歯内療法に用いられる仮封材の微小漏洩研究

アクアデンタルクリニック院長の高田です。

歯内療法に用いられる仮封材の微小漏洩研究

根管治療の英語論文を読みました。

学んだ内容
本研究の目的は、新規に導入した流体濾過法を用いて、一般の歯内療法に用いられる種々の仮封材の封鎖性を定量評価することである。

その評価材料としてCavit、Cavit-G、TERM、グラスアイオノマーセメント、
リン酸亜鉛セメント、ホリカルボキシレートセメント、およびIRMを用いた。

ヒト切歯、犬歯、およひ小臼歯の抜去歯を検索対象とし、
そして、それらに対して髄腔開拡を行う前に漏洩試験を行うことで各検索歯に対する同一対照(コントロール)とした。

髄腔開拡後、綿球を髄腔内に置き、仮封材の厚みを4mmとした。仮封後,
たたちに検索歯はリンカー液に浸漬され、37℃の恒温で放置された。
漏洩は、さまさまに時間間隔を設定して測定した。

観察期間8週間を通して、Cavit、Cavit-G、TERM、クラスアイオノマーセメントはこの漏洩試験に耐えうる封鎖材と考えられたか、一方、リン酸亜鉛セメントによる仮封では10歯のうち4歯に漏洩か観察された。
IRMとホリカルボン酸セメントは、漏洩試験した材料のなかでもっとも封鎖性に対する効果の乏しい材料
であった

血管迷走神経反射に合併している循環器疾患と関連性は?

アクアデンタルクリニック院長の高田です。
日本歯科麻酔学会から発表されている

「歯科治療中の血管迷走神経反射に対する 処置ガイドライン 」 を勉強しています。

ガイドラインの中の大切な内容をまとめながら、ブログに残していきたいと思います。

血管迷走神経反射に合併している循環器疾患と関連性はあるか?

不整脈などの循環器疾患を合併する場合、歯科治療中の血管迷走神経反射の発症頻度あるいは重症化に関連がある。
血管迷走神経反射の発症頻度あるいは重症化に循環血液量の減少を疑わせるような病態(貧血、低体重、低栄との関連はある。

心室性期外収縮を有する患者で、静脈内鎮静法のための静脈路確ー保時に血管迷走神経反射を起こし心停止に至ったが、
胸骨圧迫により拍動が再開し、回復後帰宅できたとの症例報告があり、
血管迷走神経反射による負荷が加わったため心停止に至った可能性が示唆され、
合併している循環器疾患と関連性が考えられる 。
献血者のバックグラウンドが血管迷走神経反射の発現に関連するかを検討する研究では、被検者 1,055 人の血管迷走神経反射の発生の献血者の中で、
循環血液量の減少が血管迷走神経反射の発生に関連があることが認められた 。

血管迷走神経反射に関する総説では、血管迷走神経反射を起こす患者の多くは、
交感神経系によって調節される正常な循環動態を示し、正常な圧受容体反射機能を有するとしている。
いくつかの症例では血圧の低下は心拍出量の低下や血管拡張に起因している。
血管迷走神経反射が重症化する因子としては、内臓循環や肺循環への血液貯留による体循環血液量の減少であるとされている。
交感神経系の虚脱による血管迷走神経反射では、徐脈を伴う血圧の低下が急激に起こり、意識消失は脳循環の虚脱に起因するため、徐脈性の不整脈などを合併している場合は、症状が重症化する危険性があることが示唆される。
左室機能低下例で血管迷走神経反射の関与が疑われる 2 症
例についての他の症例報告では、左室機能低下例に合併する神経調節性失神は難治性で予後の悪化に関連する可能性が示唆された 。

血管迷走神経反射は、体内の静脈系への血液の異常な貯留により体循環の血液容積が減少し、静脈還流が急激に減少した心室が交感神経反射が起きた時に症状が重症化する危険性がある。
また、一過性に心拍出量が減少するため、循環血液量の減少がある場合は、症状が重症化し、遷延化する危険性がある。

血管迷走神経反射は、体内の静脈系への血液の異常な貯留により体循環の血液容積血管迷走神経反射や失神の治療に用いた薬物の効果を論じた文献は多いが、一定の見解は得られておらず、国内外のガイドラインにおいても強く推奨されている薬物は存在しないようである。
誘因となる薬物の記載はあるが、その根拠となる文献は少なく、検索の結果、
該当する文献もなかった。また、VVR を前投薬で予防しうることを記載した文献はなかった。

治療前の血圧・脈拍測定で反射発現を予測できるか?

