1型糖尿病と2型糖尿病では関与の違い

アクアデンタルクリニック院長の高田です。
日本糖尿病学会から出されている
「糖尿病診療ガイドライン2019」を読んでいます。

1型糖尿病と2型糖尿病では関与の違いが知られている。1型糖尿病では高血圧は神経障害の最も強い予想因子であり、高血圧の存在は6年間の神経障害発症の相対的リスクを約4倍にすることが報告されている。収縮期高血圧の存在は年齢糖尿病の時期 および代謝制御の調節を調整しても神経障害の独立した予想因子であることを報告している。一方 2型糖尿病での高血圧と神経障害の関係は「明確ではない。厳密な血圧コントロールは糖尿病神経障害の悪化を軽減していない。

高血圧は糖尿病による網膜血管内皮障害を助長し網膜血管の血流調整機構の障害や内皮細胞障害の進展による血管内皮増殖因子活性の上昇などを介して網膜症を進行させる。糖尿病網膜症の疫学研究であるでは網膜症がないことが確認された2型糖尿病病4758人を罹病16年後まで追跡し、重度の非増殖性 増殖性網膜症の診断をエンドポイントまで解析した。この間 延べ5万回の眼底検査が実施され 追跡終了までに重度の非増殖性 増殖性網膜症の発表は100人で認められた。一般に1型糖尿病では高血圧症はミクロアルブミン尿症または明白な腎症を持つ患者に認められ デンマークの断面研究では タンパク尿のない1型糖尿病患者で高血圧の頻度は一般人口4,4パーセントに対して3,9パーセントであった。2型糖尿病では高血圧症は腎臓病に先駆けて存在する。耐糖能異常と高血圧症のため共通のリスクファクター肥満など共通であることが知られている。すでに新しく診断されたたんぱく尿なしの2型糖尿病の58パーセントあ高血圧症であり 他の研究では70%だった。高血圧発症は腎機能低下には関与するが糖尿病罹患機関には関与しないことが知られている。上記のようにアルブミン尿は2型糖尿病よりも1型糖尿病で高血圧に先行するが、両病型とも腎機能の悪化はさらに血圧上昇に関与する。

糖尿病に合併した高血圧は大血管症のリスクファクターか?

アクアデンタルクリニック院長の高田です。
日本糖尿病学会から出されている
「糖尿病診療ガイドライン2019」を読んでいます。

 

糖尿病に合併した高血圧は大血管症のリスクファクターか?

糖尿病と高血圧は いづれも動脈硬化による血管疾患の確立したリスクファクターであり、糖尿病に高血圧が合併すると大血管疾患の発症頻度が増加し、予後が悪化する。

国内外の疫学研究から糖尿病患者では非糖尿病患者に比べて高血圧患者でも糖尿病の頻度は非高血圧に比べて高いことが報告されている。また1型糖尿病および2型糖尿病で高血圧が合併すると大血管疾患症および死亡のリスクが上昇することが支持されている。MRFITはアメリカ男性34万人をへいきん12年間追跡した観察研究であるが大血管疾患死亡率は糖尿病群に比べて3,7倍高く 糖尿病症例で脂肪値、喫煙などと独立して追跡開始時の収縮期血圧は大血管疾患死の有害な予知要因であった。日本のデターは日本の一般住民を対象としたコホート研究であるが 追跡開始時の糖尿病者では血圧値が高いほど 大血管疾患死の絶対的リスクが増加することを報告している。日本人コホートを含む環太平洋の39万人を解析したmetaアナリスであるが 糖尿病症例では上昇するに伴い大血管疾患死亡は18%増加することが示されている。2型糖尿病における高血圧症例を非厳格昇圧療法と厳格降圧療法に割り付け平均10,5年間追跡した介入研究であるが、大血管および毛細血管症の発生率は追跡完了までの上昇とともに増加し、優位に増加することが明らかになっている。

 

糖尿病に合併した高血圧は細小血管症のリスクファクターか?

