う蝕検知液の開発

アクアデンタルクリニック院長の高田です。
日本歯科保存学会から出されている
「う蝕治療ガイドライン」を読んでいます。

 

急性う蝕は着色が鮮明ではなく、軟化の前縁と細菌侵入の前縁が離れているため

着色や硬さを指標に感染象牙質のみを除去し、細菌侵入のない層を保存することは困難である。さらに 軟化したう蝕象牙質は細菌感染があり再石灰化不可能で知覚がない「う蝕象牙質外層」と、細菌感染がなく再石灰化可能で知覚のある「う蝕象牙質」の2層からなることを報告した。そして う蝕除去に関して、この再石灰化可能な う蝕象牙質内層は保存すべきであると指摘する。

う蝕象牙質内層および外層は どちらも着色が薄く柔らかいので、色や硬さを指標に2層を識別することはできない。そこでこれら2層を客観的に識別するため う蝕検知液を開発した。開発当初は 染色される う蝕象牙質は全て除去するように指示されていたが、染色部位を全て除去すると過剰切削となることを指摘する報告も多く、細菌では淡いピンクに染色される う蝕は残置するように勧めている。しかし、」肉眼的に淡いピンクという色調を測定する場合、主観に左右されることは否定できない。そこで従来のプロピレングリコールより大きい分子量のポリビレングリオール溶液からなる う蝕検知液も開発されている。

 

う蝕検知液の有効性を危惧する歯科医師もおおいようである。硬さの識別が困難である高速切削器具を多用した う蝕除去も行われている。したがって、除去すべき う蝕象牙質の診断基準として う蝕検知液の染色性や う蝕象牙質の硬さ・色は有効であるか否かについて整理し、治療指標を示す必要がある。

う蝕象牙質の硬さや色および う蝕検知液への染色性は 除去すべき感染象牙質の除去基準として有効であることが複数の臨床研究・基礎研究で示されている。修復処置を必要として来院された患者の永久歯546歯に対して、う蝕を開口後エナメル象牙境から象牙質試料を採取培養し その細菌数と採掘部位の臨床所見との関連性について調べた。

それらによると 軟らかく温室な う蝕象牙質の総細菌数は 軟らかく乾燥したう蝕象牙質より多かった。よって 硬いう蝕象牙質は 軟らかい う蝕象牙質に比べ優位に最新数が少ないことが確認できた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

歯質の硬さや色は、除去すべき う蝕象牙質の診断基準になるか?

アクアデンタルクリニック院長の高田です。
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一般的な修復処置の基準として以下のようなものを挙げている。

・歯冠部う蝕では象牙質へ達している場合

・う蝕によって歯髄症状が生じている、あるいはすぐに生じそうな場合

・修復処置によって回復することのできる咬合・機能障害がある

・審美的障害があり、修復処置で改善することができる場合

・歯の欠損部への食片圧入や それによる口臭の訴えがある場合

・近接する歯周組織の健康状態を回復することができる場合

・修復物がアレルギー反応を引き起こした場合

・患者が過度な心理的ストレスのために修復処置を望む場合

以下のような情報を参考にして、う蝕の深さでは歯髄保護と修復処置のやりやすさ、患者への負担や治療後の満足度などを考慮して、エックス線写真で象牙質の外側1/3を超える場合は ただちに修復処置を行うことが推奨される。

 

歯質の硬さや色は、除去すべき う蝕象牙質の診断基準になるか?

硬いう蝕象牙質は軟らかいう蝕象牙質に比べ細菌数が有意に少ない。一方、コク着色したう蝕象牙質を除去すると細菌感染のない飴色ないし亜麻色の透明層となる。よって、鋭利なスプーンエキスカベータまたは低回転のラウンドバーを用い、歯質の硬さや色を基準にして う蝕象牙質を除去することが推奨される。

 

う蝕象牙質の除去に う蝕検知液を使用すべきか?

う蝕検知液を使用することにより、確実に感染歯質を除去し、過剰切削を回避することができる。よって、う蝕象牙質の除去に う蝕検知液の使用を推奨する。

 

切削の対象となるのは どの程度に進行したう蝕か?

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切削の対象となるのは どの程度に進行したう蝕か?

以下の所見が認められる場合は修復処置の対象になります。とくに複数認められる場合にはただちに修復処置を行うことが望ましい。

・歯面を清掃乾燥した状態で肉眼あるいは拡大鏡でう窩を認める

・食片圧入や冷水痛などの自発症状がある

・審美障害の訴えがある

・エックス線で象牙質の1/3を超える病変を認める

・う蝕のリスクが高い

 

一般に臨床判断基準は臨床研究のエビデンスに加えて 患者の希望と同意や  医師側の技術や医療環境によって決まると言われている。したがって切削介入の判断も う蝕診断の結果だけで必ずしも決まるものではない。したがって、日本独自の背景を加味して日本語論文を検索くしたところ、2つのレエビューと解説が同じ研究グループから出されていた。

 

