる可能性が示唆される。
静脈内鎮静法は、静脈路確保時に反射が惹起される可能性があり術前指示も含め 適切な配慮が必要となる .
岡山県 岡山市北区 今保 久米 中山道 延友 白石 花尻 北長瀬 西バイパス近く
鎮静法は精神的および身体的ストレスを和らげることを目的に歯科治療と併用して行われ
るが、静脈内鎮静法では静脈路確保時の針の刺入または抜去時の痛みにより反射を生じる
可能性がある。
その点においては、亜酸化窒素(笑気)吸入鎮静法を施行するにあたっては,
鎮静時に痛みを伴うことがないため有用性は高いと言えるが、
どちらの鎮静法においても鎮静深度が適切でないと反射予防の有効性はないため注意が必要である。
特に静脈内鎮静法では使用する薬剤がミダゾラムのみ、プロポフォールのみ、
ミダゾラムとプロポフォールの併用など様々であり、それにより鎮静深度の維持の方法も変わってくる。
また、反射発症のリスク因子として疲労や空腹なども報告されており、鎮静法を行う前の禁食禁水を含め
た術前指示にも十分な配慮が必要である。

生体監視モニタで他の病態と鑑別診断がある程度可能である?

血管迷走神経反射時には、生体監視モニタにより血圧低下および副交感神経緊張に伴う
急激な心拍数の減少が確認できる。
また心電図による不整脈の種類から血管迷 走神経反射と心原性疾患との鑑別が可能となる.

心電図は特に血管迷走神経反射と心原性疾患との鑑別に有効である。血管迷走神経反射では副交感神経の緊張が高まったことによる洞性徐脈となる。
まれにアナフィラキシーショック時に副交感神経緊張に伴う循環抑制から徐脈をきたすこがある。蕁麻疹等の皮膚症状が認められれば、血管迷走神経反射は否定されアナフィラキシーとなる。
モニタのみではなく他の併発症状も確認する必要がある。

痛みを伴う処置で反射は起きやすいか?

採血時に血管迷走神経反射を生じた患者で血中のノルアドレナリン濃度が減少し、交感神 経活動が減少している 。
その際、血中アドレナリン濃度の減少を認めず、
結果としてβ2 効果が優位となって血管拡張を惹起し全身血管末梢血管抵抗の減少によって血圧低下を助長する.

本に関連する知見の多くが口腔顔面領域への疼痛刺激が血管迷走神経反射を惹起することを前提としている。
口腔顔面領域への何らかの侵害刺激は必ず三叉神経によって中枢へ伝播されるので、反射が起きる素因となることは自明であり、痛みを伴う処置は反射を誘発しやすいと認識すべきである。

血管迷走神経反射には個人差はあるが、そもそも健康成人誰にも備わっている神経経路である。

また、口腔顔面領域への疼痛刺激が血管迷走神経反射を惹起する誘因として、年齢や性差に加え、自律神経機能失調や低酸素血症、高炭酸血症、低血糖、痛みを伴う処置時の体位など
が挙げられる。

歯科治療中の血管迷走神経反射に対する 処置ガイドライン

アクアデンタルクリニック院長の高田です。
今日は 日本歯科麻酔学会から発表されている

「歯科治療中の血管迷走神経反射に対する 処置ガイドライン 」 を勉強しています。

ガイドラインの中の大切な内容をまとめながら、ブログに残していきたいと思います。

血管迷走神経反射とは ?

歯科治療に対する不安・恐怖・極度の緊張などの精神的ストレスが背景にあり、
痛み刺激などが与えられ、迷走神経緊張状態となり発症する全身的偶発症を
血管迷走神経反射という。
過去には神経原性ショック、疼痛性ショック、デンタル・ショック、脳貧血発作、
三叉迷走神経反射など様々な用語でよばれていた。

これらのうち、ショックは「急性循環不全により組織灌流が著明に減少し、
細胞機能が障害を受け、最終的には多臓器不全に陥る」と定義され、
また、脳貧血発作は一時的な脳虚血状態を示すだけであり、いずれも上記に示す病態に
あわない。

そこで、本病態は一過性の血圧低下と徐脈の頻度が高いので、「血管迷走神経反射」
という用語を使用する。

血管迷走神経反射の発症頻度は男性に比べて女性の方が高い?

被検者 1,055 人の献血者のうち血管迷走神経反射を発症した献血者の中で
年齢と性別との 関連性が認められた 。
自己血採血室と中央採血室での採血時に血管迷走神経反射を起こした患者を対象とした研究では、
中央採血室で有意に若年者が多く、性別では自己血採血室、
中央採血室共に女性に血管迷走神経反射の発現頻度が多い傾向があり、
血管迷走神経反射の発生頻度と年齢と性別との関連性が認められた。
採血時の血管迷走神経反射の発生状況と背景因子を検討した研究では、
血管迷走神経反射 の発症率は 20 歳未満の割合が突出していて、性別では女性のほうが多い傾向にあった 。

心室性期外収縮を有する患者で、静脈内鎮静法のための静脈路確保時に血管迷走神経反射
を起こし心停止に至ったが、胸骨圧迫により拍動が再開し
、回復後帰宅できたとの症例報告があり、血管迷走神経反射による負荷が加わったため
心停止に至った可能性が示唆され、合併している循環器疾患と関連性が考えられる 。
献血者のバックグラウンドが血管迷走神経反射の発現に関連するかを検討する研究では、
被検者 1,055 人の血管迷走神経反射の発生の献血者の中で、
循環血液量の減少が血管迷走神経反射の発生に関連があることが認められた