糖尿病に合併した高血圧は糖尿病神経障害、糖尿病網膜症、糖尿病腎症など細小血管症のリスクファクターである。高血圧が糖尿病神経障害、糖尿病網膜症、糖尿病腎症など細小血管症のリスクファクターとなることが1型糖尿病、2型糖尿病ともに報告されている。

高血圧は糖尿病神経障害の危険要因であることが知られている。

 

歯周病の診断基準

アクアデンタルクリニック院長の高田です。
日本歯周病学会から出されている
「歯周病患者における再生治療のガイドライン」を読んでいます。

 

歯周病の診断基準

歯周炎の進行に伴う歯周組織の欠損は、臨床的にはアタッチメントロス、プロービングデプスの増加、 エックス線写真上の骨量減少として表れる。この欠損に対する再生治療の目標は、喪失した歯周組織が以 前と同様の組織で再構築し機能させることであり、具体的には歯槽骨、セメント質および歯根膜などの失 われた歯周組織を再生させることである。  歯周組織再生治療後の評価は、実施した再生治療の成否を歯科医師自らが判断するため、また患者に対 してモチベーションを維持させるための重要な資料となり得る。  本邦において歯周組織再生治療による歯周組織の再生を日常診療で評価する基準は定められていない が、2011年に厚生労働省より発出された「歯周組織治療用細胞シートに関する評価指標 」には、歯周 組織破壊を伴う歯周疾患(歯周炎)等の治療を目的として適用される歯周組織治療用細胞シートを用い た歯周組織再生治療の有効性に関する評価指標が示されている。また、1996年に発行された「Consensus Report Periodontal Regeneration Around Natural Teeth3)」では臨床的評価に関する推奨事項が合意さ れており、その内容は「歯周組織治療用細胞シートに関する評価指標」でも参考にされ、網羅されている。  以上のことから、本邦において歯周組織再生治療による歯周組織の再生を日常診療で評価する場合には、 厚生労働省より発出された「歯周組織治療用細胞シートに関する評価指標」を参考にすることを推奨する。

 

測定項目

アメリカ歯周病学会のコンセンサスレポートなどを参考にする。歯周組織再生治療の目標は歯周組織付 着器官を再生させることであり、臨床的には、骨欠損がどれだけ新生骨で満たされたか、あるいは、臨床 的アタッチメントの獲得がどれだけ認められたかを評価する必要がある。ただし、通常行われる組織付着 療法においても上皮性付着を含む臨床的アタッチメントの獲得が認められるため、歯槽骨レベルの改善を 主要な評価項目に設定して対照群と比較することが推奨される。

骨移植、根面処理、GTR法

アクアデンタルクリニック院長の高田です。
日本歯周病学会から出されている
「歯周病患者における再生治療のガイドライン」を読んでいます。

骨移植

骨移植術では、骨欠損に骨移植材を充填するが、用いられる移植材としては、自家骨、他家骨、異種 骨、人工骨がある。これらのなかでゴールドスタンダードとして用いられるのは自家骨だが、採取部位も 手術を行わねばならないことや、供給量に限界もある。他家骨として米国において普及している脱灰凍結 乾燥骨(demineralized freeze-dried bone allograft;DFDBA)は良好な成績 を治めているが、国内で は認可されていない。現在、異種骨としてウシ焼成骨などは使用可能であるが、異種骨の使用を拒否する 患者も少なからず存在する。人工骨としては、ハイドロキシアパタイト(hydroxyapatite)や三リン酸カ ルシウム(tricalcium phosphate)が代表的なものである 。これらの移植材は、単独で使用されるほか、 GTR法、EMDと併用して使用されることもある。

 

