顎関節症の罹患状態

アクアデンタルクリニック院長の高田です。
今日は 日本顎関節学会から発表されている

「顎関節症治療の指針 2018」 を勉強しています。

ガイドラインの中の大切な内容をまとめながら、ブログに残していきたいと思います。

顎関節症とは

・日本における顎関節症の実態
顎関節症は,う蝕,歯周病にならぶ第三の歯科疾患ともいわれ,
学校歯科検診にも取り入れられている。
また,顎が痛ければ歯科医院に行くということも広く一般に知られ
るようになった。
“顎関節症”という病名は,1956 年に上野により
「下顎運動時の顎関節部の疼痛,雑音発生,開口障害等の症状を伴う慢性疾患の臨床診断名」
として報告され,
日本では現在でもこの病名が広く用いられている。
ただし現在では後述するように定義は変更されている。

顎関節症患者は顎顔面領域に痛みや違和感を訴えることが多いが,
そうした症状は他の疾患でも起こり得る。
顎関節症と類似の症状を呈する疾患には,う蝕や歯周病をはじめ,
顎関節や咀嚼筋に関連した各種疾患,また頭痛や神経痛などの口腔顔面痛,精神疾
患や心身症などがある。
また,矯正歯科治療,補綴歯科治療,口腔インプラント治療あるいは一般的な歯科治療を進めるうちに発症することがある。
近年,歯周病,補綴,インプラント治療などにおける力の管理問題として注目されているブラキシズムは顎関節症との関わりがあるとされている。

このように,顎関節症は歯科臨床の多くの問題に関わっており,顎関節症の治療および予防への取り組みは今後の重要な課題となっている。

・顎関節症の概念
顎関節症は,顎関節や咀嚼筋の疼痛,関節(雑)音,開口障害ないし顎運動異常を主要症候とする障害の包括的診断名である。
その病態は咀嚼筋痛障害,顎関節痛障害,
顎関節円板障害および変形性顎関節症である。

・顎関節症の病因
顎関節症の発症メカニズムは不明なことが多い。

日常生活を含めた環境因子・行動因子・宿主因子・時間的因子などの多因子が積み重なり,個体の耐性を超えた場合に発症するとされている。

日常生活での発症,増悪・持続因子はリスク因子と呼ばれ多数報告されており,
日常生活を含む環境因子として,緊張する仕事,多忙な生活,対人関係の緊張などがある。
行動因子として,硬固物の咀嚼,長時間の咀嚼,楽器演奏,長時間のパソコン業
務,単純作業,重量物運搬,編み物,絵画,料理,ある種のスポーツなどがあり,習癖として,覚醒時ブラキシズム,日中の姿勢,睡眠時の姿勢,睡眠時ブラキシズムなどもが挙げられる。宿主因子には,咬合,関節形態,咀嚼筋構成組織,疼痛閾値,疼痛経験,パーソナリティ,睡眠障害などがある。
時間的因子とは,悪化・持続因子への暴露時間である。

・顎関節症の罹患状態
平成 28 年の厚生労働省歯科疾患実態調査によれば,「口を大きく開け閉めしたとき,あごの音がありますか」に「はい」と回答した対象者は,550/3,655 で,約 15.0%
であった(男性 183/1,583 人〈11.6%〉;女性 367/2,072 人〈17.7%〉)。
また,「口を大きく開け閉めしたとき,あごの痛みがありますか」に「はい」と回答した対象者は,
121/3,665 人で,約 3.3%であった(男性 40/1,583 人〈2.6%〉;女性 81/2,072 人〈3.9%〉)
であった。また,財団法人 8020 推進財団による全国成人歯科保健
調査(2007 年)が,成人女性(乳幼児歯科検診児の母親 2,786 名,平均年齢 31.4 歳17~46 歳〉)を対象に行われており,「口を大きく開け閉めしたとき,あごの痛みが
ありますか」という質問に「はい」と回答したのは 3.5%であった。

