抗血栓服用患者において、重篤な出血性合併症の防止を考慮した場合、 これらを継続して麻酔伝達を行うことが推奨されるか?

アクアデンタルクリニック院長の高田です。
日本口腔外科学会から出ている
「 抗血栓療法患者の抜歯のガイドライン」 を読んで勉強しています。
ガイドラインの中の大切な内容をまとめながら、ブログに残していきたいと思います。

 

 抜歯時の無痛を得る手段として,浸潤麻酔と並んで伝達麻酔を併用する場合がある.しかし,伝 達麻酔は,針先を深部に刺入し神経幹周囲に局所麻酔薬を作用させて神経を直接麻痺させるため, 抗血栓療法患者においては,手技による出血や血腫を形成する懸念がある.抗血栓療法と同じく出 血傾向を示す疾患である血友病患者では,下顎孔伝達麻酔により血腫を形成し気道閉塞をきたす危 険性があるため,27G 針にて低侵襲的に刺入を行い,ゆっくりと薬液の注入を行うことが推奨さ れている  .  ワルファリン継続下の局所麻酔による後出血の発生に関して,ランダム化比較試験はない.非比 較観察研究が1件あるのみである.INR値が2.0~4.0の患者において,27G針を用いた下顎孔伝 達麻酔により小血腫が2.1%に発生し,一方,浸潤麻酔では出血性合併症の発生はなかった . 本研究は96例の観察研究であり,エビデンスレベルD(非常に弱い)である.また,後出血や血 腫が発生すると気道閉塞等の重篤な合併症が発生するリスクがあり,浸潤麻酔では出血性合併症は 発生していないことを考えると,積極的に下顎孔伝達麻酔を推奨することはできない.  医科麻酔科学領域における局所麻酔法として硬膜外麻酔や脊椎麻酔があげられる.抗血栓療法患 者におけるこれら局所麻酔に伴う出血性合併症に関するガイドラインが 4 編発表されている .経口抗凝固薬および抗血小板薬に限ってみると,ワルファリン投与患者では,カテー テルの挿入および抜去はワルファリンを5日前から中断し,INR<1.4の時期に行うべきとされる. また,INRが治療域にある時期には局所麻酔は禁忌であると記載されている.抗血小板薬につい ては,アスピリンはspinal hematoma発生のrelative risk 2.54(対非投与患者)であることから, 3~7日中断する.チエノピリジン系薬では,クロピドグレルでspinal hematomaの報告があり, チクロピジンは10~14日,クロピドグレルは5~7日,プラスグレルは7~10日中断する.新 規抗凝固薬では,ダビガトランは4~6時間または34時間中断,リバーロキサバンは18時間ま たは22~26時間中断してカテーテルの挿入・抜去すると記載されている(ガイドラインにより 記載に差がある).  以上の結果も参照すると,エビデンスレベルは低いが,抗血小板薬および抗凝固薬において,治 療域の治療が行われている時期の伝達麻酔は,出血リスクがあると考えられる.

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