反射発現前には頻脈になるとの報告がある 。また、処置前の収縮期血圧が100mmHg 未満、
拡張期血圧が 70mmHg 未満で反射発現のリスクが低かったとの報告もある。
しかし、歯科治療中のどの処置が反射発現の引き金となるか一概にはいえないため治療前の血圧・脈拍測定で予測することは難しい。
ただ、反射発現の状態把握、迅速 に対処するためには持続的な血圧・脈拍測定は有効である 。

血管迷走神経反射は様々なことが原因で発症する。反射発現前には頻脈になるとの報告があるが、例えば歯科治療中における局所麻酔施行後、患者は注射による痛みと局所麻酔薬内に含まれる
血管収縮薬により血圧と脈拍の上昇がみられる。
しかし、その後全ての患者が反射を発現するわけではない.

また、血圧においても処置前の血圧が低い方が反射発現のリスクが低いとの報告があるが、高血圧症を有する患者はもともとの血圧が高くどこに基準を設けたらいいか不明瞭である。
以前にも反射発現の既往があること、治療当日の体調、年齢、性別など様々な因子を考慮する必要がある。
さらに歯科治療中患者の状態は刻々と変化しどの処置が反射発現の引き金になるか一概にいうことができない。
そのため治療前の血圧・脈拍測定のみで反射発現を予測することは難しい。

しかし、治療前より血圧・脈拍などのバイタルサインを持続的に測定することは血管迷走神経反射などの偶発症を速やかに発見し対処することができるため重要と思われる。

血管迷走神経反射とは?

アクアデンタルクリニック院長の高田です。
日本歯科麻酔学会から発表されている

「歯科治療中の血管迷走神経反射に対する 処置ガイドライン 」 を勉強しています。

ガイドラインの中の大切な内容をまとめながら、ブログに残していきたいと思います。

血管迷走神経反射とは?

歯科治療に対する不安・恐怖・極度の緊張などの精神的ストレスが背景にあり、痛み刺激などが与えられ、迷走神経緊張状態となり発症する全身的偶発症を血管迷走神経反射という。

過去には神経原性ショック、疼痛性ショック、デンタル・ショック、脳貧血発作、三叉迷走神経反射など様々な用語でよばれていた。
これらのうち、ショックは「急性循環不全により組織灌流が著明に減少し、
細胞機能が障害を受け、最終的には多臓器不全に陥る」と定義され、
また、脳貧血発作は一時的な脳虚血状態を示すだけであり、いずれも上記に示す病態にあわない。
そこで、本病態は一過性の血圧低下と徐脈の頻度が高いので、
「血管迷走神経反射」という用語を使用する。
なお、(血管)迷走神経反射性失神(vasovagal syncope)という用語が確立されているが、本病態では失神に至らないものも包含していることを付け加える。

適切な局所麻酔を行う処置において最も多く発生し、米国では局所麻酔を行う患者のうち、0.65%に発生したと報告されている。

血管迷走神経反は 年齢・性別により発現頻度に差があるか?

血管迷走神経反射の発症頻度は男性に比べて女性の方が高い(推奨度 C)。また年齢との関連は、若年者でより発症頻度が高い。

献血者のバックグラウンドが被検者 1,055 人の献血者のうち血管迷走神経反射を発症した献血者の中で年齢と性別との関連性が認められた 。
自己血採血室と中央採血室での採血時に血管迷走神経反射を起こした患者を対象とした研究では、中央採血室で有意に若年者が多く、性別では自己血採血室、中央採血室共に女性に血管迷走神経反射の発現頻度が多い傾向があり、血管迷 走神経反射の発生頻度と年齢と性別との関連性が認められた 。
採血時の血管迷走神経反射の発生状況と背景因子を検討した研究では、
血管迷走神経反射 の発症率は 20 歳未満の割合が突出していて、性別では女性のほうが多い傾向にあった 。
血管迷走神経反射の発生と性別・年齢を検討した他の研究では、女性で有意に発症頻度が高 く、高齢者では発症頻度が低い事が認められた 。
また、他施設での供血者の血管迷走神経反射の発生に関する研究では、
年齢は発症頻度と有 意に関連があるが、性別には関連がないと結論している。
他の研究では、若年は成人に比べて血管迷走神経反射の発現が有意に多く、
女性では男性よりも発症頻度が 高い事が報告され 、
年齢が血管迷走神経反射の発生に関連があるが、性別に ついて女性は 2.5 倍の発生率を示すが有意な関連はないと報告している。

