上顎前突を含む咬合異常は口腔機能に影響を与えるか?

アクアデンタルクリニック院長の高田です。
日本矯正歯科学会から出ている
「 矯正歯科診療のガイドライン」 を読んで勉強しています。
ガイドラインの中の大切な内容をまとめながら、ブログに残していきたいと思います。

 

上顎前突を含む咬合異常は口腔機能に影響を与えるか?

咬合異常は咀嚼機能に影響を与える可能性は高い。しかし、構音機能、顎関節症、ブラキシズムと直接的に 関連があるとの強い科学的根拠はない。

不正咬合は咀嚼機能、能率を低下させる。正常咬合の咀嚼機能は不正咬合 のそれより優れている。Angle 分類と咀嚼機能では、Angle III 級だけが明らかに咀嚼能率が減じている。不正咬合は顎関節症の直接的要因ではない。そして、過大な水平被蓋、過蓋咬 合は/s/、/z/、 /j/、/ch/、Class III は/zh/、/ch/、/sh/、/z/に影響を与える。不 正咬合はブラキシズムを引き起こさないと考えられる.

 

 

 

上顎前突を含む咬合異常は歯周病や齲蝕の発生と関連するか?

咬合異常は歯周病や齲蝕の直接的原因となる科学的根拠はない.

 

咬合性外傷は歯肉炎、歯周炎を惹起しない。咬合は歯周病の進行におけるリスクファクターである。咬合性外傷が歯周組織破壊のリスクファクターであるというエビデンスはあるもの の、歯周組織破壊の引き金になるというエビデンスはない。咬合性外傷が プラークに起因する歯肉炎や、歯周組織のアタッチメントロスを誘発することはない。歯の過度可動性を引き起こしている咬合力は、進行性歯周炎においてアタッチメントロスを加速 させ、歯周疾患治療による治癒を妨げる.叢生は齲蝕の感受性を上げるも のではない

 

上顎前突を含む咬合異常は社会心理学的に影響を与えるか?

アクアデンタルクリニック院長の高田です。
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上顎前突を含む咬合異常は社会心理学的に影響を与えるか?

上顎前突を含む咬合異常は社会心理学的に影響を与える可能性が高い。

不正咬合の程度は身体的領域,心理的領域,社会的領域へ影響を与えるとの高いエビデンスの論文が存在す る(文献 3、エビデンスのレベル I)。改善された容貌、口腔機能、健康、社会的幸福に対する自覚的、他覚的 証拠があるにも係わらず、不正咬合と矯正治療は、思春期の一般的な QOL(quality of life)と口腔の健康に関 わる QOL に影響しない(文献 1、エビデンスのレベル IVb)、とする報告も存在するものの、矯正歯科治療を 求めている患者は容貌と社会的外見を気にしている(文献 4、エビデンスのレベル VI)、不正咬合とその治療
は心理学的には自分のイメージに影響を与える、社会的には他人からみた好感度、社会的な容認、聡明さに影 響を与える(文献 5、エビデンスのレベル VI)、不正咬合を含む歯科疾患の結果、私たちの社会において身体 的、社会的、経済的影響を及ぼす(文献 6、エビデンスのレベル VI)といったその影響・関与の存在を認める 報告が多く認められる。

上顎前突について

アクアデンタルクリニック院長の高田です。
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上顎前突について

上顎前突(maxillary protrusion)は俗に出っ歯(buck-tooth)と表現されるように、一般的には上顎前歯が下 顎前歯より著しく前方に突出した咬合異常を総称する。1992 年(平成 4 年)に「文部省 学術用語集 歯学 編(増訂版)」が発刊されて、学術用語として「上顎前突」が収録され、それに対応する英語として「maxillary protrusion」、「prognathia」があげられている 1。2008 年に発刊された日本歯科医学会学術用語集では「上顎前突」 は「maxillary protrusion」、「 prognathia」、「maxillary prognathism」があげられている 。

