骨移植、根面処理、GTR法

アクアデンタルクリニック院長の高田です。
日本歯周病学会から出されている
「歯周病患者における再生治療のガイドライン」を読んでいます。

骨移植

骨移植術では、骨欠損に骨移植材を充填するが、用いられる移植材としては、自家骨、他家骨、異種 骨、人工骨がある。これらのなかでゴールドスタンダードとして用いられるのは自家骨だが、採取部位も 手術を行わねばならないことや、供給量に限界もある。他家骨として米国において普及している脱灰凍結 乾燥骨(demineralized freeze-dried bone allograft;DFDBA)は良好な成績 を治めているが、国内で は認可されていない。現在、異種骨としてウシ焼成骨などは使用可能であるが、異種骨の使用を拒否する 患者も少なからず存在する。人工骨としては、ハイドロキシアパタイト(hydroxyapatite)や三リン酸カ ルシウム(tricalcium phosphate)が代表的なものである 。これらの移植材は、単独で使用されるほか、 GTR法、EMDと併用して使用されることもある。

 

根面処理

 歯周外科中にSRPを行った後に、根面の処理を行うことによって、歯周組織の再生を得ようとする試 みがなされている。Stahlら6)は、歯根面を酸で脱灰して象牙質のコラーゲン線維を露出させることにより、 周囲組織中の間葉系細胞がセメント芽細胞に分化し、セメント質の沈着を促進する可能性を示唆した。動 物実験では、クエン酸やテトラサイクリンによる歯根面脱灰後に治癒反応が向上することが組織学的に示 された ものの、臨床研究からは有効な結果が得られなかった 。  近年、歯周外科手術中にEDTAで脱灰した歯根面にEMDを適用する方法が開発された。これは、歯 根の発生段階において分泌されるタンパク質で、内外エナメル上皮が根尖側に移動し形成されるヘルト ヴィッヒの上皮鞘(HERS)より分泌される。歯根形成期において、HERSの細胞はセメント質の形成に先立ち歯根面にエナメルタンパク質を沈着させ、そのタンパク質がセメント質形成を誘導するという知 見に基づいている 11)。このことからEMDによる歯周組織再生の可能性をHeijlら やHammarström らが検討し、Biora社(Sweden)により、ブタの歯胚より採取、精製、商品化されたのがEmdogain Ⓡである。日本においては安全性と利便性を高めたprefi lled syringe typeのエムドゲインⓇゲルとして使 用可能である。現在、先進医療「歯周外科治療におけるバイオ・リジェネレーション法」として厚生労働 省より承認を得て、いくつかの大学附属病院で使用されている 。

GTR法

 GTR法は、骨欠損部に遮蔽膜を設置することで歯肉上皮、歯肉結合組 織由来細胞の侵入を防ぎ、歯根膜由来細胞を選択的に歯周組織の欠損に誘導することにより、歯周組織再 生を図るというものであった。現在までにさまざまな遮蔽膜の開発が行われ、多くの臨床報告が行われて いる。適応症を的確に選択すれば予知性をもった結果が得られるが、複雑な骨欠損に対して応用は難しく、 術式の技術的難易度が高い。さらに、Araújoらは、Ⅲ度の根分岐部病変を対象とした動物実験結果 から、治癒した組織は本来のセメント質の構造や歯根膜のcollagen fi berの走行と異なっていたとして、 GTR法は、Guided Tissue Repairではないかと問題提起がされている。現在では、GTR法の概念に基づ いて骨造成を行うGuided Bone Regeneration(GBR)法としての応用が主流をなしている。

歯を削られる患者の心の深層に常に思いを馳せながら治療を進めることが大切である。

アクアデンタルクリニック院長の高田です。
日本歯科保存学会から出されている
「う蝕治療ガイドライン」を読んでいます。

う蝕治療は正しく医療行為であるにもかかわらず、う蝕治療を受けた患者からは「歯を削られた」と言われる場合が多い。これは今日までの う蝕治療が歯を削られる患者さまの心の奥まで十分理解していなかったためであろう。

