矯正歯科診療のガイドライン 上顎前突編

アクアデンタルクリニック院長の高田です。
今日は 日本矯正学会から発表されているガイドライン

「矯正歯科診療のガイドライン 上顎前突編 」 を勉強しています。

ガイドラインの中の大切な内容をまとめながら、ブログに残していきたいと思います。

上顎前突の治療の必要性

不正咬合(咬合異常)による影響,障害を、社会心理学的見地、機能的見地からもエビデンスに基づいて明
確にすることは、矯正治療の意義、必要性を考える上で、非常に重要と考える。しかしながら、疼痛や肉体的
な違和感を伴うことが少ないため、患者はこれらの機能的な障害を自覚していないことが多い。また、不正咬
合のひとつである上顎前突にみられる特有の影響、障害だけに限局した高いエビデンスのある論文は
非常に少ないために、上顎前突を含む咬合異常としてその影響、障害を取り扱った。

上顎前突を含む咬合異常は好感度や聡明さなどの社会的領域、自尊心などの心理学的領域に影響を与える可
能性が高い。また、口腔機能への影響については、咀嚼機能に影響を与える可能性が高い。しかし、構音機能、
顎関節症、ブラキシズムと直接的に関連があるとの科学的根拠はない。
さらに、歯周病や齲蝕との関連性について、咬合異常はそれらの発生との直接的原因となる科学的根拠はないが、
二次的な要因として捉えることが できる。

不正咬合(咬合異常)による影響、障害に対して強い科学的根拠はないが、間接的原因として社会心理学、
口腔機能、歯周病や齲蝕の発生に影響を与えていると考えるのが妥当と考える。
しかしながら、重篤な開咬症例における発音障害、咀嚼障害や臼歯部崩壊による低位咬合症例における顎関節障害など
直接的な因果関係が明らかなことがある。
それらの障害を客観的な数値データとして表現し、そして、上顎前突、反対咬合という
単なる不正咬合のカテゴリーだけでその関係性を科学的に証明するのは難しいと考える。
その不正咬合の重篤度や成因、その障害の客観的な評価、患者の生活環境や性格など総合的見地から、
症例毎にその影響、障害を 考えるべきと考える。

さらに、上顎前突に直接関連する障害は限られるが、その中で上顎前突は歯の外傷の誘発が他の不正咬合に比べて高く、
3mm を超える大きなオーバージェットの不正咬合はそれ以下の患者に比べ約 2 倍の外傷リスク
があるとの高いエビデンスが存在する。
他の相互作用も存在するが、その大きなオーバージェットを矯正治療 によって正常範囲に減少させることは有益である。

矯正治療の意義、利益を考えたとき、不正咬合(咬合異常)による影響、障害を明確にして、矯正治療によ
って形態学的改善を獲得するだけでなく、機能的にも、社会心理学的にも改善することを明らかにすることは
矯正治療学の本質であると考える。

・上顎前突を含む咬合異常は社会心理学的に影響を与えるか?

上顎前突を含む咬合異常は社会心理学的に影響を与える可能性が高い。

・上顎前突を含む咬合異常は口腔機能に影響を与えるか?

咬合異常は咀嚼機能に影響を与える可能性は高い。
しかし、構音機能、顎関節症、ブラキシズムと直接的に 関連があるとの強い科学的根拠はない。
不正咬合は咀嚼機能、能率を低下。
正常咬合の咀嚼機能は不正咬合 のそれより優れている。Angle 分類と咀嚼機能では、
Angle III 級だけが明らかに咀嚼能率が減じている。
不正咬合は顎関節症の直接的要因ではない。そして、過大な水平被蓋、過蓋咬 合は影響を与える

・上顎前突を含む咬合異常は歯周病や齲蝕の発生と関連するか?