歯科治療中の発現頻度に関しての疫学データは無いが、
採血時の血管迷走神経反射の発現に関しては、若年者と女性で発現頻度が高い。

しかし、どのような生理的な機序で血管迷走神経反射の発症頻度に年齢と性別の差が関連しているかは不明である。
歯科治療中に発生した血管迷走神経反射が年齢と性別に関連を示唆する報告もあり、
関連性があるか判断するには充分な症例数を対象とした分析疫学的研究が必要である。

修復物の喪失および破折、あるいはう蝕によリロ腔内環境に 暴露された根管充填歯の細菌状態

アクアデンタルクリニック院長の高田です。

修復物の喪失および破折、あるいはう蝕によリロ腔内環境に 暴露された根管充填歯の細菌状態

根管治療の英語論文を読みました。

学んだ内容
目的:
根管充填材が長期間う蝕やロ腔内環境に暴露された歯の組織学的ならひに細菌学的所見について説明すること。

方法:
本研究の検索対象歯として、少なくとも3か月以上適切な修復処置が施されす、
さらに3年以上の予後観察をした根管充填歯のみを選択した。
そのうちの何本かは、数年間、修復処置をされていなかった。32歯の39根管を組織学的に検索した。

結果:
検索歯の大部分は、工ックス線評価において、明白な根尖病変を認めなかった。
溶骨性病変は5根管に観察された。
改良型Brown/Bren染色を用いて染色した歯根長軸方向の組織切片では、根管ロや根管ロ部の象牙細管内には多量の染色液陽性の細菌が観察されたか、
2歯を除くすべての試料において根中央部および根尖側では細菌が観察されなかった。

39根管中7根管において細菌侵入があったことを示唆する所見である根尖部軟組織および根尖分枝内の明瞭な炎症性細胞浸潤が認められた。
この7根管以外の全試料において、炎症性細胞浸潤は認められないか、散在している程度で、これらの散在性の細胞浸潤は、溢出したシーラー材料に関連したものであった。

結論:質の高い根管形成と根管充填が施された根管は、う蝕、あるいは修復物の喪失や破折により長期間ロ腔内環境に暴露されたとしても、細菌通過性に対して抵抗性を有する。

根管充填された根管におけるヒト唾液の歯冠漏洩

アクアデンタルクリニック院長の高田です。

根管充填された根管におけるヒト唾液の歯冠漏洩

根管治療の英語論文を読みました。

学んだ内容

本研究は、組織学的検索と色素浸透の2つの手法を用いて、
根管充填された根管の唾液浸透を時間的に評価することである。
総計160本のヒト上顎前歯が60号のHファイルで根管形成された。

それらの歯のうち10歯は根管充填を行わず、そして150歯はガッタバーチャとRothのシーラーによる
側方加圧充填法を用いた根管充填が行われた。
50歯は、厚さ約3mmとなるように仮封材を充填した。すべての歯はヒト全唾液50mL中に
浸漬し、湿度100%、温度37℃で保存した。
唾液は毎日交換した。2日、7日、14日、28日、90日ごとに、32歯を唾液から取リだした。
これらのうち2歯は根管充填をしない歯とし、根尖部1/3を培養することにより
細菌漏洩を検索した。

未仮封の10歯は、唾液浸透範囲を明らかにするために、ヘリカンインクに2日間浸漬した。
これらの歯は、脱灰後、色素浸透範囲を直接測定できるように透明標本にした。
残り20歯(仮封歯10歯と未仮封歯10歯)から、厚さ7〃mの脱灰連続切片を作成した。

切片はヘマトキシリン・エオジン染色とグラム染色(Brown-Hopps染色)を行った。
組織切片において評価された唾液浸透は、色素分析で可視化された唾液浸透より有意に小さかった。
3か月後の唾液浸透は、3か月以前の4つの観察期間と比べて有意に大きかった
と根管充填された根管でも再治療すべきであることを強く示唆している。