・咀嚼筋痛障害(Ⅰ型)
咀嚼筋痛障害は,咀嚼筋痛とそれによる機能障害を主徴候とするもので,
主症状としては筋痛,運動痛,運動障害があるとされる。
国際的に標準的とされる DC/TMD
の咀嚼筋痛障害の病態分類のうち,中枢性機序による筋痛,筋スパズム,筋炎,筋拘縮,新生物や線維筋痛症などの発症頻度は非常に低く,
咀嚼筋痛障害の主な病態は局所筋痛と筋・筋膜痛である。
特に筋・筋膜痛が重要であり,局所筋痛は筋・筋膜痛の
特徴を欠く筋痛であると理解される。

・顎関節痛障害(Ⅱ型)
顎関節痛障害は,顎関節痛とそれによる機能障害を主徴候とするもので,
顎関節円板障害,変形性顎関節症,顎関節への外来性外傷(顎頭蓋部への強打,気管内挿管など)や内在性外傷(硬固物の無理な咀嚼,大あくび,睡眠時ブラキシズム,咬合異常
など)によって顎運動時の顎関節痛や顎運動障害が惹起された病態である。

その主な病変部位は,滑膜,円板後部組織,関節靭帯(主に外側靭帯),関節包であり,それらの炎症や損傷によって生じる。
滑膜は下顎窩軟骨面,関節隆起軟骨面,関
節円板を除く顎関節の内面を覆う組織であり,異常な外傷力により滑膜組織が損傷し,

炎症(滑膜炎)が生じるとさまざまな発痛物質や発痛増強物質が放出され,
滑膜組織に豊富に存在する侵害受容器における侵害受容により顎関節痛が生じる。
円板後部組
織は,円板前方転位すると関節負荷が直接加わるようになり,組織損傷とそれに続く炎症により顎関節痛が生じる。また,関節靭帯の損傷や関節包の炎症によっても顎関節痛が生じる。

・顎関節円板障害(Ⅲ型)
顎関節円板障害は,顎関節内部に限局した,
関節円板の位置異常ならびに形態異常に継発する関節構成体の機能的ないし

器質的障害と定義される。顎関節内障と同義である。
主病変部位は関節円板と滑膜であり,関節円板の転位,変性,穿孔,線維化に
より生じるとされる。

現在では MRI により確定診断が可能である。
顎関節症の各病態の中で最も発症頻度が高く,患者人口の6~7割を占めるといわれている。
関節円板は前方ないし前内方に転位することがほとんどであるが,
まれに内方転位,外方転位,後方転位を認める。またいずれの方向に転位した場合でも,顎運動に伴って転位
円板が下顎頭上に復位する場合と復位しない場合がある。関節円板の転位方向や転位量によって,また円板転位が復位性か非復位性かによって臨床症状が異なってくる

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インプラント周囲炎の画像診断として推奨される方法はなにか?

アクアデンタルクリニック院長の高田です。
今日は 日本歯科放射線学会から発表されている

「インプラントの画像診断ガイドライン」 を勉強しています。

ガイドラインの中の大切な内容をまとめながら、ブログに残していきたいと思います。

・インプラント周囲炎の画像診断として推奨される方法はなにか?

インプラント周囲炎には、口内法 X 線による評価が推奨されている。
フィクスチャー周囲の骨吸収の診断に standardized periapical radiograph を
用いるべきで ある。
パノラマ X 線写真は解像度が低く、投影方向を変えにくいため
フィクスチャー周囲の骨吸収の診断に限界がある

・骨移植後の経過観察の時期や方法はどうあるべきか?

骨移植後の経時的変化についての報告があり、
画像で経過観察を行う意義はあると考えられる。

ただし、症状と画像所見との関連が明確ではない。
また適切な画像診断 の時期と方法に関して明確な根拠はない。

・骨質・骨密度は CT 検査でわかるのか? またそれらは予後と関連あるのか?