咬合異常は歯周病や齲蝕の直接的原因となる科学的根拠はない。

咬合性外傷は歯肉炎、歯周炎を惹起しない。咬合は歯周病の進行におけるリスクファクターである。
咬合性外傷が歯周組織破壊のリスクファクターであるというエビデンスはあるものの、
歯周組織破壊の引き金になるというエビデンスはない。
咬合性外傷が プラークに起因する歯肉炎や、歯周組織のアタッチメントロスを誘発することはない。
歯の過度可動性を引き起こしている咬合力は、進行性歯周炎においてアタッチメントロスを加速させ、
歯周疾患治療による治癒を妨げる.
叢生は齲蝕の感受性を上げるものではない

・上顎前突症患者は、歯の外傷の危険性が高いか?

上顎前突は歯の外傷の危険性が高い。
上顎前突の臨床的な決め方として高橋の分類によってオーバージェットが 7~8mm以上あるものと規定していたが、
それ以下であっても咬合や側貌の観察によって上顎前突感があり、
他の分類に入れにくいものも臨床的に上顎前突として取り扱われている。
いずれにしてもオーバージェットとの関連は大きく、
その大きなオーバージェットを正常範囲に減少させることは上顎前突を治療する共通 認識であるが、
その意義について考える必要がある。
岡山県 岡山市北区 今保 久米 中山道 延友 白石 花尻 北長瀬 西バイパス近く
上顎前突に限らず不正咬合による障害は、齲蝕発生、歯周疾患の誘因、歯の外傷および歯根吸収の誘因、
咀嚼機能障害、筋機能障害、骨の発育障害および発音障害などがあげられるが、
疼痛や肉体的な違和感を伴うことが少ないため、患者はこれらの機能的な障害を自覚していないことが多い。
上顎前突は歯の外傷の誘発が、他の不正咬合に比べて最も高い。
大きいオ ーバージェットの不正咬合は、それ以下の患者に比べ約 2 倍の外傷リスクがある。
すなわち、オーバージェットの大きい上顎前突のままであるとそのリスクは 2 倍高い状態であり、
もちろん偶発的因子(環境や行動等)も外傷歯の原因として関連しており、それらの相互的作用によるかもしれないが、
治療におけるオーバージェットの減少は大きく有益であると考えられる。
一方、上顎前突と発音障害の関連、オーバージェットと口唇癖との関連などについては、これを直接的に
評価する高いエビデンスの論文は現時点では残念ながら見当たらないが、上顎前突を治療しないとどうなるか、
というクリニカル・クエスチョンに対しては重要な分野であるため、今後の研究成果が期待される部分である

歯周病は誤嚥性肺炎のリスクファクターであると考えられる

アクアデンタルクリニック院長の高田です。
今日は 日本歯周病学会から発表されているガイドライン

「歯周病の検査・診断・治療計画の指針」 を勉強しています。

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・高齢者では口腔内細菌が関与する誤嚥性肺炎などの呼吸器疾患
(respiratory disease)のリスクが高まるか?

肺炎発症患者の大部分は高齢者であり,一般に加齢そのものは誤嚥性肺炎のリ
スクファクターであると考えられる。しかし,条件を口腔内細菌が関与する呼
吸器疾患へのリスクと限定するとその限りではない。口腔内細菌に起因する誤
嚥性肺炎と加齢との関係を調査した研究は非常に少なく,本項で確認された文
献は2編のみである。
そのうち,1編は加齢がリスクとなる結論を示しているが,口腔ケアの介入の
みで細菌学的評価は行われていない。もう1編は逆に否定的な結果となってい
る。そのため,上記 CQを判断するには,現時点ではエビデンスが不足してい
ると判断される。