根面処理

 歯周外科中にSRPを行った後に、根面の処理を行うことによって、歯周組織の再生を得ようとする試 みがなされている。Stahlら6)は、歯根面を酸で脱灰して象牙質のコラーゲン線維を露出させることにより、 周囲組織中の間葉系細胞がセメント芽細胞に分化し、セメント質の沈着を促進する可能性を示唆した。動 物実験では、クエン酸やテトラサイクリンによる歯根面脱灰後に治癒反応が向上することが組織学的に示 された ものの、臨床研究からは有効な結果が得られなかった 。  近年、歯周外科手術中にEDTAで脱灰した歯根面にEMDを適用する方法が開発された。これは、歯 根の発生段階において分泌されるタンパク質で、内外エナメル上皮が根尖側に移動し形成されるヘルト ヴィッヒの上皮鞘(HERS)より分泌される。歯根形成期において、HERSの細胞はセメント質の形成に先立ち歯根面にエナメルタンパク質を沈着させ、そのタンパク質がセメント質形成を誘導するという知 見に基づいている 11)。このことからEMDによる歯周組織再生の可能性をHeijlら やHammarström らが検討し、Biora社(Sweden)により、ブタの歯胚より採取、精製、商品化されたのがEmdogain Ⓡである。日本においては安全性と利便性を高めたprefi lled syringe typeのエムドゲインⓇゲルとして使 用可能である。現在、先進医療「歯周外科治療におけるバイオ・リジェネレーション法」として厚生労働 省より承認を得て、いくつかの大学附属病院で使用されている 。

GTR法

 GTR法は、骨欠損部に遮蔽膜を設置することで歯肉上皮、歯肉結合組 織由来細胞の侵入を防ぎ、歯根膜由来細胞を選択的に歯周組織の欠損に誘導することにより、歯周組織再 生を図るというものであった。現在までにさまざまな遮蔽膜の開発が行われ、多くの臨床報告が行われて いる。適応症を的確に選択すれば予知性をもった結果が得られるが、複雑な骨欠損に対して応用は難しく、 術式の技術的難易度が高い。さらに、Araújoらは、Ⅲ度の根分岐部病変を対象とした動物実験結果 から、治癒した組織は本来のセメント質の構造や歯根膜のcollagen fi berの走行と異なっていたとして、 GTR法は、Guided Tissue Repairではないかと問題提起がされている。現在では、GTR法の概念に基づ いて骨造成を行うGuided Bone Regeneration(GBR)法としての応用が主流をなしている。

歯を削られる患者の心の深層に常に思いを馳せながら治療を進めることが大切である。

アクアデンタルクリニック院長の高田です。
日本歯科保存学会から出されている
「う蝕治療ガイドライン」を読んでいます。

う蝕治療は正しく医療行為であるにもかかわらず、う蝕治療を受けた患者からは「歯を削られた」と言われる場合が多い。これは今日までの う蝕治療が歯を削られる患者さまの心の奥まで十分理解していなかったためであろう。

入り口は狭くても歯の内部で広がっている咬合面う蝕や 咬合面から見えなられ隣接面う蝕の様子をエックス線写真で見せられ、削る前に説明を聞いても 患者は黒くないところは削られるはずがない。と常識的に思うものである。しかし多くの場合 う蝕の開放と う蝕象牙質の除去は 患者が見えないところで しかもしゃべれない状態で実行される。処置後の歯を見た患者は愕然とする。何と孔はびっくりするほど大きくなっているではないか!このような体験は 患者の心の中に 憎しみと後悔の想いを残すことになる。したがって患者と歯科医師の常識にズレが生じないように、また どうしても削らなければ確実な治療ができないことの理解を得るために 例えば患者が治療の様子を鏡で見れるようにするなどの配慮や工夫が必要である。う蝕の修復治療は もとどおり良く咬めるように機能の回復を図るだけでなく、自然らしさ 色調 形態など審美的な面においても患者一人一人の歯への思いを理解し、その期待を裏切ることがないように努めなければならない。修復された歯は その後も長く患者とともに人生を歩むことになるからである。本ガイドラインの基本理念であるMIによる う蝕治療は歯を削られたくない 患者の気持ちと一致した超法であるが、それでも我々歯科医師は 歯を削られる患者の心の深層に常に思いを馳せながら治療を進めることが大切である。そうすれば う蝕治療を受けた患者から「喜ばれる」ことはあっても歯を削られたといわれることはなくなるであろう。