CT 検査からの CT 値(できれば QCTは骨密度をほぼ反映しているようであった。
ただし、CT 値は部位や性別などのデモグラフィックデータで大きく
左右されるようであった。

骨質は CT では表現できず、CT とパノラマ X 線写真からの
総合判断で Lekholm と Zarb の分類を行い、
これを「骨質」とし ているものが多かった。

しかしながら、大きな疑問が残る。

CT 値は予後とは強い正の相関 はなく、
骨皮質の厚さが埋入時のトルクや
RF(resonance frequency 共振周波数)による
安定度が関連しているようであった。

CT 値といった客観性のあるデータが予後無関係であることは残念であったが、
観を大きく伴う Lekholm と Zarb の分類が予後と強い正の
相関関係を持つことに驚いた。
また、Lekholm と Zarb の分類と CT 値はほぼ無関係と考えられた。

III. まとめ CT 値が bone density を表すことに異論はないようだが、
これがインプラント後とは 無関係であり、必要性が低いと考えられる。

。インプラント術前診断における MRI の役割はなにか?

検索された論文の内訳は、
下顎管の描出に関する CT と MRI の比較が 3 文献、
下顎管及 び周囲解剖学的構造の描出に関する MRI での検出能に関するものが 3 文献、骨質の一規定 因子であるマクロな“骨梁構造”解析に関するものが 1 文献であった。
下顎管の描出に関して は、CT に比して、MRI の方が同等かあるいは優れているとの結果が得られていた。
また、 周囲解剖学的構造の同定、距離計測についても有意な差を認めてはいなかった。
特に 3T の MRI では、神経束を詳細に観察しうる。マクロな“骨梁構造”解析にも有用との見解が得ら れていた。
ただし現状ではこれら文献は、evidence level-GLGL の IV 及び V に属する。
また、 CT との比較の論文において、現状における MRI の汎用性については、論じられていない。
撮像時間、撮像条件等の問題もあり、容易に MRI をインプラント術前検査に用い得ない現 状がある。
CT の MPR 情報は現在、広く開業歯科医師で用いられているが、DICOM viewer で観察した場合、
今回の文献の結果以上に、MPR での下顎管の描出能は上がる可能性は十 分あり、MRI の有用性を論じるには,これらとの対比が必要不可欠である。

・インプラント診断におけるヘリカル CT 検査の測定精度は十分か?

乾燥頭蓋骨での実測長と CT 再構成画像上での距離の比較では、
有意差を認めず、その誤 差も少ないことを示していた。
ただし、歯科用再構成プログラムには任意の画像設定を行 うことのできないものもあるため、このような場合は、ステント方向に注意して、スキャ ン平面と垂直になるように設定しないと正確な計測ができない。
一方、3D-CT 上 のポイント間の距離と実測長を検討し、有用性を唱えている論文もみられたが、
画像処理 の手法がまちまちであり、症例数も少ないことなどよりエビデンスレベルを判断することは不可能である。

・インプラントの CT 診断における望ましいステントはなにか?

現状では推奨されるステントとして十分なエビデンスに基づいたものは存在しない。
報 告者の臨床経験から臨床上有用であるとの個人的意見として、
以下の意見がある。
A. 最終的な上部構造の予測のために調整したステントの指示部分や歯の部分
1) MMA レジンのポリマーと硫酸
2) MMA コートバリウムを 3%、5%、7%含有させたレジンを使用する。
3) 接着性レジンにあらかじめ造影剤を混入した製品を使用する。
4) 通例のレジン製ステントの内面に X 線不透過性が低いシリコーン製剤を使用する。
B. 人工歯根の植立位置と方向を示すための素材
1) ステンレス管を使用する。
2) 鉄製スプルーはアーチファクトが生じるので使わずガッタパーチャを使用するか
X線不過性の疑似歯にホールをあけて空気を使用する。
3) チューブスプルーやガッタパーチャを使用する。

・インプラント周囲炎の画像診断として推奨される方法はなにか?