加齢が誤嚥性肺炎のリスクとなるかを考察するため,年齢(agedまたはelderly)のキー
ワードを中心に文献検索を行った。一般的に加齢変化は誤嚥性肺炎のリスクになると考えら
れる。しかし上記のように,口腔内細菌が関与する誤嚥性肺炎という
条件に絞ると,本項のCQを満たす論文は少なかった。
文献1では,口腔ケア介入の有無を暴露要因として行った後向きコホート研究の結果か
ら,加齢が誤嚥性肺炎による死亡のリスクファクターになること,また口腔ケアは肺炎によ
る死亡リスクとしての年齢の影響を低下させることを報告している。著者らは,口腔ケア
(−)群では加齢が誤嚥性肺炎による死亡の有意なリスクファクターとなったのに対して,
口腔ケア(+)群では有意な結果が得られなかったため,口腔ケア介入は年齢を含むいくつ
かのリスクファクターに影響していると説明している。また,文献1では細菌学的評価は
行っていないものの,口腔ケアにより口腔内細菌数を減少させたことが誤嚥性肺炎のリスク
軽減につながったとも考えられる。
対照的に文献2では,年齢が誤嚥性肺炎のリスクファクターになるとはいえない,という
結果を示している。この結果は,「加齢変化は誤嚥性肺炎のリスクになる」という通説に反
する内容であると思われるが,文献1に比較すると,文献2では肺炎の発症率をエンドポイ46ントにしているということ,被験者の年齢層が平均10歳程度高いため80〜90歳前後が対象になっているなど,加齢による肺炎発症への影響が強く現れなかった可能性も考えられる。
いずれにせよ,加齢には生活機能低下や嚥下障害など口腔衛生と誤嚥にかかわる複雑な因子が関与するため,他のリスクファクターとの交絡因子として影響が観察されることも十分に推察できる。加齢や年齢に限らず,誤嚥性肺炎のリスク因子を網羅的に解析した研究はあまりみられないのが現状であるため,今後の更なるエビデンスの蓄積が望まれる

・口腔ケア(口腔衛生管理)によって呼吸器疾患のリスクが低下する
か?

口腔ケア(狭義のもので,口腔衛生管理に絞る;直接的な歯周病治療ではない)
は呼吸器疾患の発症を抑制する。しかし,確固たるエビデンスはない。

口腔ケアと誤嚥性肺炎の関係に関する臨床研究では,口腔衛生管理状態を示す指標が曖昧である。そのために,口腔ケアを実施したことに対して,嚥下や咳反射,さらには肺炎の発症を関連づけていることになり,口腔ケアの結果として何が(誤嚥性)肺炎の発症に影響を与えたかがわかりにくい。口腔の細菌量や細菌叢を変化させるだけではなく,咳反射を含む生体の反応・機能へ影響を与えていることも考えられる。そのため,口腔ケアは,細菌学的にも,生理学的にも影響を及ぼしていると考える必要がある。そこに歯周治療を組み込むと,もっと長期間の観察が必要となると考える。
一方で,口腔ケアとVAPとの関連に関するメタアナリシスは数件あったが,コクランライブラリーにあるものでは,ICUの成人患者のVAP発症を40%減少させるとしているが,肺炎死やICU期間への影響は明確ではないと結論づけている。

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口腔内細菌は誤嚥性肺炎に関与するか?

アクアデンタルクリニック院長の高田です。
今日は 日本歯周病学会から発表されている

「歯周病と全身の健康」 を勉強しています。

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・歯周病原細菌以外の口腔内細菌は動脈硬化のリスクを高めるか?

歯周病原細菌以外の細菌による動脈硬化に関する報告はあるが,その発症を高
めるリスクに関する直接的な報告はなく,十分なエビデンスは認められない。

歯周疾患と同様に動脈硬化性疾患は生活習慣病の一つとされ,喫煙など共通するリスク因子が関係している 5)。動脈硬化性疾患のリスク因子として,①血清中炎症マーカー 6, 7),②血清脂質 8),③血管内皮細胞機能や動脈弾性変化 9)などがあげられ,歯周病原細菌(Porphyromonas gingivalis)の動脈硬化病変部位からの検出が報告されている 10-14)。これは心血管系疾
患と脳血管障害の原因として脂質異常症,高血圧,糖尿病などの生活習慣病関連リスク因子で説明できない発症例に,歯周疾患が関与している可能性を示唆しているものと考えられる。