入り口は狭くても歯の内部で広がっている咬合面う蝕や 咬合面から見えなられ隣接面う蝕の様子をエックス線写真で見せられ、削る前に説明を聞いても 患者は黒くないところは削られるはずがない。と常識的に思うものである。しかし多くの場合 う蝕の開放と う蝕象牙質の除去は 患者が見えないところで しかもしゃべれない状態で実行される。処置後の歯を見た患者は愕然とする。何と孔はびっくりするほど大きくなっているではないか!このような体験は 患者の心の中に 憎しみと後悔の想いを残すことになる。したがって患者と歯科医師の常識にズレが生じないように、また どうしても削らなければ確実な治療ができないことの理解を得るために 例えば患者が治療の様子を鏡で見れるようにするなどの配慮や工夫が必要である。う蝕の修復治療は もとどおり良く咬めるように機能の回復を図るだけでなく、自然らしさ 色調 形態など審美的な面においても患者一人一人の歯への思いを理解し、その期待を裏切ることがないように努めなければならない。修復された歯は その後も長く患者とともに人生を歩むことになるからである。本ガイドラインの基本理念であるMIによる う蝕治療は歯を削られたくない 患者の気持ちと一致した超法であるが、それでも我々歯科医師は 歯を削られる患者の心の深層に常に思いを馳せながら治療を進めることが大切である。そうすれば う蝕治療を受けた患者から「喜ばれる」ことはあっても歯を削られたといわれることはなくなるであろう。

根面う蝕の修復処置にコンポジットレジンとグラスアイオノマーセメントのどちらを使用するか?

アクアデンタルクリニック院長の高田です。
日本歯科保存学会から出されている
「う蝕治療ガイドライン」を読んでいます。

 

根面う蝕の修復処置にコンポジットレジンとグラスアイオノマーセメントのどちらを使用するか?

辺縁適合性や二次う蝕の発生の点で、根面う蝕に対するコンポジットレジン修復とグラスアイオノマーセメント修復の1年まで臨床成績に有意な差は認められない。よって 接着システムの性能を十分に発揮させる条件下ではコンポジットレジンを使用し、う蝕が歯肉縁下におよび 防湿が困難な場合にはグラスアイオノマーセメントを使用するよう推奨される。

う窩の形成にいたり、修復処置が必要とされる根面の う蝕に対しては臼歯の臨在面であっても充填処置が行われることが多い。これは インレーやあんれーによる修復を行うとすれば歯冠を大きく削除しなければならず、抜髄を余儀なくされるケースが少なくない。

現在わが国では 根面う蝕の修復には コンポジットレジンか グラスアイオノマーセメントが用いられている。歯質接着性や強度、審美性の点では コンポジットレジンは明らかにグラスアイオノマーセメントより優れており、5級窩洞や くさび状欠損の場合と同様に 根面う蝕の修復でも非常に高頻度に使用されている。一方 歯冠部と異なり咬合力が直接作用しない部位であることや一連のの修復操作が簡便であること、あるいはフッ化物徐放性を有することなどから従来型または レジン添加型グラスアイオノマーセメントの使用を推奨する意見も根強い。両社の使い分けについては う蝕リスクに基づく選択などが提唱されているものの、根拠に基づく明確な指標とは言えづ、論理的かつ実用的な適用表示の必要性が高まっている。

根面う蝕に対するコンポジットレジン修復とグラスアイオノマーセメント修復の臨床成績を直接比較した研究は少なく、また 特にコンポジットレジン修復に関しては、単独での臨床評価を含め 現在は市販されていない材料についての成績を報告したものがほとんどである。現時点でも臨床で使用されている材料を用いた1編の非ランダム化比較試験では う蝕ハイリスク者の根面う蝕の修復処置におけるコンポジッドレジンと レジン添加型グラスアイオノマーセメントの1年間の臨床成績が比較された。その結果 コンポジットレジン修復では21症例っ全てで脱落は見られなかったが。レジン添加グラスアイオノマーセメントでは27症例中1例脱離が認められた。修復物の保持の点ではコンポジットレジンの方が優れているとされている。また、二次う蝕や辺縁適合性を含めた その他の評価項目では優位差は認められず、う蝕ハイリスク者においては、フッ化物を徐放するグラスアイオノマーセメント修復に優位はなかった。

一方、酸ー塩基反応によって酸化するグラウアイオノマーセメントは被着面に多少の水分や感染が存在しても酸化や接着に問題が生じにくい材料であり、この特性は ある程度十分にう蝕が除去された被着面と厳密な防湿を必要とする根面う蝕の修復処置にコンポジットレジンとグラスアイオノマーセメントのどちらを使用するか?

