ワルファリン服用患者では、ワルファリンを継続投与のまま抜歯をしても重篤な出血性合併症なく抜歯可能であるか?

アクアデンタルクリニック院長の高田です。
日本口腔外科学会から出ている
「 抗血栓療法患者の抜歯のガイドライン」 を読んで勉強しています。
ガイドラインの中の大切な内容をまとめながら、ブログに残していきたいと思います。

 

従来,ワルファリン服用患者においては,少数の術後出血症例の報告をもとに ,科学 的根拠がないままワルファリン投与を数日間中断し,血液凝固能を回復させてから抜歯が行われて いた.その後,トロンボテスト(TT)値,プロトロンビン時間(PT)値,INR値を指標に 1)[Ⅵ], ワルファリンを維持量あるいは減量投与で抜歯が行われるようになった.しかしながら,本邦で内 科医によりなされたアンケート調査では医師,歯科医師により,抜歯時にワルファリンを継続する か,中断するかはかなりばらつきがあることが示された .ワルファリン継続投与で抜 歯を行った場合,重篤な局所出血あるいは全身的な出血性合併症が起こるかを検証する。

 

 1996年のランダム化比較試験では抗凝固薬(アセノクマロール)継続投与で安全に抜歯を施行 できたとされているが,抗凝固薬を半減させヘパリンに変更した患者では術後出血の頻度が高かっ た .1998年の非ランダム化比較試験では,INR値が2.0~4.0で肝機能に異常がない患者 であればワルファリン継続投与でも局所止血で安全に抜歯ができると結論付けている . 1998年のレビュー論文によると,抗凝固薬継続投与で抜歯を行った場合,2014症例中,術後出血 が見られた症例は12症例(0.6%)で抗凝固薬中止,ビタミンK投与,新鮮凍結血漿投与で止血で きたとされている .これら12症例のうち8症例は1990年以前に処置された症例であり, INRによるモニタリングは行われていない.2002年に行われたランダム化比較試験では,ワルファ リン継続群と中断群で抜歯後出血発生率(26%と14%)が約2倍違うが,有意差は見られないと されている .2007年のレビュー論文において,ランダム化,非ランダム化比較試験論文を 評価したところ,INR値が3.5以下の場合,中断・減量は不要で,3.5以上の場合は内科医に減量 を要請するべきであると述べている .2007年のランダム化比較試験では,抗凝固薬維持量 継続投与群と,減量してINRを1.8以下に調整した群で抜歯後の出血の有無を検索したが,発生 率に有意差はなく,重篤な合併症も見られなかった .2007年に発表された別のランダム化 比較試験では,ワルファリンの継続の有無と,抜歯後縫合の有無で術後出血の有無を複数回観察し たところ,ワルファリン継続で安全に抜歯が行えることが示された .2009年のランダム化 比較試験でも,抗凝固薬継続投与で単純な抜歯であれば低分子ヘパリン代用群と比較して術後出血 の頻度に有意な差は見られないとされている .さらに,2009年に207研究のメタ解析の結 果,抜歯を含む歯科手術において抗凝固薬の継続は,減量や中断と比較して臨床的に問題となる出 血の危険性が高まることはないとされている  .  しかも,その他メタ解析 ,システマティックレビュー 
,において抗凝固薬継続下に安全に抜歯が行えるこ とが示されている.そのような報告を基に種々のガイドラインが作成されており,INRが治療域 にある患者においては抗凝固薬を中断することなく,抜歯を行うことを推奨している .また,本邦における報告においてもワルファリン継続で重篤な出血性合併症は生じてい ない