フィクスチャー周囲の骨吸収の診断に standardized periapical radiograph を
用いるべきである。
パノラマ X 線写真は解像度が低く、投影方向を変えにくいため
フィクスチャー周囲の骨吸収の診断に限界がある。
X 線写真でインプラント体全周にわたる狭い不透過帯が見られる場合、
骨との結合が失われていることが予想されるため、動揺度を測定するべきである。
インプラント周囲の骨欠損が予想以上に大きいときは破折を疑い
補綴物を除去し、動揺度を測定する。
periapical radiograph において骨結合が失われていると予想された症例のうち
実際に可動性を示した症例(真陽性率)は 83%であった。

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咀嚼・嚥下における舌のはたらき

アクアデンタルクリニック院長の高田です。
今日は 日本老年歯科医学会から発表されている

「舌機能検査法ガイドライン」 を勉強しています。

ガイドラインの中の大切な内容をまとめながら、ブログに残していきたいと思います。

咀嚼・嚥下における舌のはたらき

舌は、下顎の中央部にあって、その高い可動性により、
咀嚼・嚥下において最も重要なはたらきを担う器官である。

舌の可動性は、舌自体の形態を変える内舌筋と舌の位置を変える
外舌筋によって成り立っており、これらの筋群は舌下神経の支配を受けている。

固形物を咀嚼する際、舌はまず前歯で咬断した食片を臼歯部に搬送し、
歯列咬合面に載せる。

咀嚼が開始されると、開口~閉口~咬合の咀嚼周期ごとに、
舌は舌背中央部に樋状の凹面を作って食片を包み込み(準備相)、
一側の歯列咬合面に移動させ(ねじれ相)、
ねじれた状態で舌背を歯列舌側面に押し付けることによって咬断・粉砕された
食片が口腔底に落下するのを防ぐ(保持相)など、
巧妙で多彩な動きを、口唇、頬、下顎と協調しながら行う。

この一連の過程で十分に細分化され唾液と混和された食片は、舌と口蓋との間に凝集して
食塊を形成し、さらにその一部は舌の前後運動と口蓋への押し付けによって生じる圧によって口峡を越えて中咽頭へ送り込まれ嚥下反射を待つ。

反射により制御される咽頭期嚥下に際しては、舌は適量の食塊を陥凹した舌背と口蓋との間に包み込み、舌尖の強い押し付けと後方への動きで食塊を咽頭方向へ送り込み、
さらに食塊が逆流することなくスムーズに咽頭を通過して食道に送り込まれるように、
口蓋との接触を維持しつつ咽頭後壁の隆起と協調した舌根部の後方移動により中咽頭腔を狭窄させる。

食物の経口摂取において営まれる咀嚼から嚥下に至るこれらの舌の動きは、随意的・反射的に制御させる。

咀嚼・嚥下における舌の検査法

超音波画像診断装置を用いた舌運動の評価方法

超音波画像診断装置を用いた舌運動の評価は、
安定した画像の描出が重要である。
そのためには、対象者のオトガイ部から頭部両側へバネ状の連結部を設置し、

嚥下時の下顎の動きに合わせて超音波の探触子が皮膚接触面から離れないように

安定した設置台付き探触子固定装置を用いる方法が望ましい。

最大舌圧測定法
ディスポーザブルのバルーン状口腔内用プローブを口蓋前方部と舌で随意的に最大の力で押しつぶさせ、プローブ内部の圧力変化を最大舌圧として測定する。

国内で漸く医療器具として承認された機器(JMS 舌圧測定器)があり、
他の舌機能評価法と比較して装置全体の重量、検査の安全性・簡便性、
感染対策に優れており、大規模疫学的な調査、研究にも使用される一方、
医療・介護施設における症例の口腔機能の客観的評価、治療介入の客観的評価に資する研究も行われている。

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歯周外科それぞれの用途、適応

アクアデンタルクリニック院長の高田です。
今日は 日本歯周病学会から発表されているガイドライン

「歯周病の検査・診断・治療計画の指針」 を勉強しています。

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・咬合性外傷の臨床およびエックス線写真による所見

咬合性外傷の所見を示すが,「歯の動揺」と「歯根膜腔の拡大」が重要である.