フッ化物配合洗口剤の使用

アクアデンタルクリニック院長の高田です。
日本歯科保存学会から出されている
「う蝕治療ガイドライン」を読んでいます。

 

フッ化物配合洗口剤の使用に代表されるホームケアの効果は 患者のコンプライアンスに依存しているうえ、高齢者の唾液分泌量やブラッシングスキルの個人差は非常に大きく 根面う蝕の進行に関与するリスクファクターは複雑である。また現在わが国で入手できるフッ化物配合歯磨剤中のフッ化靴濃度は最高でも950ppm程度であることから、今回エビデンスとして採用した論文のような成果が得られにくい場合もあるのかもしれない。初期根面う蝕に対する非侵襲的な治療法をより成功率の高い確実なものとして定着させるためには わが国においても 明確なエビデンスが確認されている高濃度のフッ化物製剤を日常的に使用できるよう、薬事法や健康保険制度の整備がなされていることが望まれる。

歯質を削除して修復する治療と比較した場合、非侵襲的な治療は コスト面や精神的な負担も少なく、また治療環境の制約をあまり受けることなく実施できる点でその意義は大きい。また う蝕リスクに応じて定期的なフォローアップを行い、再石灰化が成功せずに う蝕が進行した場合には速やかに腫福処置に移行するプログラムを実践していれば重大な状況にいたってしまうことも少ない。よって 欠損の浅い初期活動性根面う蝕の場合、う蝕リスクの軽減をはかりつつ、まずフッ化物を用いた非侵襲的治療を実行して再石灰化を試み、う蝕を管理するよう推奨される。

水道水フッ化物地域在住の高齢者における48ヶ月間のう蝕プログラムの根面う蝕に対する押下をお。

60歳以上で15本以上の残存歯を有する高齢者466人。濃く変色し探針を用いた中等度圧でのプロービングによりターキーまたはleathery の感触を有するものが対象

148人に0,05%フッ化ナトリウム配合洗口剤による毎日の洗口を行ったところ、フッ化ジェル塗布群と比較して優位に非活動性に変化した病変の数が多かった。05%フッ化ナトリウム配合洗口剤による毎日の洗口は活動性根面う蝕を非活動性にするうえで有効である。

フッ化物配合歯磨剤の使用に加えて フッ化物配合洗口液で毎日洗口を行うことにより

アクアデンタルクリニック院長の高田です。
日本歯科保存学会から出されている
「う蝕治療ガイドライン」を読んでいます。

 

フッ化物配合歯磨剤の使用に加えて フッ化物配合洗口液で毎日洗口を行うことにより初期活動性根面う蝕を非活動性にすることが可能である。このことは 2編のランダム化比較試験により証明されている。そのうち1編のランダム化比較試験を日常的に称している60歳以上の466人の高齢者をフッ化物洗口による毎日の洗口を行うグループ、フッ化物ジェルを年2回塗布を行うグループの3群にランダムに分けて 4年経過後に活動性の う蝕病変が非活動性になる割合を比較した。0,05%フッ化ナトリウム配合洗口剤による洗口が優位に高いことがわかった。フッ化物配合歯磨剤単独の使用と比べて洗口剤を併用した場合で有意に再石灰化効果が高く、67%の活動性病変が1年後に非活動性に変化したとされている。

また 頬側歯根面に存在する24の活動性病変を対象にした1編のケースシリーズは約0.1%のフッ化物配が配合されたジェルを家庭で日常的に余地入れ歯活動性病変を効率二:再石灰化できることを報告している。すなわち 表面に欠損のない初期活動性病変に対してカスタムトレーを用いて1%フッ化ナトリウムジェルをホームケアとして日常的に適用した場合 2年後には20のうち14病変が非活動性になり また 0,5㎜未満の浅い凹みを生じている活動性病変に対しては表面の滑沢化を行った後にフッ化ナトリウムジェルを日常使用することにより13病変全てが6か月で非活動性に変化している。

さらに 高濃度のフッ化物を配合した歯面剤の使用だけでも初期活動性病変の再石灰化が生じることが2編の論文により示されている。そのうちの1編では5000ppmフッ化ナトリウム配合歯磨剤の毎日の使用で6か月後に薬52%の活動性病変が非活動性になり1100ppmフッ化ナトリウム歯磨剤でも6か月後に52%の活動性病変が非活動性になる。これに加えて研究では対象とした活動性病変を周囲の健全な歯根面より0.5㎜以上の深さの欠損を生じているものと 0.5㎜未満のものに分け 再石灰化した病変の割合は2群間で異なり0.5㎜以上の深さの欠損となっている病変では6か月後の再石灰化率は それぞれ19%と9%であったのに対し、0.5㎜未満の深さの場合はそれぞれ76%と35%であり非活動性に変化しやすいと結論付けられている。