コンポジットレジンで修復する際、深い窩洞には裏層が必要なのか?

アクアデンタルクリニック院長の高田です。
日本歯科保存学会から出されている
「う蝕治療ガイドライン」を読んでいます。

 

このような背景に加えて とくに1900年代にセルフエッチングプライマーを用いた接着システムが わが国において開発され、象牙質接着性能の信頼性が著しく向上したことにより、歯髄に近接した深い窩洞をコンポジットレジンにて修復する場合でも、従来のような裏層は行わずに 象牙質を接着システムにて処理したうえでコンポジットレジンを充填するようになってきた。

しかし、深い窩洞をコンポジットレジン修復する際に 歯髄刺激に関するかつての概念から習慣的に裏層を行っている歯科医師も依然として多いようである。したがって、深い窩洞におけるコンポジットレジン修復に裏層が必要かどうかについて根拠を示す必要がある。

6か所の開業歯科医院において行われた臼歯修復について、臨床成績に影響を及ぼす因子を検討した。それによると602本の臼歯の窩洞を水酸化カルシュウム製剤による覆髄、あるいはリン酸エッチングを用いた接着システムを直接応用する群にランダムに振り分けて処置を行った後、アマルガムあるいはコンポジットレジンにて修復した。そして3年後に279歯の臨床成績を評価した結果、16歯に歯髄処置が必要となり、歯髄症状の発現に影響を及ぼす因子は、窩洞の深さ、露髄の有無、最終修復素材であり、覆髄の有無には影響を及ぼさないことが明らかになった。

また456歯のコンポジットレジン修復について、接着システムの違いが術後の歯髄症状の発現に及ぼす影響を評価している。それによると、深い窩洞において歯髄症状が発現した症例は リン酸エッチングを用いた場合でも従来の裏層を行っており、裏層なしで接着システムを直接応用した症例では歯髄症状の発現は認められなかった。

さらにセルフエッチングタイプの接着システムとコンポジットレジンにて修復した106歯における2~7年後の歯髄症状の発現を評価している。その結果4歯に歯髄炎は発症しており、それはいずれも深い窩洞を水酸化カルシウム製剤あるいはグラスアイオノマーセメントで裏層したうえで修復された歯であり、裏層なしで修復された歯は全て良好に経過したと報告している。

 

 

コンポジットレジンの歴史

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着色しているが硬い う蝕象牙質について

濃く着色しているが硬い う蝕象牙質を残して良いかどうかについて討論した。

う蝕検知液について

う蝕検知液の症を推奨する根拠として採択された論文のエビデンスレベルはレベル4である。確実に感染歯質を除去し過剰切削を回避するためには、う蝕検知液の染色性以上の客観的診断基準は現在のところないことから、合意に達した。

コンポジットレジン修復に裏層は必要か?

露髄はしていない深い窩洞を確実な接着によってコンポジットレジンで修復した場合、裏層の有無は術後の歯髄症状の現在に影響を及ぼさない。よって深いう蝕に対するコンポジットレジン修復に裏層は必要ない。

1960~70年代において裏層なしでコンポジットレジン修復を行うと歯髄刺激が出現すると報告され レジン材料の科学的毒性が懸念された。さらに 象牙質にリン酸処理を行ってコンポジットレジン充填を行うと歯髄症状が増悪するとも報告され、その原因として リン酸の低いpHによる刺激や スミヤー層が除去されて象細管が開口することによる外来刺激物の侵入などが考えられた。その一方で象牙顎に酸処理を行っても細菌感染がなければ歯髄症状は発生しないことが報告され、レジン修復における歯髄刺激の原因は混とんとしていた。

その後もコンポジットレジン事態に細胞毒性があることを指摘した報告、コンポジットレジン修復直後の歯髄症状の発現の原因として、レジンモノマーによる歯髄刺激を懸念した報告も依然としてあり コンポジットレジン重複の際には象牙質を水酸化カルシウム製剤やグラウアイオノマーセメントで裏層することが推奨された。

ところが、技術革新によりレジンの接着性や閉演封鎖性が向上したことに伴い細菌侵入を排除した窩洞においてレジンの成分を個々に散布した実験から成分自体の歯髄刺激は軽微であることが確認され、また接着性レジンから流出した細胞毒性を示す構成成分を混合するとその毒性は軽減されることも明らかにされた。

さらに、コンポジットレジン修復時の象牙質エッチングの刺激は軽度で一過性があり歯髄に炎症が発生する主な原因は細菌侵入に代表されるレジンの辺縁微笑漏洩であることも再確認された。最近のレジン接着システムは露髄窩洞に用いても重篤な歯髄反応を起こすことなく被蓋硬組織の形成を伴った歯髄の治癒をマメくことができることも示され、近年では接着システムが生体適合性を有することが理解できるようになった。

「硬いが濃く着色したう蝕象牙質」を除去すべきか否かについては意見が分かれるところであるが・・・

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「硬いが濃く着色したう蝕象牙質」を除去すべきか否かについては意見が分かれるところであるが残存させた細菌がどのような経緯をたどるかについて十分には明らかにされていないため、硬いが濃く着色したう蝕象牙質を残存してよいかどうかについて指標を示すに足る根拠は得ることができなかった。