・処置
咬合性外傷に対する治療は,外傷性咬合を除去し,
安定した咬合を確立させ,咬合性外傷によって増悪した歯周組織の破壊を軽減することを目的とする.

・外傷性咬合は歯周炎の初発因子
ではないが,歯周炎を進行させる重要な増悪因子である.

・咬合性外傷に対する咬合調整,固定の選択

咬合調整や固定は,まず炎症因子のコントロールを行ったうえで,
明らかに咬合性外傷の症状や徴候が認められた場合に行うことを原則とする.

具体的には以下のとおりである.

1 炎症に対する歯周基本治療を行う.なお,機能障害がある場合は,咬合調整を優先させることがある.

2 炎症に対する歯周基本治療を行うことで,炎症が消退し一部の歯では動揺が減少するが,
一部の歯では相変わらず動揺が存在するか,または動揺が増加する場合に,咬合調整か固定を行う.

3 動揺の改善しない歯は,咬合調整や固定を行う.4 動揺が増加している歯は,咬合調整や固定を行う.
しかしながら,重度の歯周炎患者においては 1 歯から数歯に限局した咬合調整,冠形態修正,暫間固定などで治療効果が認められない場合,
広範囲のプロビジョナルレストレーション
による固定や永久固定等を考慮した治療計画の立案が必要となる.

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歯周外科治療

歯周外科手術を行うにあたっては,術前にいくつかの条件を満たしておく必要がある.
すなわち,
1 患者への説明が行われ同意が得られていること,
2 患者の全身状態がよいこと,
3 患者の口腔衛生状がよいこ

4 喫煙がコントロールされていることである.
歯周外科手術は,その目的により組織付着療法,歯周組織再生療法,切除療法,歯周形成手
術の 4 種類に分類される.

どの歯周外科手術を行うのかは,骨欠損形態,患者の口腔衛生状態,
歯周組織検査所見,エックス線所見などから総合的に判断する

歯周外科手術は,一般的に再評価時のプビング時の出血(+)が適応となるが,
プロービングポケットデプスがこれより浅かったりプロービング時の出血がなくとも,
歯肉の形態不良改善のために手術が行われることがある.歯
周外科手術の術式を選択するにあたっては,骨欠損状態が重要な判断基準となる.

組織付着療法は,
歯根面および歯周ポケットの内部に蓄積した細菌および細菌由来の汚染物
質を徹底的に取り除き,歯肉軟組織が根面に付着するのを促すこと
2)を主目的とした手術法と
定義される.組織付着療法では,積極的な骨切除・骨整形術は行わず,
歯肉弁の根尖側移動も行わない.また,本療法には,歯周ポケット掻爬術,新付着術3),フラップキュレッタージ(ア
クセスフラップ手術),ウィドマン改良フラップ手術などが含まれる.

おもな組織付着療法の選択基準,手術の特徴と適応症を示す.
患者の口腔衛生状態が十分に管理されている症例では,
組織付着療法のほうが切除療法よりも付着の獲得量が多い

歯周ポケット掻爬術
定 義
歯周ポケット掻爬術は,細菌,バイオフィルム,歯石,病的セメント質の除去などの歯根面
の処置と歯周ポケット内壁の炎症病巣(ポケット上皮,炎症性肉芽組織)の掻爬を同時に行う.
歯根面と歯肉に付着をはかり,ポケットを減少させる方法である.また,ポケットの除去が困
難と思われる深いポケットの場合であっても,ポケット周囲組織の炎症を軽減させて病状の安
定をはかる目的で行われる.

