非侵襲性間接覆髄には どの覆髄材が適切か?

アクアデンタルクリニック院長の高田です。
日本歯科保存学会から出されている
「う蝕治療ガイドライン」を読んでいます。

 

非侵襲性間接覆髄には どの覆髄材が適切か?

歯髄に到達するような深いう蝕で、歯髄が臨床的に健康または可逆的の歯髄炎の症状を呈する場合、水酸化カルシウム製剤あるいはタンニン・フッ化物合材配合カルボ岸レートセメントで非侵襲性間接覆髄を行うことによって、う蝕関連細菌は減少し、う蝕象牙質が硬化する。よって非侵襲性間接覆髄に、水酸化カルシウム製剤あるいはカルボキシレートセメントを使用するように推奨される。

 

非侵襲性間接覆髄に水酸化カルシウム製剤あるいはカルボキシレートセメントを用いることによって う蝕関連細菌数は減少し、残った感染象牙質は硬化することが複数の臨床研究で示されている。

臨床症状が無く う蝕を完全に除去すると露髄しそうな深いう蝕を有する永久歯40歯に非侵襲性間接覆髄を適用し、初回のう蝕除去と4週間後の う蝕の再開拡時に う蝕象牙質から採取し培養した細菌数を比較した。具体的には 初回に う蝕象牙質を部分的に除去した後、水酸化カルシウム製剤またはコントロールとしてワックスを添付し、仮封した後4週間後に再度取り出した。その結果水酸化カルシウム製剤を入れた群の細菌数は減少していたのに対し、ワックスを入れた群の細菌数は優位に増加していた。よって、水酸化カルシウム製剤は う蝕象牙質に生息する細菌に対して抗菌性を発揮することが確認できた。

非侵襲性間接覆髄に水酸化カルシウム製剤を用いることで、う蝕関連細菌の減少と残った感染象牙質が硬化することが示されている。

タンニン・フッ素化合物配合カルボキシレートセメントは う蝕象牙質に生息する細菌に対して抗菌性を発揮するとともに、残ったう蝕象牙質の再石灰化を促進することが確認された。なお、残った感染象牙質の硬化は 水酸化カルシウム製剤では4~12か月経過時に認めたとの報告があり、タンニン・フッ素化合物カルボキシレートセメントでは3か月経過時に16症例中14例で効果を認めている。よって 非侵襲性間接覆髄の後のリエントリーは3か月以降が適切だと考えられる。

水酸化カルシウム製剤あるいはタンニン・フッ化物合剤配合カルボキシレートセメントは、従来より歯科治療に広く使用されてきた比較的安価なざいりょうであり 一般診療への導入は容易であると考えられる。また、歯髄に近接する深いう蝕に用いた場合、術直後の軽度な不快症状の発現の他には全身への副作用といった有害現象は報告されていない。以上のことより、非侵襲性間接覆髄に関しては水酸化カルシウム製剤あるいはカルボキシレートセメントを使用し、残った感染象牙質を覆髄3か月以降にレエントリーして除去することが推奨される。