しかしながら歯周病原細菌以外の口腔内細菌が動脈硬化性疾患に関与するという報告 15)はあるものの,その発症リスクを高めるという報告はない。重度アテローム性動脈硬化症患者20名と対照群10名の比較研究でFusobacterium, Streptococcus, Prevotella, Enterococcus,
Porphyromonas, Veillonellaの検出率に有意差は認められなかったという報告 16)から,現時点では歯周病原細菌以外の口腔内細菌が動脈硬化性疾患の発症リスクを高めるという科学的根拠は見つからない。
今後更なる歯周疾患と動脈硬化性疾患へのリスク因子に関する臨床研究が必要であることが示された。

・歯周病と早産・低体重児出産
WHOでは,妊娠37週未満での出産を早産,新生児体重2,500g未満での出産を低体重児出産と定義している。
正期産・正常体重児出産と比較して早産・低体重児出産での新生児の死亡率および有病率は高く,また,その発現は家族への精神的および経済的な負担を生じ,
社会に対しても医療費の増加となる。
総出産に対する早産・低体重児出産の発現率は人種および地域によって異なり,
アフリカで15%前後,ヨーロッパで5〜6% 1)と報告されている。
日本でのそれらの割合は年々増加し,平成22年の統計結果では10%程度とされている 。
早産・低体重児出産のリスクファクターとして,喫煙,飲酒,薬物(麻薬),多胎妊娠,などがある。通常分娩でも出産直前には,胎盤などの産婦人科器官における女性ホルモンバランスの変化や炎症性サイトカインの上昇を伴うことが知られ,上行性膣炎などの産婦人科器官での炎症が血中サイトカインレベルを上昇させ早産・低体重児出産に至らしめるという分娩のメカニズムが提唱されている 。
そこで,歯周組織中および血中での炎症性サイトカイン濃度が上昇し,
治療によってその濃度が低下することが知られている歯周病への罹患と歯
周治療の実施が,早産・低体重児出産にどのように影響するかについて注目を集めている。

本テーマでは,妊婦における歯周病罹患・妊婦への歯周治療と早産・低体重児出産との関連性について検索することを目的とし,以下の2つの臨床質問を設定した。

・歯周病は早産・低体重児出産を増加させるか?

歯周病に罹患した妊婦では,早産,低体重児出産,早産および低体重児出産へ
のリスクは増加する。

早産・低体重児出産以外の妊娠に伴う併発症として妊娠高血圧症候群(以前の妊娠中毒症)がある。妊娠高血圧症候群と歯周病罹患との相関に関してシステマティックレビューが報告されている。AAP/EFPのコンセンサスレポートでは5つの論文,4,224名のデータによるメタアナリシスからOR=1.61,95% CI:1.36〜1.92の結果が報告され(エビデンスレベル2a) ,12本の論文によるシステマティックレビューでは8本に相関があったとしている

歯周病と早産・低体重児出産との相関発現のメカニズムについて,唾液中あるいはプラーク中の歯周病原細菌,血中抗体価,GCF中あるいは血中のサイトカイン濃度,SNPs,など
様々なバイオマーカーによる検討が行われている。GCF中のIL-1β,PGE2,TNF-αと早産・低体重児出産との有意な相関がシステマティックレビュー 13)(エビデンスレベル2a)に報告されているが,メカニズムを明確に説明できるとは結論づけられていない。

・歯周治療を早産・低体重児出産の予防を目的として行うべきか?

妊娠中期に行われる妊婦への歯周治療は安全であり,妊婦の歯周組織の健康回
復のために有用である。
しかしながら,妊娠中期の歯周治療は早産および低体
重児出産を抑制しないという明確なエビデンスの存在から,
妊婦に対して早産・低体重児出産の予防を目的とした歯周治療は行わないように勧められる。