意 義
この手術法は,外科的侵襲が比較的少ないので,
高齢者や合併症を有する症例にも適応可能である.
しかし,直視下で根面に対する操作が行えない,炎症病巣の掻爬が不十分という欠点を
有している.

フラップ手術(歯肉 /離掻爬術)
定 義後,明視下でのプラーク,歯石および不良肉芽組織を掻爬し,ポケットの除去もしくは減少を
目的とする歯周外科手術である.

(1)フラップ キュレッタージ(アクセスフラップ手術)
定 義
歯周ポケット掻爬術
定 義
歯周ポケット掻爬術は,細菌,バイオフィルム,歯石,病的セメント質の除去などの歯根面
の処置と歯周ポケット内壁の炎症病巣(ポケット上皮,炎症性肉芽組織)の掻爬を同時に行う.
歯根面と歯肉に付着をはかり,ポケットを減少させる方法である.また,ポケットの除去が困難と思われる深いポケットの場合であっても,ポケット周囲組織の炎症を軽減させて病状定をはかる目的で行われる.
意 義
この手術法は,外科的侵襲が比較的少ないので,高齢者や合併症を有する症例にも適応可能
である.しかし,直視下で根面に対する操作が行えない,炎症病巣の掻爬が不十分という欠点を
有している.
2 )フラップ手術(歯肉 /離掻爬後,明視下でのプラーク,歯石および不良肉芽組織を掻爬し,ポケットの除去もしくは減少を
目的とする歯周外科手術である.
(1)フラップ キュレッタージ(アクセスフラップ手術)

フラップ キュレッタージは,後述のウィドマン改良フラップ手術とほぼ同等の目的と手技に
26
図 3-3 組織付着療法の選択基準
Start
明視野での根面へのアクセス
術後の歯肉退縮量
フラップ キュレッタージ ウィドマン改良フラップ手術
歯周ポケット掻爬術
必要なし
必 要
小さい 中程度
手術の特徴

短 い
手術侵襲の大きさ
手術時間
患者の全身状態
歯根面の形態


長 い

よ い
複雑(複根)
手術の適応症
よくない
単純(単根)
より行われる.歯根面へのアクセスを得るために歯肉溝切開を加えて全層歯肉弁 /離を行うこ
と,さらに骨頂がわずかに露出する程度に歯肉弁を /離することにおいて,ウィドマン改良フ
ラップ手術と異なる.
意 義
根面を明視下で清掃する

歯周病患者における抗菌療法の診療

アクアデンタルクリニック院長の高田です。
今日は 日本歯周病学会から発表されているガイドライン

「歯周病患者における抗菌療法の診療ガイドライン」 を勉強しています。

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細菌感染に対する治療の実際
1.機械的な歯肉縁上プラークコントロール: プラークコントロール,スケーリング

2,機械的な歯肉縁下プラークコントロール:スケーリング・ルートプレーニング

3,洗口剤による歯肉縁上プラークコントロール

4,抗菌療法による歯肉縁下プラークコントロール
ポケット内洗浄と LDDS:局所薬物配送システム
経口抗菌療法

プラークコントロール,スケーリング
口腔清掃は,患者らが歯ブラシで行うブラッシングが主体となるが,
歯周病の重症度,治療時期,患者の技量や生活習慣に合わせて歯間ブラシ,
デンタルフロスなどの歯間清掃用具や電動(回転,音波,超音波)歯ブラシの使用も必要である.

さらに医療従事者によるスケーリングによって患者の不十分なプラークコントロールを補うとともに,患者のモチベーションを高め維持する効果が期待できる.

また,歯肉縁上プラークコントロールの障害となる不適合修復・補綴物の調整や除去,歯冠の形態修正を必要に応じて行う.4 mm 以上の歯周ポケットに
対しては,歯肉縁下のプラークコントロールを併用する.なお,歯肉縁上プラークコントロールは,歯肉縁下処置の効果を持続させるうえで必要不可欠である.

