修復物の喪失および破折、あるいはう蝕によリロ腔内環境に 暴露された根管充填歯の細菌状態

アクアデンタルクリニック院長の高田です。

修復物の喪失および破折、あるいはう蝕によリロ腔内環境に 暴露された根管充填歯の細菌状態

根管治療の英語論文を読みました。

学んだ内容
目的:
根管充填材が長期間う蝕やロ腔内環境に暴露された歯の組織学的ならひに細菌学的所見について説明すること。

方法:
本研究の検索対象歯として、少なくとも3か月以上適切な修復処置が施されす、
さらに3年以上の予後観察をした根管充填歯のみを選択した。
そのうちの何本かは、数年間、修復処置をされていなかった。32歯の39根管を組織学的に検索した。

結果:
検索歯の大部分は、工ックス線評価において、明白な根尖病変を認めなかった。
溶骨性病変は5根管に観察された。
改良型Brown/Bren染色を用いて染色した歯根長軸方向の組織切片では、根管ロや根管ロ部の象牙細管内には多量の染色液陽性の細菌が観察されたか、
2歯を除くすべての試料において根中央部および根尖側では細菌が観察されなかった。

39根管中7根管において細菌侵入があったことを示唆する所見である根尖部軟組織および根尖分枝内の明瞭な炎症性細胞浸潤が認められた。
この7根管以外の全試料において、炎症性細胞浸潤は認められないか、散在している程度で、これらの散在性の細胞浸潤は、溢出したシーラー材料に関連したものであった。

結論:質の高い根管形成と根管充填が施された根管は、う蝕、あるいは修復物の喪失や破折により長期間ロ腔内環境に暴露されたとしても、細菌通過性に対して抵抗性を有する。

根管充填された根管におけるヒト唾液の歯冠漏洩

アクアデンタルクリニック院長の高田です。

根管充填された根管におけるヒト唾液の歯冠漏洩

根管治療の英語論文を読みました。

学んだ内容

本研究は、組織学的検索と色素浸透の2つの手法を用いて、
根管充填された根管の唾液浸透を時間的に評価することである。
総計160本のヒト上顎前歯が60号のHファイルで根管形成された。

それらの歯のうち10歯は根管充填を行わず、そして150歯はガッタバーチャとRothのシーラーによる
側方加圧充填法を用いた根管充填が行われた。
50歯は、厚さ約3mmとなるように仮封材を充填した。すべての歯はヒト全唾液50mL中に
浸漬し、湿度100%、温度37℃で保存した。
唾液は毎日交換した。2日、7日、14日、28日、90日ごとに、32歯を唾液から取リだした。
これらのうち2歯は根管充填をしない歯とし、根尖部1/3を培養することにより
細菌漏洩を検索した。

未仮封の10歯は、唾液浸透範囲を明らかにするために、ヘリカンインクに2日間浸漬した。
これらの歯は、脱灰後、色素浸透範囲を直接測定できるように透明標本にした。
残り20歯(仮封歯10歯と未仮封歯10歯)から、厚さ7〃mの脱灰連続切片を作成した。

切片はヘマトキシリン・エオジン染色とグラム染色(Brown-Hopps染色)を行った。
組織切片において評価された唾液浸透は、色素分析で可視化された唾液浸透より有意に小さかった。
3か月後の唾液浸透は、3か月以前の4つの観察期間と比べて有意に大きかった
と根管充填された根管でも再治療すべきであることを強く示唆している。