日本の医学事典においては、上顎前突は「上顎骨変形の一つで側貌において上唇は下唇より著しく突出して 見え、上下歯列の対応関係(咬合)において上顎前歯は下顎前歯より数 mm 以上前方に突出し、しばしば口裂より露出する。上顎骨歯槽突起の前方過剰発育によるものは、上顎前歯の歯軸も水平面に対する傾斜が大であるが、臼歯部の咬合は正常であり、邦人にしばしばみられる型である。まれに、上顎骨体の前方過剰発育に基 づいて起きることがあり、この場合は臼歯部咬合が上顎近心咬合を示す」と記されている 。また、新歯学大辞典においては「上下顎前歯切縁の水平的被蓋距離すなわちオーバージェットが正常より大きい咬合異常の総 称。この中には種々の不正状態が含まれており、多くの人が分類を試みている」とも記されている。

 

新歯学大辞典においては「Angle の不正咬合分類法においては、II 級 1 類および 2 類にこれを含めており、 正常な上顎歯列弓に対して下顎歯列弓が遠心に咬合するものとしているが、I 級でも上顎前歯の唇側転位のあ るものや、下顎前歯の舌側転位のあるものもこれに含まれる」としている 。また、「下顎歯列弓が上顎歯列弓 に対し遠心、あるいは後方の位置関係にあるものを言い、それが第一大臼歯の対向関係に現れている。特に II 級 1 類はオーバーバイト、オーバージェットが大きい I 級と異なり、舌、オトガイ筋、頬筋などの異常筋機能、
代償性筋活動を伴うため、第一大臼歯の近遠心関係、および上下顎基底の前後関係、組織系すべての相互関係 の診査をすることが必要である」と記すものもある 。

一方、咬合異常を分類している中で、高橋の分類では「上顎前突を上下顎前歯の前後的な距離、すなわちオ ーバージェットが 7~8mm 以上あるような不正状態の総称」としている 。同様に骨格系の分類について、骨 格性 pattern では、ANB が 3°を超えて大きい場合に骨格性 II 級とする分類によって、下顎が劣成長もしくは後方に成長しているか、上顎が過成長もしくは前方に成長しているために、下顎が上顎に対して後退位をとると 記している 。

矯正歯科診療のガイドライン

アクアデンタルクリニック院長の高田です。
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上顎前突は正常との明確な境界線を設けることができるようなものではありません。上顎前突は多様な臨床 像を呈します。オーバージェットの大きい上顎前突症例(II 級 1 類)と大きくない上顎前突症例(II 級 2 類)
とでは病態、治療法が異なる可能性があります。本ガイドラインにおいてはオーバージェットの大きい上顎前 突症例(II 級 1 類)を対象とし、2 類は含めないものとしました。また、本ガイドラインにおいて唇顎口蓋裂 など先天異常による咬合異常は対象から除外しました。

 

個々の症例で大きく異なる多様な咬合を「上顎前突」としてひとくくりにした時にどこまでエビデンスを求めることができるのであろうか、という疑問も委員会で討議されました。病態も異なるであろうことから今後、
継続的にガイドラインを改定する必要があることを認めながらも、やはり個々の病態を十分に精査する必要があることには変わりありません。

このガイドラインは個々の検査、診断をおろそかにするものではなく、むし ろ検査、診断の必要性をより説くものであると考えています。

 

「上顎前突の矯正歯科診療」に関して医療現場で必要とされるであろうクリニカル・クエスチョンを本ガイドライン作成ワーキンググループ構成員が抽出し、

これらのクリニカル・クエスチョンに対して、現時点で推奨される考え方を記載しています。一方、取り上げたクリニカル・クエスチョンに対してその多くのもので、
十分な根拠が存在しないこともその過程で明らかになってきました。検討するための文献の学術的担保が不十分である、あるいは、クリニカル・クエスチョン自体の十分な定義がなされていないが故に削除すべきものが ありました。II 期治療に対する I 期治療の意義に関するもの、歯列弓拡大に関するもの、II 期治療における抜歯治療に関するもの、ハイアングルケースの治療に関するもの、オーバーコレクションに関するもの、二態咬合に関するもの、顎間ゴム、アデノイド切除が顎発育に及ぼす影響に関するもの、です。将来、本ガイドライ ンを改定する中でこれらのクリニカル・クエスチョンについても検討する必要があると考えています。
岡山市北区今保 田中 白石 北長瀬 西バイパス近く