スケーリング・ルートプレーニング
歯周ポケットに対する非外科的処置として,手用スケーラーを用いたスケーリング・ルートプレーニングがあり,軽度から中等度歯周炎に対する標準的治療手段となっている.

単根歯や根面形態,骨欠損形態が複雑でない症例では,必須の治療法である.

また,進行した根分岐部病変や複雑なあるいは深い骨縁下ポケットでは,外科治療の前処置として用いられる.

スケーリング・ルートプレーニングは,3 mm 以下のポケットに対して行うとアタッチメントロスを生じる危険性があるので注意深く行う.
また,ポケットが深くなるほど歯肉縁下プラークや歯石の除去が困難となる.
5~7 mm の歯周ポケットに対するポケット減少量は,約 1~2 mm で,
アタッチメントゲインは,約 0.5~1 mm と報告されている.
超音波(音波)スケーラーは,手用スケーラーを用いた場合と比較して歯石の除去効果に差異はなく,
治療時間の短縮化がはかられる.

洗口剤による歯肉縁上プラークコントロール
使用する洗口剤としては,プラーク形成抑制作用や薬剤の歯面への沈着作用を有する低濃度のクロルへキシジン溶液の使用が効果的である.
そのほか,フェノール化合物,ポビドンヨード,塩化セチルピリジニウム,
エッセンシャルオイルなどがある.
歯周基本治療における使用としては,スケーリング後の
歯周病原細菌の再増殖期間とされる 2~4 週間の継続的使用が
有効である.

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抗菌療法による歯肉縁下プラークコントロール
(1)局所抗菌薬による歯肉縁下プラークコントロール
(ポケット内洗浄と LDDS:局所薬物配送システム)
薬剤による歯肉縁下プラークコントロールとしては,1 ポケット内洗浄法と2 ポケット内抗菌薬投与法がある.
ポケット内洗浄法に使用可能な薬剤としては,ポピドンヨード,塩化ベンゼトニウム,オキシドール,アクリノールなどがある.
また,ポケット内に投与する薬剤としては,テトラサイクリン系抗菌薬徐放性軟膏,ヒノキチオール軟膏などがある.
局所薬物療法に関して留意すべき点としては,
歯肉縁上プラークコントロールがなされていること,
機械的なプラークコントロールを優先して行うこと,
スケーリング・ルートプレーニングに対して反応性が良好な部位や慢性歯周炎の多くの場合では,局所抗菌療法が必ずしも必要ではないことがあげられる.

(2)経口抗菌療法
重度の広汎型歯周炎症例(重度広汎型慢性歯周炎,広汎型侵襲性歯周炎)や全身疾患関連歯
周炎に罹患した中等度から重度歯周炎症例に対しては,機械的な歯肉縁上および縁下プラーク
コントロールと併用することが推奨される.
テトラサイクリン系抗菌薬やマクロライド系抗菌薬が使用されることが多い.
経口抗菌療法は,細菌検査により投与薬剤の選択や治療効果をモニタリングすることが
耐性菌対策のうえからも望ましい.
実施に際しては,患者の全身状態や服薬状況を十分に把握し,
患者とのインフォームドコンセントを得る必要がある.

また,必要に応じて医科との連携をはかるとともに,アレルギーなどの副作用に対して対応できる態勢を整えておく必要がある.
さらに,治療反応性が不良の場合は,感受性テストを実施する場合もある.

歯周基本治療において経口抗菌療法は臨床的に有効か?

歯周病原細菌の感染を伴う重度広汎型歯周炎患者の深いポケットに対して従来の歯周基本治療(プラークコントロール,スケーリング,ルートプレーニング)に加えて,経口抗菌療法(テトラサイクイン系,マクロライド系,ペニシリン系)を併用することにより,臨床的および細菌学的に付加的な改善効果が期待できる.
このことから,歯周基本治療において従来の治療法に加えて感染の診断に基づいて経口抗菌療法を用いることが検討されるべきである.

