歯科治療中の血管迷走神経反射に対する 処置ガイドライン

アクアデンタルクリニック院長の高田です。
今日は 日本歯科麻酔学会から発表されている

「歯科治療中の血管迷走神経反射に対する 処置ガイドライン 」 を勉強しています。

ガイドラインの中の大切な内容をまとめながら、ブログに残していきたいと思います。

血管迷走神経反射とは ?

歯科治療に対する不安・恐怖・極度の緊張などの精神的ストレスが背景にあり、
痛み刺激などが与えられ、迷走神経緊張状態となり発症する全身的偶発症を
血管迷走神経反射という。
過去には神経原性ショック、疼痛性ショック、デンタル・ショック、脳貧血発作、
三叉迷走神経反射など様々な用語でよばれていた。

これらのうち、ショックは「急性循環不全により組織灌流が著明に減少し、
細胞機能が障害を受け、最終的には多臓器不全に陥る」と定義され、
また、脳貧血発作は一時的な脳虚血状態を示すだけであり、いずれも上記に示す病態に
あわない。

そこで、本病態は一過性の血圧低下と徐脈の頻度が高いので、「血管迷走神経反射」
という用語を使用する。

血管迷走神経反射の発症頻度は男性に比べて女性の方が高い?

被検者 1,055 人の献血者のうち血管迷走神経反射を発症した献血者の中で
年齢と性別との 関連性が認められた 。
自己血採血室と中央採血室での採血時に血管迷走神経反射を起こした患者を対象とした研究では、
中央採血室で有意に若年者が多く、性別では自己血採血室、
中央採血室共に女性に血管迷走神経反射の発現頻度が多い傾向があり、
血管迷走神経反射の発生頻度と年齢と性別との関連性が認められた。
採血時の血管迷走神経反射の発生状況と背景因子を検討した研究では、
血管迷走神経反射 の発症率は 20 歳未満の割合が突出していて、性別では女性のほうが多い傾向にあった 。

心室性期外収縮を有する患者で、静脈内鎮静法のための静脈路確保時に血管迷走神経反射
を起こし心停止に至ったが、胸骨圧迫により拍動が再開し
、回復後帰宅できたとの症例報告があり、血管迷走神経反射による負荷が加わったため
心停止に至った可能性が示唆され、合併している循環器疾患と関連性が考えられる 。
献血者のバックグラウンドが血管迷走神経反射の発現に関連するかを検討する研究では、
被検者 1,055 人の血管迷走神経反射の発生の献血者の中で、
循環血液量の減少が血管迷走神経反射の発生に関連があることが認められた

血管迷走神経反射に関する総説では、血管迷走神経反
射を起こす患者の多くは、交感神経系によって調節される正常な循環動態を示し、正常な圧
受容体反射機能を有するとしている。

いくつかの症例では血圧の低下は心拍出量の低下や血管拡張に起因している。
血管迷走神経反射が重症化する因子としては、内臓循環や肺循環
への血液貯留による体循環血液量の減少であるとされている。
交感神経系の虚脱による血管迷走神経反射では、徐脈を伴う血圧の低下が急激に起こり、
意識消失は脳循環の虚脱に起因するため、徐脈性の不整脈などを合併している場合は、
症状が重症化する危険性があることが示唆される 。
左室機能低下例で血管迷走神経反射の関与が疑われる 2 症例についての他の症例報告では、
左室機能低下例に合併する神経調節性失神は難治性で、予後の悪化に関連する可能性が示唆された。

歯科治療に対する不安の程度を把握すると反射発現を予測できるか?

歯科治療に対して強い不安や恐怖感をもつ患者は血管迷走神経反射の発現の可能性が高く
なる。不安や緊張感を把握し、予防的処置を講ずることが有益である。

迷走神経反射から失神をおこす患者は、QOL が低く、精神医学的な異常、不安、身体表現性
障害の指標が有意に高く、特に精神医学的な異常を有する患者は、VVR 再発の可能性が高い。
VVR 緩和治療が効果を奏しない患者は、精神的な障害、抑うつ、不安、恐れ、 認知障害などの指標が有意に高い。
岡山県 岡山市北区 今保 久米 中山道 延友 白石 花尻 北長瀬 西バイパス近く
採血時の VVR 誘因は、20 歳未満(採血の経験が少なく不安や緊張が高 まりやすいため) 、
女性、空腹、睡眠不足、不安・緊張、立ちくらみしやすい、過去に副作用歴がある、採血針 が痛かった、
採血時間が長かったなどが報告されている 。
これらの中 で不安や緊張が最頻因子であった 。
不安、緊張を緩和することを中心とした VVR 防止対策を実施したところ
VVR 発生頻度は 0.87%から 0.47%へと有意に減少した 。
また、臥床採血すると VVR が発症しても軽症に抑えることができた 。
歯科領域では、分析疫学的研究以上のエビデンスレベルの高い研究報告はな、
痛みや不安などの精神的なストレスが VVR から失神を引き起こした 、
歯科に対して恐怖感、不安感をもつ患者は、VVR を来しやすく、心拍変動解析が有用であることを示した症例
(レベルV)が報告されている。精神鎮静法や不安を緩和する予防的な措 置を講ずることで
VVR 発生頻度を減少させることが示されている