それらによると臼歯部隣接面の初期う蝕への対応は

・咬翼法エックス写真により判断

・象牙質にたっしていないう蝕は経過観察

・象牙質の半分を超えるう蝕はただちに処置を行う

・象牙質の半分を超えるう蝕も ただちに充填

・象牙質の半分を超えていないう蝕は予防プログラムを実施し、拡大傾向であれば充填処置を行う。

切削介入が早いか遅いかによる その後の臨床経過を比較した臨床研究は国内外では見当たらなかった。したがって修復処置は象牙質内に0,5㎜より深い病変で考慮し、それより浅い病変では予防処置や再評価を考慮することが推奨されている。

したがって象牙質に達した場合は個々の症例で自覚症状の有無、患者の年齢、う蝕のリスク、患者の希望、術者の経験などから その進行速度を見極めたうえで切削介入しても良いだろう。

 

う蝕の進行程度を診断する方法

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前歯部の隣接面う蝕は無影灯の光を透過させて舌側からミラーで観察する透過診によって う蝕部は暗い影として深部への広がりまで知ることができる。

しかし 臼歯部では辺縁隆線の白濁あるいは黒変の微妙な変化を鋭い目で観察することになる。それを補助するために先端外径0,5㎜の光ファイバーによるFOTIが使われている。

う窩と口腔粘膜との間のインビーダンスを計測し、う蝕の進行程度を診断する方法は わが国で考案されたものである。電気抵抗による診断は咬翼法エックス線写真と比較してより正確であるとされている。しかし 残念ながら日本製の診断装置は製造中止され、現在は海外製品の入手も困難であるため推奨することができない。

レーザーを用いた う蝕診断装置の動作原理はレーザー光を照射したときに発する発光のスペクトルが健康歯質と う蝕罹患歯質では異なることを応用7している。この差を検知器で検知してディスプレイに00から99までの数値として客観的に表示される。

エナメル質う蝕の検出は象牙質う蝕よりも感度は低く 特異度が高い。

したがって、基本的な診断装置としての有用性には限界があるとされている。我が国においては本装置がそれほど広く普及していないことから今後、この種の補助的診断法が広く使われるようになることが期待される。

 

う蝕の検査法は有効性と信頼性に優れていなければならない。有効な検査法とは う蝕の状態をっ正確に表示することであり、信頼性のある検査とは検査を繰り返し行っても同じ結果が得られる、すなわち再現性が高いことを意味する。再現性とは同一診査者が繰り返し行う場合と異なる診断者が行う場合に分けられる。いずれにしても再現性を高めるには事前の訓練が必要である。

う蝕の診査

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近年のクリニカル・カリオロジーの発展により う窩形成前の初期う蝕を早期的に診断し、切削介入にいたらないように早期管理することが

う蝕治療の課題になっている。

エナメル質初期う蝕の診断に重点を置いた新しいう蝕進行分類でも修復処置の推奨基準が変化してきている。

ときに歯冠部う蝕が多発し、侵攻の早い7歳~18歳の永久歯初発う蝕に対する診断は重要である。

しかし、永久歯咬合面のいわゆるhidden cariesおよび隣接面における初発うしょくの診断にはばらつきが多く切削介入の決断基準が歯科医師間で定まっていない現状がある。そこで咬合面う蝕および隣接面う蝕の検出に精度の高い診査方法ならびに どの程度進行したう蝕であれば ただちに修復対象にすべきかを

ガイドラインとして示して、わが国における新たなコンセンサス形成の一端にしたい。

 

現在 う蝕検査には視診・触診・咬翼法エックス線・電気抵抗・透過診・レーザー蛍光法などが用いられている。それらの検診の有効性に関しては咬合面う蝕に関しては視診・触診・咬翼法エックス線・電気抵抗およびレーザー蛍光法・隣接面う蝕では視診・触診・咬翼法エックス線が評価の対象になっている。

古くから う蝕の診査には明るい照明の下でミラーと探針を用いた視診と触診が行われてきた。咬合面う蝕では小窩裂溝の着色状態、探針を引き抜く時の抵抗感などを指標にしてきたが、その病理的診断は術者により大きく異なっている。また探針により再石灰化可能な裂溝を医原的に破壊してしまうことが懸念される。

しかし、視診は患者の口腔内全体を観察するという点では、う蝕経験や清掃状態などのう蝕のリスク判断には欠かせない。探針による触診は強い力で歯質を突き刺すようなことをしなければ 咬合面や隣接面の歯垢や食片を除去し 歯や修復物の表面およびそれらの界面の微妙な感触でう蝕病変の情報を得ることができる。う蝕形成にある場合は触診と視診の感度は う蝕形成のない状態に比べて格段に上がるとされている。

視診では鋭い目を持つことが要求されるため、裸眼だけではなく双眼拡大鏡を よういすることも有効である。う蝕検査を精密に行うために、診断に先立ってはブラシやデンタルフロスによる歯面清掃とスリーウェイシリンジデ歯面乾燥を十分に行うことは言うまでもない。したがって従来通りの視診と触診は推奨される。