血管迷走神経反射に関する総説では、血管迷走神経反
射を起こす患者の多くは、交感神経系によって調節される正常な循環動態を示し、正常な圧
受容体反射機能を有するとしている。

いくつかの症例では血圧の低下は心拍出量の低下や血管拡張に起因している。
血管迷走神経反射が重症化する因子としては、内臓循環や肺循環
への血液貯留による体循環血液量の減少であるとされている。
交感神経系の虚脱による血管迷走神経反射では、徐脈を伴う血圧の低下が急激に起こり、
意識消失は脳循環の虚脱に起因するため、徐脈性の不整脈などを合併している場合は、
症状が重症化する危険性があることが示唆される 。
左室機能低下例で血管迷走神経反射の関与が疑われる 2 症例についての他の症例報告では、
左室機能低下例に合併する神経調節性失神は難治性で、予後の悪化に関連する可能性が示唆された。

歯科治療に対する不安の程度を把握すると反射発現を予測できるか?

歯科治療に対して強い不安や恐怖感をもつ患者は血管迷走神経反射の発現の可能性が高く
なる。不安や緊張感を把握し、予防的処置を講ずることが有益である。

迷走神経反射から失神をおこす患者は、QOL が低く、精神医学的な異常、不安、身体表現性
障害の指標が有意に高く、特に精神医学的な異常を有する患者は、VVR 再発の可能性が高い。
VVR 緩和治療が効果を奏しない患者は、精神的な障害、抑うつ、不安、恐れ、 認知障害などの指標が有意に高い。
岡山県 岡山市北区 今保 久米 中山道 延友 白石 花尻 北長瀬 西バイパス近く
採血時の VVR 誘因は、20 歳未満(採血の経験が少なく不安や緊張が高 まりやすいため) 、
女性、空腹、睡眠不足、不安・緊張、立ちくらみしやすい、過去に副作用歴がある、採血針 が痛かった、
採血時間が長かったなどが報告されている 。
これらの中 で不安や緊張が最頻因子であった 。
不安、緊張を緩和することを中心とした VVR 防止対策を実施したところ
VVR 発生頻度は 0.87%から 0.47%へと有意に減少した 。
また、臥床採血すると VVR が発症しても軽症に抑えることができた 。
歯科領域では、分析疫学的研究以上のエビデンスレベルの高い研究報告はな、
痛みや不安などの精神的なストレスが VVR から失神を引き起こした 、
歯科に対して恐怖感、不安感をもつ患者は、VVR を来しやすく、心拍変動解析が有用であることを示した症例
(レベルV)が報告されている。精神鎮静法や不安を緩和する予防的な措 置を講ずることで
VVR 発生頻度を減少させることが示されている

根管治療のおけるキレート剤:作用機序と使用指針

アクアデンタルクリニック院長の高田です。

根管治療のおけるキレート剤:作用機序と使用指針

根管治療の英語論文を読みました。

学んだ内容

キレート剤は、1957年Nygaard-Östbyによって、狭窄や石灰化した根管の根管形成の補助剤として歯内療
法分野に導入された。
工チレンジアミン四酢酸溶液(EDTA)は、象牙質透過性を増すだけでなく、根管象牙質を化学的に軟化し、
そしてスメャー層を溶解すると考えられている。
根管象牙質を軟化することを目的とする。

EDTA製剤の有効性については討論されてきたが、
キレート剤を用いた根管形成は近年再び人気を取り戻している。

ほとんどすべてのNiーTi製ファイル製造元は、回転切削による根管形成中は潤滑剤としてキレート剤の
使用を推奨している。
加えて、多くの教科書で、スメャー層除去を目的とする15%~17%EDTA溶液を用いた
根管の最終洗浄が推奨されている。

本論文は、キレート剤に関する論文を概説し、EDTA製剤の化学的および
薬理学的特性の概要を示し、そしてEDTAの臨床使用指針を策定する。

象牙質構造に及ぼすEDTAの時間依存性作用

アクアデンタルクリニック院長の高田です。

象牙質構造に及ぼすEDTAの時間依存性作用

根管治療の英語論文を読みました。

学んだ内容

本研究の目的は、EDTA適用1分および10分後のスメャー層の除去と
象牙質構造に及ほすEDTAの効果を評価することであった。

6本の単根抜去歯は60号で根管形成された。

それそれの根の根尖側1/3と歯冠側1/3は根中央部を残して取り除かれた。
それから同じ大きさの2つの切片に歯軸方向で切断された。

同じ歯根から2等分したそれぞれの切片は、10mLの17%EDTAを用いて、それぞれ1分および10分間洗浄された。

その後、すへての試料は、走査型電子顕微鏡評価に供された。

結果は、1分間のEDTA洗浄がスメャー層の除去に効果的であることを示していた。
しかし、10分間EDTAを適用すると細管周囲、そして細管内の象牙質の過剰な浸食が生じていた。

以上のことから、根管治療では1分以上この洗浄法を行うへきでないことが示唆された。