顎関節症の罹患状態

アクアデンタルクリニック院長の高田です。
今日は 日本顎関節学会から発表されている

「顎関節症治療の指針 2018」 を勉強しています。

ガイドラインの中の大切な内容をまとめながら、ブログに残していきたいと思います。

顎関節症とは

・日本における顎関節症の実態
顎関節症は,う蝕,歯周病にならぶ第三の歯科疾患ともいわれ,
学校歯科検診にも取り入れられている。
また,顎が痛ければ歯科医院に行くということも広く一般に知られ
るようになった。
“顎関節症”という病名は,1956 年に上野により
「下顎運動時の顎関節部の疼痛,雑音発生,開口障害等の症状を伴う慢性疾患の臨床診断名」
として報告され,
日本では現在でもこの病名が広く用いられている。
ただし現在では後述するように定義は変更されている。

顎関節症患者は顎顔面領域に痛みや違和感を訴えることが多いが,
そうした症状は他の疾患でも起こり得る。
顎関節症と類似の症状を呈する疾患には,う蝕や歯周病をはじめ,
顎関節や咀嚼筋に関連した各種疾患,また頭痛や神経痛などの口腔顔面痛,精神疾
患や心身症などがある。
また,矯正歯科治療,補綴歯科治療,口腔インプラント治療あるいは一般的な歯科治療を進めるうちに発症することがある。
近年,歯周病,補綴,インプラント治療などにおける力の管理問題として注目されているブラキシズムは顎関節症との関わりがあるとされている。

このように,顎関節症は歯科臨床の多くの問題に関わっており,顎関節症の治療および予防への取り組みは今後の重要な課題となっている。

・顎関節症の概念
顎関節症は,顎関節や咀嚼筋の疼痛,関節(雑)音,開口障害ないし顎運動異常を主要症候とする障害の包括的診断名である。
その病態は咀嚼筋痛障害,顎関節痛障害,
顎関節円板障害および変形性顎関節症である。

・顎関節症の病因
顎関節症の発症メカニズムは不明なことが多い。

日常生活を含めた環境因子・行動因子・宿主因子・時間的因子などの多因子が積み重なり,個体の耐性を超えた場合に発症するとされている。

日常生活での発症,増悪・持続因子はリスク因子と呼ばれ多数報告されており,
日常生活を含む環境因子として,緊張する仕事,多忙な生活,対人関係の緊張などがある。
行動因子として,硬固物の咀嚼,長時間の咀嚼,楽器演奏,長時間のパソコン業
務,単純作業,重量物運搬,編み物,絵画,料理,ある種のスポーツなどがあり,習癖として,覚醒時ブラキシズム,日中の姿勢,睡眠時の姿勢,睡眠時ブラキシズムなどもが挙げられる。宿主因子には,咬合,関節形態,咀嚼筋構成組織,疼痛閾値,疼痛経験,パーソナリティ,睡眠障害などがある。
時間的因子とは,悪化・持続因子への暴露時間である。

・顎関節症の罹患状態
平成 28 年の厚生労働省歯科疾患実態調査によれば,「口を大きく開け閉めしたとき,あごの音がありますか」に「はい」と回答した対象者は,550/3,655 で,約 15.0%
であった(男性 183/1,583 人〈11.6%〉;女性 367/2,072 人〈17.7%〉)。
また,「口を大きく開け閉めしたとき,あごの痛みがありますか」に「はい」と回答した対象者は,
121/3,665 人で,約 3.3%であった(男性 40/1,583 人〈2.6%〉;女性 81/2,072 人〈3.9%〉)
であった。また,財団法人 8020 推進財団による全国成人歯科保健
調査(2007 年)が,成人女性(乳幼児歯科検診児の母親 2,786 名,平均年齢 31.4 歳17~46 歳〉)を対象に行われており,「口を大きく開け閉めしたとき,あごの痛みが
ありますか」という質問に「はい」と回答したのは 3.5%であった。

・咀嚼筋痛障害(Ⅰ型)
咀嚼筋痛障害は,咀嚼筋痛とそれによる機能障害を主徴候とするもので,
主症状としては筋痛,運動痛,運動障害があるとされる。
国際的に標準的とされる DC/TMD
の咀嚼筋痛障害の病態分類のうち,中枢性機序による筋痛,筋スパズム,筋炎,筋拘縮,新生物や線維筋痛症などの発症頻度は非常に低く,
咀嚼筋痛障害の主な病態は局所筋痛と筋・筋膜痛である。
特に筋・筋膜痛が重要であり,局所筋痛は筋・筋膜痛の
特徴を欠く筋痛であると理解される。

・顎関節痛障害(Ⅱ型)
顎関節痛障害は,顎関節痛とそれによる機能障害を主徴候とするもので,
顎関節円板障害,変形性顎関節症,顎関節への外来性外傷(顎頭蓋部への強打,気管内挿管など)や内在性外傷(硬固物の無理な咀嚼,大あくび,睡眠時ブラキシズム,咬合異常
など)によって顎運動時の顎関節痛や顎運動障害が惹起された病態である。

その主な病変部位は,滑膜,円板後部組織,関節靭帯(主に外側靭帯),関節包であり,それらの炎症や損傷によって生じる。
滑膜は下顎窩軟骨面,関節隆起軟骨面,関
節円板を除く顎関節の内面を覆う組織であり,異常な外傷力により滑膜組織が損傷し,

炎症(滑膜炎)が生じるとさまざまな発痛物質や発痛増強物質が放出され,
滑膜組織に豊富に存在する侵害受容器における侵害受容により顎関節痛が生じる。
円板後部組
織は,円板前方転位すると関節負荷が直接加わるようになり,組織損傷とそれに続く炎症により顎関節痛が生じる。また,関節靭帯の損傷や関節包の炎症によっても顎関節痛が生じる。

・顎関節円板障害(Ⅲ型)
顎関節円板障害は,顎関節内部に限局した,
関節円板の位置異常ならびに形態異常に継発する関節構成体の機能的ないし

器質的障害と定義される。顎関節内障と同義である。
主病変部位は関節円板と滑膜であり,関節円板の転位,変性,穿孔,線維化に
より生じるとされる。

現在では MRI により確定診断が可能である。
顎関節症の各病態の中で最も発症頻度が高く,患者人口の6~7割を占めるといわれている。
関節円板は前方ないし前内方に転位することがほとんどであるが,
まれに内方転位,外方転位,後方転位を認める。またいずれの方向に転位した場合でも,顎運動に伴って転位
円板が下顎頭上に復位する場合と復位しない場合がある。関節円板の転位方向や転位量によって,また円板転位が復位性か非復位性かによって臨床症状が異なってくる

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