歯周病と誤嚥性肺炎

肺炎が2011年から日本人の死因の第3位となった。2014年には約118,000人となり,死因の約10%弱を占めるようになっている 。
この肺炎死亡者の実に約95%は75歳以上の高齢
者であり,90歳以上の高齢者の死因の第2位に相当する 。
高齢者の肺炎,特に医療・介護関連肺炎の主原因は,誤嚥性肺炎と考えられている 。
誤嚥性肺炎に関連する発熱を防止するために口腔内の細菌量を減少させることが効果的であると日本から発信され ,口腔ケアの有用性が多くの臨床研究で示されてきた。
しかし,口腔ケアの定義に曖昧な場合が多く,歯科治療を含む包括的口腔衛生管理か,歯科医療従事者による専門的口腔衛生管理か,通常の医療従事者による口腔衛生管理か,
さらには介護従事者あるいは家族等による口腔衛生管理などか曖昧である。
誤嚥性肺炎の発症や悪化と歯周病との関連性を明確に示したものはなく,
歯周病治療の影響に関しては明瞭ではない。
80歳で20歯以上の現在歯数を有する者(8020達成者)が40%に達する時代になり,歯周病罹患率が高いことを考慮すると,今後には介入研究が強く望まれる。

動物を用いた研究は,少ないが存在する。
それらは,歯周病原細菌の生死にかかわらず,呼吸器系に炎症を起こすことを示している。
したがって,口腔内細菌の量を減少させる歯周病治療と口腔衛生管理が高齢者の肺炎の防止に役立つことは想像しやすい。
現状では,高齢者あるいは手術後の人工呼吸器装着患者を対象とした臨床研究が多いなかで,以下の臨床質問を設定した。

・口腔内細菌は誤嚥性肺炎に関与するか?

慢性肺疾患患者ではデンタルプラークから検出される肺炎原因菌の陽性率が高
いことが報告されている。しかし,現在得られるエビデンスは少数の横断・縦
断研究のみであり,また被験者も誤嚥性肺炎に限定されていないため,口腔内
細菌が誤嚥性肺炎に関与すると明確に結論づけるにはエビデンスが不足してい
る。さらに,歯周病原細菌との関連については,特にPorphyromonas gingivalisで疫学研究と動物モデル研究において数件報告がみられるが,
こちらも同様にエビデンスが不足している。

・歯周病で誤嚥性肺炎のリスクが高まるか?

観察研究が1件のみであり,高齢者では誤嚥性肺炎のリスクの有無にかかわら
ず歯周病罹患度が高いので,歯周病が誤嚥性肺炎のリスク因子としては結論づ
けられない。ただし,誤嚥性肺炎のリスクの高い高齢者は,歯周病に罹患して
いるのにブラッシング主体の「口腔ケア」で対応しているのが現状である。

歯周病で誤嚥性肺炎のリスクが高まると考えることは論理的であるが,歯周病と誤嚥性肺炎での検索である#4では20件がヒットした。しかし,Clinical Trailで絞り込むと,実質的な臨床研究は#8の1件になった。この文献では,観察的横断研究にて,誤嚥の危険性が高い者に口腔衛生状態が悪いことから,口腔衛生状態の悪さが誤嚥性肺炎の危険性を上げていると推測している。

ただし,歯周病の罹患度は誤嚥の危険性の有無にはかかわらず高く,歯
周病の重症度が重くなっている傾向を示したにとどまる。

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歯周病は虚血性心疾患に影響するか?

アクアデンタルクリニック院長の高田です。
今日は 日本歯周病学会から発表されている

「歯周病と全身の健康」 を勉強しています。

ガイドラインの中の大切な内容をまとめながら、ブログに残していきたいと思います。

・歯周病は虚血性心疾患に影響するか?

