「硬いが濃く着色したう蝕象牙質」を除去すべきか否かについては意見が分かれるところであるが・・・

アクアデンタルクリニック院長の高田です。
日本歯科保存学会から出されている
「う蝕治療ガイドライン」を読んでいます。

 

「硬いが濃く着色したう蝕象牙質」を除去すべきか否かについては意見が分かれるところであるが残存させた細菌がどのような経緯をたどるかについて十分には明らかにされていないため、硬いが濃く着色したう蝕象牙質を残存してよいかどうかについて指標を示すに足る根拠は得ることができなかった。

硬さをガイドにう蝕除去を行う際に有効な器具として、スプーンエキスカベータとラウンドバーがある。刃先が鋭利なスプーンエキスカベータを用いて、う蝕象牙質を除去すると残存象牙質のヌーブ硬さは24.1になるのに対し臨床で数年間使用したドンナ矛先のスプーンエキスカベータの場合6.7であったことを報告している。中等度の初発象牙質う蝕を有するヒト抜去歯を用い、細菌侵入度と象牙質硬さとの関係について調べ、細菌侵入領域は、ヌーブ硬さ20以内の領域であったことを認めている。よって、う蝕除去にスプーンエキスカベータを用いて刃先が鋭利なものを使用する必要があることが確認された。ラウンドバーを用いてう蝕象牙質の除去を行う場合は➀回転している様子が分かる程度の回転数え削除する。➁う蝕の大きさに合わせたラウンドバーを選択し、健全歯質にバーが触れないように注意する。➂古いバーは切れ味が悪く、切削面に圧力が加わる原因となるので使用しない、などのちゅういが必要である。

 

う蝕検知液に関しては1パーセントアシッドレッドのプロピレングリコール溶液からなるう蝕検知液については、その染色性と細菌侵入との関連性を調べた報告がある。中等度の う蝕を有するヒト臼歯に対し口腔内または抜歯直後に う蝕検知液をガイドに う蝕側から染色・う蝕象牙質の削除を行った。その結果う蝕の深部に行にあたって う蝕象牙質の染色性は赤染 ピンク触、淡いピンク触へと変化し、ピンク宣武では細菌の残存が認められたのに対して、淡いピンク尖部および不染色部では細菌の存在を認められなかった。また淡いピンク染色部は脱灰部と透明層からなる象牙質であった。さらに う蝕を有するヒト抜去歯に対して2種類の う蝕検知液に硬くても着色している部分は細菌感染のある脱灰層であり、このような着色部を除去すると病理組織的に最近の存在が求められていない透明層になった。

 

う蝕検知液の開発

アクアデンタルクリニック院長の高田です。
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急性う蝕は着色が鮮明ではなく、軟化の前縁と細菌侵入の前縁が離れているため

着色や硬さを指標に感染象牙質のみを除去し、細菌侵入のない層を保存することは困難である。さらに 軟化したう蝕象牙質は細菌感染があり再石灰化不可能で知覚がない「う蝕象牙質外層」と、細菌感染がなく再石灰化可能で知覚のある「う蝕象牙質」の2層からなることを報告した。そして う蝕除去に関して、この再石灰化可能な う蝕象牙質内層は保存すべきであると指摘する。

う蝕象牙質内層および外層は どちらも着色が薄く柔らかいので、色や硬さを指標に2層を識別することはできない。そこでこれら2層を客観的に識別するため う蝕検知液を開発した。開発当初は 染色される う蝕象牙質は全て除去するように指示されていたが、染色部位を全て除去すると過剰切削となることを指摘する報告も多く、細菌では淡いピンクに染色される う蝕は残置するように勧めている。しかし、」肉眼的に淡いピンクという色調を測定する場合、主観に左右されることは否定できない。そこで従来のプロピレングリコールより大きい分子量のポリビレングリオール溶液からなる う蝕検知液も開発されている。

 

う蝕検知液の有効性を危惧する歯科医師もおおいようである。硬さの識別が困難である高速切削器具を多用した う蝕除去も行われている。したがって、除去すべき う蝕象牙質の診断基準として う蝕検知液の染色性や う蝕象牙質の硬さ・色は有効であるか否かについて整理し、治療指標を示す必要がある。

う蝕象牙質の硬さや色および う蝕検知液への染色性は 除去すべき感染象牙質の除去基準として有効であることが複数の臨床研究・基礎研究で示されている。修復処置を必要として来院された患者の永久歯546歯に対して、う蝕を開口後エナメル象牙境から象牙質試料を採取培養し その細菌数と採掘部位の臨床所見との関連性について調べた。

それらによると 軟らかく温室な う蝕象牙質の総細菌数は 軟らかく乾燥したう蝕象牙質より多かった。よって 硬いう蝕象牙質は 軟らかい う蝕象牙質に比べ優位に最新数が少ないことが確認できた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

歯質の硬さや色は、除去すべき う蝕象牙質の診断基準になるか?