硬さをガイドにう蝕除去を行う際に有効な器具として、スプーンエキスカベータとラウンドバーがある。刃先が鋭利なスプーンエキスカベータを用いて、う蝕象牙質を除去すると残存象牙質のヌーブ硬さは24.1になるのに対し臨床で数年間使用したドンナ矛先のスプーンエキスカベータの場合6.7であったことを報告している。中等度の初発象牙質う蝕を有するヒト抜去歯を用い、細菌侵入度と象牙質硬さとの関係について調べ、細菌侵入領域は、ヌーブ硬さ20以内の領域であったことを認めている。よって、う蝕除去にスプーンエキスカベータを用いて刃先が鋭利なものを使用する必要があることが確認された。ラウンドバーを用いてう蝕象牙質の除去を行う場合は➀回転している様子が分かる程度の回転数え削除する。➁う蝕の大きさに合わせたラウンドバーを選択し、健全歯質にバーが触れないように注意する。➂古いバーは切れ味が悪く、切削面に圧力が加わる原因となるので使用しない、などのちゅういが必要である。

 

う蝕検知液に関しては1パーセントアシッドレッドのプロピレングリコール溶液からなるう蝕検知液については、その染色性と細菌侵入との関連性を調べた報告がある。中等度の う蝕を有するヒト臼歯に対し口腔内または抜歯直後に う蝕検知液をガイドに う蝕側から染色・う蝕象牙質の削除を行った。その結果う蝕の深部に行にあたって う蝕象牙質の染色性は赤染 ピンク触、淡いピンク触へと変化し、ピンク宣武では細菌の残存が認められたのに対して、淡いピンク尖部および不染色部では細菌の存在を認められなかった。また淡いピンク染色部は脱灰部と透明層からなる象牙質であった。さらに う蝕を有するヒト抜去歯に対して2種類の う蝕検知液に硬くても着色している部分は細菌感染のある脱灰層であり、このような着色部を除去すると病理組織的に最近の存在が求められていない透明層になった。

 

う蝕検知液の開発

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急性う蝕は着色が鮮明ではなく、軟化の前縁と細菌侵入の前縁が離れているため

着色や硬さを指標に感染象牙質のみを除去し、細菌侵入のない層を保存することは困難である。さらに 軟化したう蝕象牙質は細菌感染があり再石灰化不可能で知覚がない「う蝕象牙質外層」と、細菌感染がなく再石灰化可能で知覚のある「う蝕象牙質」の2層からなることを報告した。そして う蝕除去に関して、この再石灰化可能な う蝕象牙質内層は保存すべきであると指摘する。

う蝕象牙質内層および外層は どちらも着色が薄く柔らかいので、色や硬さを指標に2層を識別することはできない。そこでこれら2層を客観的に識別するため う蝕検知液を開発した。開発当初は 染色される う蝕象牙質は全て除去するように指示されていたが、染色部位を全て除去すると過剰切削となることを指摘する報告も多く、細菌では淡いピンクに染色される う蝕は残置するように勧めている。しかし、」肉眼的に淡いピンクという色調を測定する場合、主観に左右されることは否定できない。そこで従来のプロピレングリコールより大きい分子量のポリビレングリオール溶液からなる う蝕検知液も開発されている。

 

う蝕検知液の有効性を危惧する歯科医師もおおいようである。硬さの識別が困難である高速切削器具を多用した う蝕除去も行われている。したがって、除去すべき う蝕象牙質の診断基準として う蝕検知液の染色性や う蝕象牙質の硬さ・色は有効であるか否かについて整理し、治療指標を示す必要がある。

う蝕象牙質の硬さや色および う蝕検知液への染色性は 除去すべき感染象牙質の除去基準として有効であることが複数の臨床研究・基礎研究で示されている。修復処置を必要として来院された患者の永久歯546歯に対して、う蝕を開口後エナメル象牙境から象牙質試料を採取培養し その細菌数と採掘部位の臨床所見との関連性について調べた。

それらによると 軟らかく温室な う蝕象牙質の総細菌数は 軟らかく乾燥したう蝕象牙質より多かった。よって 硬いう蝕象牙質は 軟らかい う蝕象牙質に比べ優位に最新数が少ないことが確認できた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

歯質の硬さや色は、除去すべき う蝕象牙質の診断基準になるか?

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一般的な修復処置の基準として以下のようなものを挙げている。

・歯冠部う蝕では象牙質へ達している場合

・う蝕によって歯髄症状が生じている、あるいはすぐに生じそうな場合

・修復処置によって回復することのできる咬合・機能障害がある

・審美的障害があり、修復処置で改善することができる場合

・歯の欠損部への食片圧入や それによる口臭の訴えがある場合

・近接する歯周組織の健康状態を回復することができる場合

・修復物がアレルギー反応を引き起こした場合

・患者が過度な心理的ストレスのために修復処置を望む場合

以下のような情報を参考にして、う蝕の深さでは歯髄保護と修復処置のやりやすさ、患者への負担や治療後の満足度などを考慮して、エックス線写真で象牙質の外側1/3を超える場合は ただちに修復処置を行うことが推奨される。

 

歯質の硬さや色は、除去すべき う蝕象牙質の診断基準になるか?

硬いう蝕象牙質は軟らかいう蝕象牙質に比べ細菌数が有意に少ない。一方、コク着色したう蝕象牙質を除去すると細菌感染のない飴色ないし亜麻色の透明層となる。よって、鋭利なスプーンエキスカベータまたは低回転のラウンドバーを用い、歯質の硬さや色を基準にして う蝕象牙質を除去することが推奨される。

 

う蝕象牙質の除去に う蝕検知液を使用すべきか?

う蝕検知液を使用することにより、確実に感染歯質を除去し、過剰切削を回避することができる。よって、う蝕象牙質の除去に う蝕検知液の使用を推奨する。