歯周病の罹患によって,虚血性心疾患の有病率およびそれに伴う死亡率が高く
なる。また,歯周病は全身性の炎症と血管内皮細胞の機能に影響を及ぼすが,
虚血性心疾患の発症および進行との関連については十分なエビデンスは認めら
れない。

虚血性心疾患とは,冠動脈の閉塞や狭窄などによって心筋への血流が阻害され,心臓に障害が起こる疾患の総称であり,狭心症や心筋梗塞がこの分類に含まれる。
1989年,Mattilaらによって口腔の健康が心筋梗塞の発症と関連することが報告されて以来 ,歯周病と虚血性心疾患の関連が注目されているが,これまでの疫学研究によると因果関係の有無に関してのコンセンサスは得られていない。

多くのリスク因子が歯周病と虚血性心疾患で共通していることが交絡因子となっていることが報告されている。

歯周病の疾患定義の統一と,疫学研究における客観的臨床パラメーターの選定,標準化された治療プロトコルに基づいた更なる介入研究が必要と考えられる。一方で歯周病が短期的な全身性の炎症状態と血管内皮細胞の機能に影響を及ぼすこ
とはコンセンサスが得られていることから,長期的な観察研究による検討が求められる。

・歯周病は虚血性脳血管疾患に影響するか?

虚血性脳血管疾患とは,脳の血管の血流障害により脳組織の一部が壊死する疾患の総称であり,意識障害や運動障害等を起こし,重篤な後遺症のために寝たきりになる原因疾患である。

2014年にLafonらが行ったメタアナリシスによると,歯周病が脳血管疾患の発症を上昇させることを報告している。

・歯周病になると動脈硬化性疾患のリスクマーカーは上昇するか?

炎症性マーカーである C反応性タンパク(CRP)は動脈硬化性疾患のリスク
マーカーとして有用であり,歯周病罹患により上昇するが,その他のリスク
マーカーについては,十分なエビデンスは認められない。

歯周病に関連する動脈硬化性疾患のリスクマーカーとして多数報告されているうち,主要なものに①血清中炎症マーカー,②血清脂質があり,それぞれについて解説を加える。

血清中炎症マーカー
特に報告が多いものはC反応性タンパク(CRP)があげられる。CRPは全身の炎症マーカーであるばかりでなく冠動脈疾患のリスクマーカーとしても有用とであることが報告されており ,歯周病患者は健常者に比較して,血清中CRP濃度が有意に増加することが明らかにされている。

一方で,動脈硬化症への関与が報告されている腫瘍壊死因子(TNF),イ
第1部 臨床研究からのエビデンス
ターロイキン(IL)-1,IL-6,IL-8といった炎症性サイトカインも歯周病の罹患により増加することが示唆されているが,コンセンサスは得られていない 3-5)。歯周病罹患による炎性マーカーの上昇が,動脈硬化性疾患の発症や進行を引き起こすのに量的に十分であるかは
今後更なる検討が必要である。

血清脂質
脂質代謝異常は動脈硬化性疾患発症の重要なリスク因子であり,血清中のLDLコレステロールの増加,もしくはHDLコレステロールの減少がイベント発症のリスクを増加させることが疫学的に明らかとなっている 。

本邦で行われた大規模コホート研究である久山町研究においては,平均ポケット深さが2mmを超える集団においては2mm未満の集団と比
較してHDLコレステロール値が有意に低いことが示されている 。
また近年,歯周病原細菌に対する血清抗体価が高い歯周病患者では,
LDLコレステロール値が有意に高いことが報告されている 。
その一方で,健常者と歯周疾患罹患において血清脂質プロファイルは変
わらないとする報告も認められる 。歯周病をもつ患者はその生活背景から,肥満や糖尿病,高血圧,生活習慣病を併発していることが多く,疫学研究においてはその点を考慮して
検討を行う必要がある。

・歯周病の治療を行うと動脈硬化性疾患のリスクマーカーは改善す
るか?

