下顎骨骨折に対するプレート固定

アクアデンタルクリニック院長の高田です。
日本放射線学会から出されている
「口腔顎顔面外傷診療ガイドライン2015年」を読んでいます。

 

下顎骨骨折に対するプレート固定時において、チタン製プレートよりチタン製ロッキングプレートを使用するか?

下顎骨骨折患者において、チタン製プレートまたは、チタン製ロッキングプレートのどちらを使用して もよい。 患者に直接関係するアウトカムの評価がほとんど存在しなかった。臨床 に関係するいずれのアウトカムにおいても、2群間で効果の差がほとんどなかった。 また、害(合併症など)に関しても、差がなかった。チタン製プレートで1例のみ不正咬合で追加処置が必要 であった。 診療ガイドラインパネル会議では、選択基準が明確でない、手術時間が短縮できるならばロッキングプレート でも良いかもしれないが、術者の慣れの問題の方が大きいのではないかとの意見もあった。議論の中でほとんど のパネリストが、本 CQ に対しては投票に「どちらを使用してもよい」を加えるべきだという意見となった。 

 

下顎骨骨折に対するプレート固定において、チタン製プレートの代わりに吸収性プレートを使用するか?

下顎骨骨折に対するプレート固定において、チタン製プレートの代わりに吸収性プレートを使用しない ことを弱く推奨する。 Bhatt らの研究については 2 か月時点でのデータが欠落していたため、本報告においては術後 1 か月時点での評価を中心に検証した。患者に対する臨床上でのアウトカムとして、咬合の復位や追加処置、疼痛、 合併症があり、咬合の復位や疼痛については2群間で有意差が認められなかった。追加処置として、プレート除 去はチタン製プレート群でのみ 10 名で実施され、追加顎間固定はチタン製プレート群で 2 名、吸収性プレート 群の 3 名に実施されていた。また、両群とも 2 例ずつ創部の再縫合が実施されていた。一方、害(合併症)につ いてはプレート露出、麻痺、骨片の異常可動性、軟組織治癒不全、感染が挙げられ、チタン製プレート群では 25 例、吸収性プレート群では 38 例であり、有意に吸収性プレート群で合併症を多く認めた。また、術中の合併症としてチタン製プレート群では 4 例でスクリューのゆるみ、吸収性プレート群では 29 例でスクリューおよびプ レートの破損とゆるみを認めた。 診療ガイドラインパネル会議では、医療消費者から吸収性プレートでは、生体内で吸収することの嫌悪感に加 えて治療終了時点が明確でないことが好ましくないなどの意見があった。専門家からは、プレート除去術の 2 回 目手術を行わないメリットもあるため、両方の治療法を医療消費者に提供すべきとの意見もあった。CQ に粉砕骨 折を想定していないことを明確にするために、下顎骨骨折の定義を明確にすることになった。臨床的効果に差が ないが、吸収性プレートの方で、害(感染)の報告があったことより、その適応症を厳密にする必要があると思 われ、本診療ガイドラインパネル委員会は吸収性プレートを使用しないことを弱く推奨するとの結論となった。 ただし、プレート除去術(2 回目の手術)を希望しない場合は、適応症を充分に検討した上で吸収性プレートを 使用しても良いという意見も出された。