インプラント周囲炎の画像診断として推奨される方法はなにか?

アクアデンタルクリニック院長の高田です。
今日は 日本歯科放射線学会から発表されている

「インプラントの画像診断ガイドライン」 を勉強しています。

ガイドラインの中の大切な内容をまとめながら、ブログに残していきたいと思います。

・インプラント周囲炎の画像診断として推奨される方法はなにか?

インプラント周囲炎には、口内法 X 線による評価が推奨されている。
フィクスチャー周囲の骨吸収の診断に standardized periapical radiograph を
用いるべきで ある。
パノラマ X 線写真は解像度が低く、投影方向を変えにくいため
フィクスチャー周囲の骨吸収の診断に限界がある

・骨移植後の経過観察の時期や方法はどうあるべきか?

骨移植後の経時的変化についての報告があり、
画像で経過観察を行う意義はあると考えられる。

ただし、症状と画像所見との関連が明確ではない。
また適切な画像診断 の時期と方法に関して明確な根拠はない。

・骨質・骨密度は CT 検査でわかるのか? またそれらは予後と関連あるのか?

CT 検査からの CT 値(できれば QCTは骨密度をほぼ反映しているようであった。
ただし、CT 値は部位や性別などのデモグラフィックデータで大きく
左右されるようであった。

骨質は CT では表現できず、CT とパノラマ X 線写真からの
総合判断で Lekholm と Zarb の分類を行い、
これを「骨質」とし ているものが多かった。

しかしながら、大きな疑問が残る。

CT 値は予後とは強い正の相関 はなく、
骨皮質の厚さが埋入時のトルクや
RF(resonance frequency 共振周波数)による
安定度が関連しているようであった。

CT 値といった客観性のあるデータが予後無関係であることは残念であったが、
観を大きく伴う Lekholm と Zarb の分類が予後と強い正の
相関関係を持つことに驚いた。
また、Lekholm と Zarb の分類と CT 値はほぼ無関係と考えられた。

III. まとめ CT 値が bone density を表すことに異論はないようだが、
これがインプラント後とは 無関係であり、必要性が低いと考えられる。

。インプラント術前診断における MRI の役割はなにか?

検索された論文の内訳は、
下顎管の描出に関する CT と MRI の比較が 3 文献、
下顎管及 び周囲解剖学的構造の描出に関する MRI での検出能に関するものが 3 文献、骨質の一規定 因子であるマクロな“骨梁構造”解析に関するものが 1 文献であった。
下顎管の描出に関して は、CT に比して、MRI の方が同等かあるいは優れているとの結果が得られていた。
また、 周囲解剖学的構造の同定、距離計測についても有意な差を認めてはいなかった。
特に 3T の MRI では、神経束を詳細に観察しうる。マクロな“骨梁構造”解析にも有用との見解が得ら れていた。
ただし現状ではこれら文献は、evidence level-GLGL の IV 及び V に属する。
また、 CT との比較の論文において、現状における MRI の汎用性については、論じられていない。
撮像時間、撮像条件等の問題もあり、容易に MRI をインプラント術前検査に用い得ない現 状がある。
CT の MPR 情報は現在、広く開業歯科医師で用いられているが、DICOM viewer で観察した場合、
今回の文献の結果以上に、MPR での下顎管の描出能は上がる可能性は十 分あり、MRI の有用性を論じるには,これらとの対比が必要不可欠である。

・インプラント診断におけるヘリカル CT 検査の測定精度は十分か?

乾燥頭蓋骨での実測長と CT 再構成画像上での距離の比較では、
有意差を認めず、その誤 差も少ないことを示していた。
ただし、歯科用再構成プログラムには任意の画像設定を行 うことのできないものもあるため、このような場合は、ステント方向に注意して、スキャ ン平面と垂直になるように設定しないと正確な計測ができない。
一方、3D-CT 上 のポイント間の距離と実測長を検討し、有用性を唱えている論文もみられたが、
画像処理 の手法がまちまちであり、症例数も少ないことなどよりエビデンスレベルを判断することは不可能である。

・インプラントの CT 診断における望ましいステントはなにか?

現状では推奨されるステントとして十分なエビデンスに基づいたものは存在しない。
報 告者の臨床経験から臨床上有用であるとの個人的意見として、
以下の意見がある。
A. 最終的な上部構造の予測のために調整したステントの指示部分や歯の部分
1) MMA レジンのポリマーと硫酸
2) MMA コートバリウムを 3%、5%、7%含有させたレジンを使用する。
3) 接着性レジンにあらかじめ造影剤を混入した製品を使用する。
4) 通例のレジン製ステントの内面に X 線不透過性が低いシリコーン製剤を使用する。
B. 人工歯根の植立位置と方向を示すための素材
1) ステンレス管を使用する。
2) 鉄製スプルーはアーチファクトが生じるので使わずガッタパーチャを使用するか
X線不過性の疑似歯にホールをあけて空気を使用する。
3) チューブスプルーやガッタパーチャを使用する。

・インプラント周囲炎の画像診断として推奨される方法はなにか?

フィクスチャー周囲の骨吸収の診断に standardized periapical radiograph を
用いるべきである。
パノラマ X 線写真は解像度が低く、投影方向を変えにくいため
フィクスチャー周囲の骨吸収の診断に限界がある。
X 線写真でインプラント体全周にわたる狭い不透過帯が見られる場合、
骨との結合が失われていることが予想されるため、動揺度を測定するべきである。
インプラント周囲の骨欠損が予想以上に大きいときは破折を疑い
補綴物を除去し、動揺度を測定する。
periapical radiograph において骨結合が失われていると予想された症例のうち
実際に可動性を示した症例(真陽性率)は 83%であった。

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