背景,目的
従来の歯周基本治療では,重度進行性の歯周炎に対して,治療効果が限られたものであることが示されている.
一方,経口抗菌療法が従来の治療法と併用されているが,その治療効果については,必ずしも一致した結論が得られていない.
2004 年までのシステマティックレビューやコンセンサスレポートによれば,
歯周治療における経口抗菌療法は,特に侵襲性歯周炎や
重度慢性歯周炎患者の深いポケット(PD 6 mm 以上)に対して臨床的改善効果が期待できることが示されてきた.

しかしながら,経口抗菌療法を歯周治療に応用する際の疑問とし
て以下の点が指摘されている5).
1 どのような患者に経口抗菌療法を行うべきか?
2 どのような抗菌薬あるいはその組み合わせが有効か?
3 適切な抗菌薬の投与量,投与期間,投与時期について
4 誤った薬剤の使用による治療反応性の低下について
5 抗菌薬投与の副作用や耐性菌の増加について

である.
ここでは,歯周基本治療における経口抗菌療法の適応症と適応時期および臨床的効果を中心に,2007 年までに報告されているランダム化比較試験を主とした臨床研究報告とシステマティックレビューにコンセンサスレポートや総説を加えて,上記の疑問に関する見解を示す.

⑴経口抗菌療法の適応症と期待される臨床的効果
従来の歯周基本治療で反応性が良好な歯周炎に対しては,経口抗菌療法の付加的臨床効果はあまり期待できない.
一方,治療反応性(深いポケットにおける PD 減少効果,部位率の減少効果,
プロービング時の出血の減少効果など)が不良な重度広汎型の歯周炎症例(歯周病原細菌の感染を伴う深いポケットの部位率が 20~30%以上の慢性および侵襲性歯周炎患者)および
喫煙,血糖コントロール不良,冠動脈疾患を有する中等度から重度歯周炎患者に対する細菌検
査に基づいた経口抗菌療法の応用は,臨床的に有意な改善効果が認められている.

期待される治療効果は,深いポケットの 1 mm 程度の付加的減少やその部位率の 20~30%程度の付加
経口抗菌療法の EBM(evidence-based medicine)

臨床質問:歯周基本治療において経口抗菌療法は臨床的に有効か?

歯周病原細菌の感染を伴う重度広汎型歯周炎患者の深いポケットに対して従来の歯周基本治療(プラークコントロール,スケーリング,ルートプレーニング)に加えて,経口抗菌療
法(テトラサイクイン系,マクロライド系,ペニシリン系)を併用することにより,臨床的および細菌学的に付加的な改善効果が期待できる(エビデンスレベル 2*,推奨度 B**).このことから,歯周基本治療において従来の治療法に加えて感染の診断に基づいて経口抗菌療
法を用いることが検討されるべきである.

⑵.歯周基本治療
的減少および細菌学的効果の持続などである.最近のランダム化比較試験研究では,広汎型侵襲性歯周炎患者を対象とした経口抗菌療法の有効性が評価されているが,侵襲性歯周炎と慢性歯周炎での臨床的効果の差異を示した報告はなく,病態による診断分類が経口抗菌療法の選択基準とはならない.
広汎型重度歯周炎,従来の治療法に対する治療反応性不良部位を多く有する症例に対しては,経口抗菌療法の有効性が示唆されている.
喫煙患者に対しては,抗菌療法を併用することにより,非喫煙患者および禁煙患者と同程度の臨床および細菌学的効果が期待できる.
血糖コントロールが不良な糖尿病患者に対しては,抗菌療法の
併用が血糖コントロールの改善に有効と考えられているが,
従来の治療法と比較して有意な差
異は認められていない.

また,重度歯周炎患者に対して,抗菌療法を併用することにより全身
的炎症状態が改善し,冠動脈疾患の発症リスクを低下させる可能性が報告されている.