歯周病は歯周ポケットへの歯周病原細菌の感染によって引き起こされる歯周組織の破壊を伴う慢性炎症性疾患である。
動脈硬化は血管内皮が肥厚し,薄い線維性皮膜で覆われた粥状
プラークの形成と炎症性浸潤を病態として示す。
動脈硬化性疾患のリスクマーカーとして,
①血清中炎症マーカー(CRP,IL-6などの上昇) ,②血清脂質(LDLの上昇,HDLの低) 9)および,③血管内皮細胞機能や動脈の弾性の低下 10)などがあげられる。歯周病原細菌
であるP. gingivalisが血管内皮細胞に侵入できること,
動脈硬化病変から検出されることが示されている。
また,古典的なリスク因子である高血圧,脂質異常,糖尿病などの因子
だけでは動脈硬化性疾患の発症原因を説明できないことから歯周病との関連の可能性が指摘されている 。
①歯周病の治療を行うことでIL-6,CRPなどのパラメーターの値が低下
することが報告されている 。
日本人における冠動脈疾患予測における高感度CRPの
カットオフ値が1.0mg/Lであり,欧米人と比較して極めて低い値でもリスクとなることが示されている 。
②血清脂質量に関しては歯周治療によってHDL値が改善することが示さ
れている 。
さらに,③高度の歯周治療を行うことで動脈壁の状態が改善されることを示
す報告がある 。
その一方で,米国心臓協会(AHA)では歯周病の存在が虚血性心疾患の
発症,進行に関連するというエビデンスがないことを報告している 。

これまでに歯周治療によって動脈硬化性疾患のイベント発生が抑制されるというエビデンスは示されていない。
しかし,歯周病によって引き起こされた炎症は動脈硬化性疾患のリスク因子となりうることが考えられることから,
今後歯周治療の有無によるコホート研究が行われる必要がある。

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顎関節症の罹患状態

アクアデンタルクリニック院長の高田です。
今日は 日本顎関節学会から発表されている

「顎関節症治療の指針 2018」 を勉強しています。

ガイドラインの中の大切な内容をまとめながら、ブログに残していきたいと思います。

顎関節症とは

・日本における顎関節症の実態
顎関節症は,う蝕,歯周病にならぶ第三の歯科疾患ともいわれ,
学校歯科検診にも取り入れられている。
また,顎が痛ければ歯科医院に行くということも広く一般に知られ
るようになった。
“顎関節症”という病名は,1956 年に上野により
「下顎運動時の顎関節部の疼痛,雑音発生,開口障害等の症状を伴う慢性疾患の臨床診断名」
として報告され,
日本では現在でもこの病名が広く用いられている。
ただし現在では後述するように定義は変更されている。

顎関節症患者は顎顔面領域に痛みや違和感を訴えることが多いが,
そうした症状は他の疾患でも起こり得る。
顎関節症と類似の症状を呈する疾患には,う蝕や歯周病をはじめ,
顎関節や咀嚼筋に関連した各種疾患,また頭痛や神経痛などの口腔顔面痛,精神疾
患や心身症などがある。
また,矯正歯科治療,補綴歯科治療,口腔インプラント治療あるいは一般的な歯科治療を進めるうちに発症することがある。
近年,歯周病,補綴,インプラント治療などにおける力の管理問題として注目されているブラキシズムは顎関節症との関わりがあるとされている。

このように,顎関節症は歯科臨床の多くの問題に関わっており,顎関節症の治療および予防への取り組みは今後の重要な課題となっている。

・顎関節症の概念
顎関節症は,顎関節や咀嚼筋の疼痛,関節(雑)音,開口障害ないし顎運動異常を主要症候とする障害の包括的診断名である。
その病態は咀嚼筋痛障害,顎関節痛障害,
顎関節円板障害および変形性顎関節症である。

・顎関節症の病因
顎関節症の発症メカニズムは不明なことが多い。

日常生活を含めた環境因子・行動因子・宿主因子・時間的因子などの多因子が積み重なり,個体の耐性を超えた場合に発症するとされている。

日常生活での発症,増悪・持続因子はリスク因子と呼ばれ多数報告されており,
日常生活を含む環境因子として,緊張する仕事,多忙な生活,対人関係の緊張などがある。
行動因子として,硬固物の咀嚼,長時間の咀嚼,楽器演奏,長時間のパソコン業
務,単純作業,重量物運搬,編み物,絵画,料理,ある種のスポーツなどがあり,習癖として,覚醒時ブラキシズム,日中の姿勢,睡眠時の姿勢,睡眠時ブラキシズムなどもが挙げられる。宿主因子には,咬合,関節形態,咀嚼筋構成組織,疼痛閾値,疼痛経験,パーソナリティ,睡眠障害などがある。
時間的因子とは,悪化・持続因子への暴露時間である。