根管充填材に沿って生じる流体輸送と細菌通過性

アクアデンタルクリニック院長の高田です。

根管充填材に沿って生じる流体輸送と細菌通過性

根管治療の英語論文を読みました。

学んだ内容
根管充填した根管の歯冠側から根尖までの水の対流搬送は、120kPa(1.2気圧)のヘッドスへース圧を用いて実験的歯根片の根尖につないたガラス毛細管内の気泡の移動から測定した。
根管充填した根管内に生じた死腔を通過した水の移動は、前述の方法で再現性ある測定が可能であるとわかった。
60歯のヒト上顎犬歯歯根を、側方加圧充填法でカッタノヾーチャとシーラーを用いて根管充填した。
このうち30歯に、ます、歯根の歯冠側のレセルホア(病原巣)において増殖させた小運動性細菌の緑膿菌を暴露した。
50日後、2つの試料で根尖側レセルホアへの細菌通過を認めた。
そして、すべての根管は、水の対流搬送の定量評価に供された。評価結果は、
以下の”細菌漏洩性がない”(39根管)、”わすかな細菌漏洩”(14根管)、およひ”著しい細菌漏洩”(7根管)という3つの明確なカテゴリーに分類された。
根尖側レセルホアへの細菌通過が認められた2つの試料は、1つは”わずかな細菌漏洩”、そして、もう1つは”著しい細菌漏洩”のカテゴリーに分類された。

既往の細菌通過試験では、実験後の計測におけるこれら歯根の液体流動/ヾターンに統計学的な影響を認めなかった。

これらの所見は、根管充填された根管における流体移動においては、その根管のほとんどで細菌通過を認めないことを示している。

歯内療法における漏洩試験を再考する

アクアデンタルクリニック院長の高田です。

歯内療法における漏洩試験を再考する

根管治療の英語論文を読みました。

学んだ内容
歯内療法学分野において、漏洩に関する研究はますます多く発表されている。
990年刊行分において、実に科学論文4.3本ごとに1本か漏洩に関する研究であった。
もっとも一般的な漏洩の試験法は、根管充填材に沿って浸透した追跡子(色素や放射性同位体)の直線的距離を計測することであった。
1980年から1990年までに発表された論文のうち、ガッタバーチャを用いた側方加圧充填後、色素浸透の直線的距離を測定した論文データをいくつか比べると、これらの研究に用いられた実験方法は酷似しているものの、データには大きな差異が認められた。
さまざまな術式を評価したほとんどすべての漏洩研究において、
側方加圧充填法が比較対象の標準コントロールとして用いられている。
これらを用いた研究結果の信頼性は疑問の余地がある。
そうしたことから、そのような研究の問題点が検討されている。
適切な知識かほとんど得られないような実験方法で、異なる材料や術式を用いたときの封鎖性を評価し続けるよりも、漏洩試験の実験方法についてもっと研究をすへきように思える。

外傷時に行う処置

アクアデンタルクリニック院長の高田です。
日本歯内療法学会から発表されている

「歯内療法 ガイドライン」 を勉強しています。

ガイドラインの中の大切な内容をまとめながら、ブログに残していきたいと思います。

根未完成歯

処置の目的は、歯髄を保護することによって歯根の成長を促すことである。
覆髄もしくは アペキソゲネーシスが必要となる。残存する根部歯髄の生活力や機能を維持するために、
生体親和性の材料で直接覆髄する。
そして最終修復を行う。根が完成した後、非外科的歯内療法と補綴的な歯冠修復とが必要となる場合がある。
2)根完成歯 破折面の修復にクラウンによる補綴が必要でない場合、覆髄や断髄のあとで修復処置を施す。

目的
1)臨床症状の悪化を未然に防ぐ。
2)造影性のある材料で覆髄する。
3)審美的、機能的に良好な状態とする。
4)電気診、温度診で正常な応答が保たれる。
5)根尖歯周組織の破壊を防ぐ。
6)定期的なX線撮影により、歯根吸収や根管の石灰化がないある。
治療は、考えられる予後について患者に説明した後処置法 根未完成歯に関しては歯髄を保護することが最も重要である。
1)根未完成歯 初期治療 露髄を伴う歯冠破折において歯髄保護は大切である。
それに加え、破折した部分へ到達す るための外科処置が必要となる場合がある。
最終処置 露髄を伴う歯冠破折と同様の処置が適切である。
2)根完成初期治療、最終処置 歯冠修復を容易にするため、あるいは歯冠長を増やしたり、
歯根の挺出や意図的再植をす るために、多くの症例で非外科的歯内療法が適応となる。

目的
1)臨床症状の悪化を未然に防ぐ。
2)歯髄組織に接してX線不透過性の材料を置く。
3)審美的、機能的に良好な歯とする。
4)電気診や温度診に対する正常な反応を保つ。
5)根尖歯周組織の破壊を防ぐ。根尖歯周組織に病変がなければその状態を維持し病変があれば治癒と正常な状態への回復を図る。
6)定期的なX線撮影により、歯根吸収や根管の石灰化が最小限であることを確認する。
7)歯内療法を行うための十分な歯根の発育を促す。