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一般的な修復処置の基準として以下のようなものを挙げている。

・歯冠部う蝕では象牙質へ達している場合

・う蝕によって歯髄症状が生じている、あるいはすぐに生じそうな場合

・修復処置によって回復することのできる咬合・機能障害がある

・審美的障害があり、修復処置で改善することができる場合

・歯の欠損部への食片圧入や それによる口臭の訴えがある場合

・近接する歯周組織の健康状態を回復することができる場合

・修復物がアレルギー反応を引き起こした場合

・患者が過度な心理的ストレスのために修復処置を望む場合

以下のような情報を参考にして、う蝕の深さでは歯髄保護と修復処置のやりやすさ、患者への負担や治療後の満足度などを考慮して、エックス線写真で象牙質の外側1/3を超える場合は ただちに修復処置を行うことが推奨される。

 

歯質の硬さや色は、除去すべき う蝕象牙質の診断基準になるか?

硬いう蝕象牙質は軟らかいう蝕象牙質に比べ細菌数が有意に少ない。一方、コク着色したう蝕象牙質を除去すると細菌感染のない飴色ないし亜麻色の透明層となる。よって、鋭利なスプーンエキスカベータまたは低回転のラウンドバーを用い、歯質の硬さや色を基準にして う蝕象牙質を除去することが推奨される。

 

う蝕象牙質の除去に う蝕検知液を使用すべきか?

う蝕検知液を使用することにより、確実に感染歯質を除去し、過剰切削を回避することができる。よって、う蝕象牙質の除去に う蝕検知液の使用を推奨する。

 

切削の対象となるのは どの程度に進行したう蝕か?

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切削の対象となるのは どの程度に進行したう蝕か?

以下の所見が認められる場合は修復処置の対象になります。とくに複数認められる場合にはただちに修復処置を行うことが望ましい。

・歯面を清掃乾燥した状態で肉眼あるいは拡大鏡でう窩を認める

・食片圧入や冷水痛などの自発症状がある

・審美障害の訴えがある

・エックス線で象牙質の1/3を超える病変を認める

・う蝕のリスクが高い

 

一般に臨床判断基準は臨床研究のエビデンスに加えて 患者の希望と同意や  医師側の技術や医療環境によって決まると言われている。したがって切削介入の判断も う蝕診断の結果だけで必ずしも決まるものではない。したがって、日本独自の背景を加味して日本語論文を検索くしたところ、2つのレエビューと解説が同じ研究グループから出されていた。

 

それらによると臼歯部隣接面の初期う蝕への対応は

・咬翼法エックス写真により判断

・象牙質にたっしていないう蝕は経過観察

・象牙質の半分を超えるう蝕はただちに処置を行う

・象牙質の半分を超えるう蝕も ただちに充填

・象牙質の半分を超えていないう蝕は予防プログラムを実施し、拡大傾向であれば充填処置を行う。

切削介入が早いか遅いかによる その後の臨床経過を比較した臨床研究は国内外では見当たらなかった。したがって修復処置は象牙質内に0,5㎜より深い病変で考慮し、それより浅い病変では予防処置や再評価を考慮することが推奨されている。

したがって象牙質に達した場合は個々の症例で自覚症状の有無、患者の年齢、う蝕のリスク、患者の希望、術者の経験などから その進行速度を見極めたうえで切削介入しても良いだろう。

 

う蝕の進行程度を診断する方法

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前歯部の隣接面う蝕は無影灯の光を透過させて舌側からミラーで観察する透過診によって う蝕部は暗い影として深部への広がりまで知ることができる。

しかし 臼歯部では辺縁隆線の白濁あるいは黒変の微妙な変化を鋭い目で観察することになる。それを補助するために先端外径0,5㎜の光ファイバーによるFOTIが使われている。

う窩と口腔粘膜との間のインビーダンスを計測し、う蝕の進行程度を診断する方法は わが国で考案されたものである。電気抵抗による診断は咬翼法エックス線写真と比較してより正確であるとされている。しかし 残念ながら日本製の診断装置は製造中止され、現在は海外製品の入手も困難であるため推奨することができない。

レーザーを用いた う蝕診断装置の動作原理はレーザー光を照射したときに発する発光のスペクトルが健康歯質と う蝕罹患歯質では異なることを応用7している。この差を検知器で検知してディスプレイに00から99までの数値として客観的に表示される。

エナメル質う蝕の検出は象牙質う蝕よりも感度は低く 特異度が高い。

したがって、基本的な診断装置としての有用性には限界があるとされている。我が国においては本装置がそれほど広く普及していないことから今後、この種の補助的診断法が広く使われるようになることが期待される。

 

う蝕の検査法は有効性と信頼性に優れていなければならない。有効な検査法とは う蝕の状態をっ正確に表示することであり、信頼性のある検査とは検査を繰り返し行っても同じ結果が得られる、すなわち再現性が高いことを意味する。再現性とは同一診査者が繰り返し行う場合と異なる診断者が行う場合に分けられる。いずれにしても再現性を高めるには事前の訓練が必要である。