・顎関節症の罹患状態
平成 28 年の厚生労働省歯科疾患実態調査によれば,「口を大きく開け閉めしたとき,あごの音がありますか」に「はい」と回答した対象者は,550/3,655 で,約 15.0%
であった(男性 183/1,583 人〈11.6%〉;女性 367/2,072 人〈17.7%〉)。
また,「口を大きく開け閉めしたとき,あごの痛みがありますか」に「はい」と回答した対象者は,
121/3,665 人で,約 3.3%であった(男性 40/1,583 人〈2.6%〉;女性 81/2,072 人〈3.9%〉)
であった。また,財団法人 8020 推進財団による全国成人歯科保健
調査(2007 年)が,成人女性(乳幼児歯科検診児の母親 2,786 名,平均年齢 31.4 歳17~46 歳〉)を対象に行われており,「口を大きく開け閉めしたとき,あごの痛みが
ありますか」という質問に「はい」と回答したのは 3.5%であった。

・咀嚼筋痛障害(Ⅰ型)
咀嚼筋痛障害は,咀嚼筋痛とそれによる機能障害を主徴候とするもので,
主症状としては筋痛,運動痛,運動障害があるとされる。
国際的に標準的とされる DC/TMD
の咀嚼筋痛障害の病態分類のうち,中枢性機序による筋痛,筋スパズム,筋炎,筋拘縮,新生物や線維筋痛症などの発症頻度は非常に低く,
咀嚼筋痛障害の主な病態は局所筋痛と筋・筋膜痛である。
特に筋・筋膜痛が重要であり,局所筋痛は筋・筋膜痛の
特徴を欠く筋痛であると理解される。

・顎関節痛障害(Ⅱ型)
顎関節痛障害は,顎関節痛とそれによる機能障害を主徴候とするもので,
顎関節円板障害,変形性顎関節症,顎関節への外来性外傷(顎頭蓋部への強打,気管内挿管など)や内在性外傷(硬固物の無理な咀嚼,大あくび,睡眠時ブラキシズム,咬合異常
など)によって顎運動時の顎関節痛や顎運動障害が惹起された病態である。

その主な病変部位は,滑膜,円板後部組織,関節靭帯(主に外側靭帯),関節包であり,それらの炎症や損傷によって生じる。
滑膜は下顎窩軟骨面,関節隆起軟骨面,関
節円板を除く顎関節の内面を覆う組織であり,異常な外傷力により滑膜組織が損傷し,

炎症(滑膜炎)が生じるとさまざまな発痛物質や発痛増強物質が放出され,
滑膜組織に豊富に存在する侵害受容器における侵害受容により顎関節痛が生じる。
円板後部組
織は,円板前方転位すると関節負荷が直接加わるようになり,組織損傷とそれに続く炎症により顎関節痛が生じる。また,関節靭帯の損傷や関節包の炎症によっても顎関節痛が生じる。

・顎関節円板障害(Ⅲ型)
顎関節円板障害は,顎関節内部に限局した,
関節円板の位置異常ならびに形態異常に継発する関節構成体の機能的ないし

器質的障害と定義される。顎関節内障と同義である。
主病変部位は関節円板と滑膜であり,関節円板の転位,変性,穿孔,線維化に
より生じるとされる。

現在では MRI により確定診断が可能である。
顎関節症の各病態の中で最も発症頻度が高く,患者人口の6~7割を占めるといわれている。
関節円板は前方ないし前内方に転位することがほとんどであるが,
まれに内方転位,外方転位,後方転位を認める。またいずれの方向に転位した場合でも,顎運動に伴って転位
円板が下顎頭上に復位する場合と復位しない場合がある。関節円板の転位方向や転位量によって,また円板転位が復位性か非復位性かによって臨床症状が異なってくる

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