下顎角骨折線上の歯

アクアデンタルクリニック院長の高田です。
日本放射線学会から出されている
「口腔顎顔面外傷診療ガイドライン2015年」を読んでいます。

 

下顎角骨折線上の歯は術後感染予防を目的として抜歯すべきか?

下顎角骨折線上の歯は術後感染予防を目的として抜歯しないことを弱く推奨する。 抜歯と非抜歯の比較では、全体の感染率の違いはなかった。しかし、同じ抜歯群・非抜歯群内での、口腔内ア プローチの感染が、口腔外アプローチまたは非観血的治療より多かったことが判明した。 診療ガイドラインパネル会議では本CQに対するアウトカムとして、咬合の復位や追加処置などの記載はなく、 術後感染のみであったため、推奨の決定が困難との意見が多くだされた。そこで、CQ に術後感染予防という用語 を入れてアウトカムを限定することで対応することとなった。さらに、骨折片が露出していた場合などさらに詳 細に分類する必要も意見としてあったが、各論文に記載がないことより分類は行わないこととなった。しかし、 すでに感染している場合は除外すべきだとの意見が多く、注意に記載することとした。また、医療消費者からは 骨折により腫脹や疼痛がすでにあるため、抜歯による増悪を避けたいとの意見があった。また、医療提供者から は歯が保存されることで整復が容易になるとの意見もあった。一方で、術後の骨性癒着の可能性も指摘された。
今回の CQ に対しては、術後の感染の有無に違いがないことより、抜歯するメリットが少ないと判断されて推 奨文を作成することとなった。
治療法が統一されておらず、感染の有無を評価している論文は除外とした。(治療法の違いが結果に影響を及 ぼす因子と考えられるため、統一していることを条件とした。)治療法とは非観血的治療(顎間固定)、口腔内ア プローチによる観血的治療、口腔外アプローチによる観血的治療である。 症例を抜歯の有無で分類し感染の有無を評価している論文は、前向き研究のみを採用とした。後ろ向き研究 は、抜歯を行うかどうかの選択のバイアスが大きいと判断した。 後ろ向き研究でも1の条件を満たすものは採用とした。