歯根破折
根破折はセメント質、象牙質、歯髄に及び、その破折線は水平性と斜走性のものが多 い。
治療は、考えられる予後について患者に説明した後で行うべきである。

処置法 初期治療により、破折部には石灰化による治癒が始まる。
多くの症例では初期治療が最 終処置となるが、まれに非外科的歯内療法が必要な場合もある。
1)初期治療
歯冠部破折片を元の位置に戻すことで破折の整復を行う。指圧もしくは矯正装置により、
歯冠部破折片の位置を整えるだけですむかもしれない。
整復後は、歯冠部破折片を正しい 位置に適当な期間、強固に固定する必要がある。
2)最終処置 初期治療が成功したら、最終処置は定期的なX線診査や臨床診査だけですむ。
もし歯髄 壊死が進行していたら、非外科的歯内療法が適応となる。
歯根破折が根尖部で生じ、歯髄壊死という結果になった場合、破折片は外科的に除去するか、
もしくは非外科的歯内療法を併用する。
歯冠部歯質が歯槽頂付近まで喪失した場合には、歯根の挺出が適応となる。

目的
1)臨床症状の悪化を未然に防ぐ。
2)審美的、機能的に良好な状態とする。
3)根未完成歯では歯根成長の継続、あるいは完成をX線写真上で観察する。
4)歯根破折の治癒(石灰性、線維性、骨性)をX線的に観察する。
5)歯の動揺を最小とする。

脱臼

適応症
脱臼は、歯と支持組織の軽度から重度に及ぶ傷害である。
1)震盪 打診に敏感であるが、過度の動揺や転位はみられない。
2)亜脱臼 歯周組織に傷害があり、患歯に転位はないものの動揺を示す。
3)挺出性脱臼 歯槽窩内で、患歯が歯の長軸方向へ挺出する。
4)側方性脱臼 歯槽骨骨折を伴い、歯軸方向以外へ患歯が転位する。
5)陥入性脱臼 歯槽骨骨折を伴い、歯軸に沿って歯槽窩に陥入する。

処置法
1)初期治療 歯の整復とあまり強固でない固定、必要ならば歯根膜の回復を促す。
2)最終処置 正確に診断された歯髄壊死もしくは不可逆性歯髄炎の歯であれば、非外科的歯内療法を行う。
根未完成歯の治療は根完成歯の場合とは異なる。
根完成歯では歯髄壊死もしくは不可逆 性歯髄炎と診断されたらすぐに非外科的歯内療法を行うのに対し、
根未完成歯では未成熟 な歯髄に再び血流が戻る可能性も考慮しなければならない。
陥入した根尖の開いた幼若永 久歯の場合、初期治療の際に再萌出するか頻繁に経過観察する必要がある。

目的
1)臨床症状の悪化を未然に防ぐ。
2)できる限りもとの位置に戻す。
3)歯槽骨の成長が持続するようにする。

非外科的歯内療法を行う必要があるときには、
1)全ての根管を可能な限り根尖近くまで緊密に充填し、X線的に良好な根管充填をする。
過不足のある根管充填、レッジ、穿孔は避けるべきである。
2)根管内容物を除去する。
3)根尖歯周組織の健全な状態を維持し、治癒と修復を促進する。
根管充填時、根周囲に正常な歯根膜腔や歯槽硬線が存在するのであれば、
一時的なX 線的変化があったとしても、一定期間後には術後のX線像に変化はないことが予想される。
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X線透過像の大きさが縮小したが消失しない場合や、拡大しない場合、患歯が無症状 であっても、
不完全治癒とみなし、さらにX線写真による経過観察が必要である。
術前に根尖部透過像が存在したのであれば、経過観察期間中に健全な歯槽硬線や正常な根周囲の歯根膜腔が、
X線写真でみられることが予想される。
正常な歯根膜腔の形成がみられなくても、根尖部の骨の治癒がおこる場合がある。